法令対策2014.04.25

どうなる?栄養成分表示の義務化(前編)

2014.04.25

井上 慎也

井上 慎也

 前回は番外編で「食品の機能性評価モデル事業」について触れましたが、今回は「食品表示一元化検討会」(以下、一元化検討会)の内容に戻り、「栄養成分表示の義務化」について採り上げます

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 前回は番外編で「食品の機能性評価モデル事業」について触れましたが、今回は「食品表示一元化検討会」(以下、一元化検討会)の内容に戻り、「栄養成分表示の義務化」について採り上げます

目次

義務化の方向で調整中

 栄養成分表示については、2004年にWHOが「食事と運動、健康についての世界戦略」を発表し、栄養表示のガイドライン化が進む中、以前より義務化していたアメリカ、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランド、台湾だけでなく、EU圏やアジア・南米諸国でも表示が義務化されるようになりました。こうした海外の状況や健康意識の高まりを受けて、日本でも表示義務化の方向性で「栄養成分表示検討会」および今回の「一元化検討会」で議論が進められています。

【栄養表示の義務化の背景】
・国民の健康意識の高まり
・栄養表示の重要性の増大
・諸外国における栄養表示の義務化の拡大

栄養成分表示に関する世界の動向

 

 ただし、一元化検討会の中間で行われた意見募集(PDF)では、義務化を求める声が111件に対し、現状の表示推奨の維持の声が200件超となっており、表示義務化に慎重な意見が多く寄せられております。様々な立場の意見が集まっているので、これをもって義務化に待ったをかける声が多いと判断することはできませんが、義務化によって生じる不都合も存在するということが伺えます。

義務化による負担増は必至、求められる制度の柔軟化

では、その不都合とはどのようなものでしょうか。まずは、事業者の包材印刷費用や分析費用の増大です。一元化検討会で実施された「食品表示に関する事業者コストに係るアンケート調査」(PDF)で特に印象的なのが、「栄養成分表示が義務化された場合の既存製品の製造・販売の継続可能性」についての質問です。大企業の80%、中小企業の約62%は、すべて、またはほとんどの製品が継続可能としていることに対し、それ以外(わからない・無回答は除く)については販売体制の変更が必要になることを想定しています。つまり、表示の義務化が行われた場合、特に中小規模の企業への負担が大きく、製品ラインナップの整理か販売価格の上昇が行われることが予想されます。そのため、企業の規模にあわせて表示義務を免除するといった制度も含め、実行性のある形での制度づくりが検討されています。

 

誤差の範囲が柔軟化する可能性

 さらに、上記アンケートでは、表示義務化にあたっての課題として、コスト増のほかに「意図しない表示違反」が挙げられています。現行制度では、表示の数値と分析値との差の許容範囲が、エネルギーは±20%、ビタミンB群は20%~+80%など、成分毎に定められています。しかし、分析の精度にも限界があり、義務化によって特に微量成分に関しては避けようがない不適当表示が増える可能性があります。また、栄養分析による結果以外に、現在も食品標準栄養表を使った計算で出した数値を使うことが認められていますが、実際に分析して得られた値と表示している含有量との誤差が許容範囲を超えていた場合は、不適正な表示となります。(現行制度の解説については東京都福祉保健局のHPに詳しい)
 そのため、一元化検討会では特に計算での算出の実行性に対する配慮として、表示されている成分量と実測値の誤差を現在認められている範囲より一部拡大させることや、制度の柔軟化が検討されています。

 

さらに、上記アンケートでは、表示義務化にあたっての課題として、コスト増のほかに「意図しない表示違反」が挙げられています。現行制度では、表示の数値と分析値との差の許容範囲が、エネルギーは±20%、ビタミンB群は20%~+80%など、成分毎に定められています。しかし、分析の精度にも限界があり、義務化によって特に微量成分に関しては避けようがない不適当表示が増える可能性があります。また、栄養分析による結果以外に、現在も食品標準栄養表を使った計算で出した数値を使うことが認められていますが、実際に分析して得られた値と表示している含有量との誤差が許容範囲を超えていた場合は、不適正な表示となります。(現行制度の解説については東京都福祉保健局のHPに詳しい)
 そのため、一元化検討会では特に計算での算出の実行性に対する配慮として、表示されている成分量と実測値の誤差を現在認められている範囲より一部拡大させることや、制度の柔軟化が検討されています。

 

1. 誤差を上限または下限のみの設定にする
 米国や韓国でも実施されている方法で、誤差を上限または下限のみに設定し、健康に影響のない範囲での誤差については問わないという方法です。例えばナトリウムの場合、表示された値と比べて、実測値が大きく上回っていれば健康上の問題がありますが、逆に下回る場合においてはさほど健康への影響はありません。ただ、この案は個人的には表示制度の形骸化の懸念があると考えています。
 例として、ナトリウムの許容誤差を下図のように「+20%」とします。計算によって出されたナトリウム量が仮に100mgで、そのまま「100mg」と記載した場合と、もしもに備えて「200mg」と記載した場合、実測値が125mgであれば前者のみが表示違反を問われることになります。そうなると、極端なことを言えば、上限のみを設定している場合は極端に大きな値を、下限のみを設定している場合はゼロと記載してしまえば、少なくとも栄養表示制度の違反からは逃れられることになります。(当然、販促としては不利ですし、公正競争の観点から見て問題があるのは明白で、荒唐な例であることは間違いありません)
 また、エネルギーのように摂り過ぎても少なすぎても困るものもありますので、この方法のみをもって、栄養成分表示の義務化に踏み切るのは無理があるということになります。

2. 少量成分については誤差の範囲を絶対値にする。
 次に、現在の「パーセント」による相対値による誤差の設定では、どうしても含有量が少ない成分については、誤差の許容範囲も狭くなってしまうため、「±○g」や「±△kcal」といった絶対値で誤差を決める方法も検討されています。
例えばエネルギーの場合、現行の制度では成分量に関わらず±20%が誤差の許容範囲となっていますが、仮に100kcal以下の時は絶対値で一律±20kcalを許容範囲としてみましょう。表示カロリーが50kcalで、実測値が65kcalだった場合、現制度(±20%)で考えると表示違反となりますが、絶対値(±20kcal)の場合は許容範囲におさまることになります。実行可能性の幅は広がりますが、やはり分析を行わないことには表示することに対する不安の払しょくは難しいように思われます。

3. 算出根拠を示す
 1と2だけでは事業者側のリスクを少なくすることが難しいことはおわかりいただけたと思います。そこで、3つ目の案として数値算出の根拠を明示することで誤差の範囲関係なく表示を認めてしまえば良いのではないかという意見もあります。おそらく栄養成分については、細かい数値についてはそれほど重要ではないと思います。「今日はあと50kcal食べたらカロリーオーバーだ」とか「ビタミンCがあと30mg欲しい」なんて考えて生活する人はそれほど多くないはずだからです。
 重要なのは、栄養成分表示が「健康的な食生活の指針となること」ですので、食材や調理法による栄養価のデータの出処さえしっかりしていれば、そこから出された数値は食生活の指針足りうるのではないかと思います。まずは根拠の有無で判断し、不透明なデータがある場合は、改めて実測値との誤差から表示の有効性を判定するのが望ましいのではないかと思います。

外食、中食の栄養表示の義務化は?

 最後に、外食や店内調理の惣菜など(いわゆる中食)については、表示対象に含めるべきかという議論もあります。2000年に厚生労働省(当時:厚生省)が発表した「健康日本21」(PDF)では若年世代を筆頭に外食中心の食生活が増加していることに警鐘を鳴らし、「外食や食品を購入する時に栄養成分表示を参考にする」ことを目標としていることや、栄養成分表示の義務化の意義が「健康意識の高まり」であることからも、対象に含まれるのは流れとしては妥当でしょう。ただし、外食・中食の場合は加工食品と異なり包装コストへの影響は低いものの、分析コストへの懸念が同様に考えられます。このことからも継続的な栄養分析の実施が困難な事業者向けに、計算による算出が簡易にできるように制度・体制を整える必要があります。  

 

 今回は栄養成分表示の義務化の数値の扱い方について詳しくご紹介しましたが、次回は実際に義務化された場合どのように表示されるのか、現在議論されている内容をご紹介いたします。

※最新の情報は【事業者の方向け】栄養成分表示を表示される方へ(消費者庁)をご覧ください。

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