ホルムズ海峡の封鎖長期化で、食品・物流費・電力高騰。原油由来資源の供給停止リスクも。

業界ニュース2026.04.15

ホルムズ海峡の封鎖長期化で、食品・物流費・電力高騰。原油由来資源の供給停止リスクも。

2026.04.15

4. 食品サプライチェーンにおける影響と事業縮小リスク

中東情勢の悪化は、コスト増に加えサプライチェーンの寸断リスクをもたらしている。アンケート調査では、事業者から以下のような具体的な声が寄せられている。

各業界から寄せられた影響

業界(業種)企業からの声
農・林・水産燃料費に加え、肥料や包装資材、運送費など、すべてのコストが上昇している
各種商品小売ニトリル手袋や食品トレーの供給に支障が出ており、惣菜・鮮魚部門の運営に影響が出ている
旅館・ホテル販売商品の包装(ビニール製品)の調達が困難になり販売を制限。宿泊・飲食料金の値上げを検討している
飲食料品製造影響度合いに応じ段階的対応を想定。最悪の場合には、キャッシュ確保と支払い体制の維持を最優先とする
パルプ・紙加工プラスチックフィルム等の調達難や価格上昇。原材料の入荷がないと製造不可能になり、顧客の生産活動も滞る
化学品製造原材料の価格高騰に加え、価格転嫁や供給調整に多大な労力を要している。原材料の調達難で新規案件の延期・中止が発生し、改革案件への取り組みも停滞・遅延している

対応策

業界(業種) 
農・林・水産(酪農)原材料および燃料の備蓄を行うとともに、商品の値上げを実施している
農・林・水産(まき網漁)中東情勢が沈静化するまでの期間に左右される問題であり、日本独自で講じられる対策には限界があると感じる。燃料への補助金についても、インフレを助長するだけで、その場しのぎにとどまる懸念がある。原油高騰をきっかけに、自社のコスト構造を見直す機会と前向きに捉えたい
建設(内装工事)半年程度先までに必要な資材をリストアップし、調達先と早めに交渉を行う予定である
飲食料品製造影響の度合いに応じ、段階的な対応を想定している。軽微な段階では在庫の積み増しを行い、中程度では主要商品のみに生産・販売を絞り緊急値上げを検討する。最悪の場合には、キャッシュ確保と支払い体制の維持を最優先とする
化学品製造石油由来の原料に調達不安があるため、自社消費分については既に在庫を積み増している
その他の卸売原料・資材の代替品を検討するとともに、サプライチェーンの再構築や施工法の変更による使用資材の削減を進めている
専門商品小売通常より多めにキャッシュを確保し、資金繰りの状況にこれまで以上に注意を払っている
運輸・倉庫(一般貨物自動車運送)長距離輸送の運行計画を見直して、近場輸送へ移行する。乗務員に対するエコドライブなどの教育のほか、スペアタイヤ、不要な道具をおろして燃費の向上を図るなどさまざまな対応を行っている
運輸・倉庫(一般貨物自動車運送)燃料価格が一定の基準価格を超えた場合には、燃料サーチャージを導入することで顧客の了解を得ている。価格不安を払拭し、供給を優先して考える必要がある
メンテナンス・警備・検査日常の事業活動のなかで無駄な車の使用を控えて、乗り合わせなどの工夫をすることが現状の最優先取り組みである

[出典]帝国データバンク「中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響アンケート 原油高騰・供給不安、企業の9割超で「マイナス」 半年続けば、43%が事業縮小 ~『製造』は3カ月未満でも22%が限界 サプライチェーンリスク懸念も~(2026年4月9日)

事態が長期化した場合の事業縮小リスク

現在の原油高・供給不安が継続した場合に「主力事業の大幅な縮小」に至る期間について、企業全体の43.8%が「6カ月未満」と回答している。小売業では54.5%が半年未満を想定しており、製造業でも22.8%が「3カ月未満」と回答するなど、短期間での影響を懸念する企業が多い。

主力事業縮小に至るまでの想定期間

主力事業縮小に至るまでの想定期間:半年以内(6カ月未満)に事業縮小に至る割合の合計:43.8%(帝国データバンク)

※半年以内(6カ月未満)に事業縮小に至る割合の合計:43.8%
[出典]帝国データバンク「中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響アンケート 原油高騰・供給不安、企業の9割超で「マイナス」 半年続けば、43%が事業縮小 ~『製造』は3カ月未満でも22%が限界 サプライチェーンリスク懸念も~(2026年4月9日)

中国のサプライチェーン事例

JETRO(日本貿易振興機構)によれば、中国の中東向け輸出企業も影響を受けている。ホルムズ海峡などの航路遮断により、コンテナ船は喜望峰回りやインド西部などへの寄港地変更を余儀なくされ、輸送コストの上昇や納期の遅延が生じている。

また、広東省の家電メーカー等ではプラスチックなどの原材料高騰により総コストが20~24%上昇し、新規受注を手控える事例も報告されている。海外から原材料を調達する日本企業にとっても留意すべき動向である。

5. 食品事業者の事業継続に向けた対応策

こうした環境下において、食品事業者は事業継続に向けた能動的な対応策を検討する必要がある。

(1)価格転嫁と交渉プロセスの短縮

コスト増加分の販売価格への転嫁は、対応策の一つとなる。東京商工リサーチの調査では、61.8%の企業が「商品やサービスの値上げを行う」と回答している。課題として価格転嫁までの期間が挙げられ、最多は「1~3カ月」(51.3%)であるが、「4~6カ月」(20.8%)や「7カ月以上」(15.1%)かかる企業もみられる。コスト上昇のスピードに応じた価格改定を取引先と協議する仕組みづくりが求められる。

産業別・値上げ反映までの期間(主要産業抜粋)

産業別すでに値上げしている1-3カ月4-6カ月7カ月以上
農・林・漁・鉱業15.15%33.33%21.21%30.30%
建設業19.04%51.02%16.49%13.43%
製造業7.08%51.56%24.47%16.87%
卸売業14.85%57.24%18.80%9.10%
小売業27.10%54.67%11.68%6.54%
金融・保険業30.00%40.00%10.00%20.00%
不動産業14.51%45.16%27.41%12.90%
運輸業10.58%41.17%27.64%20.58%
情報通信業2.98%43.28%19.40%34.32%
サービス業他9.65%46.40%22.38%21.56%

[出典]東京商工リサーチ「「原油100ドル超」で6割の企業が価格転嫁へ 100ドル超が続くと、経常利益は赤字の試算も(2026年4月14日)

(2)調達体制の見直しと代替素材の活用

食品トレーや包装フィルムなどの石油由来製品については、調達難や価格上昇が懸念されている。在庫の確保や新規調達先の開拓に加え、代替素材への切り替えが一部で検討されている。事業者へのアンケートでは「塗装仕様からメッキ仕様への切り替えを検討」するなど、原材料の代替化を進める事例もみられる。

(3)支援策・補助金の活用

政府が実施している施策を活用し、コスト負担を軽減することも対応策の一つとなる。資源エネルギー庁は代替調達の推進や、国内にある約8カ月分の石油備蓄の放出を実施している。また、「燃料油価格激変緩和措置」による支給が継続されている。

燃料油価格引き下げ措置の支給単価(2026年4月9日以降)

対象燃料支給単価食品事業者の恩恵例
ガソリン48.8円/L営業車、配送車両の燃料費軽減
軽油48.8円/Lトラックの運行コスト軽減
灯油・重油48.8円/Lビニールハウスの加温、ボイラー稼働コスト軽減

[出典]資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた石油及び関連製品等に関する対応

中東情勢に端を発した原油価格の高騰や供給不安は、物流費や包装資材の上昇、円安の影響と重なり、日本の食品業界に影響を与えている。今年後半に見込まれる値上げの再燃に向け、食品メーカー、卸、外食事業者は、適切な価格転嫁や調達体制の見直しを進めることが、事業継続に向けた課題となる。

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