2025年外食産業の振り返り~回復の先にある「選別」の時代
2025年の国内外食市場は、2019年並みの35.7兆円規模に達すると予測される。しかし、その内実は大きく変化している。
「二極化」を超えた「多極化」の定着
2025年は、単なる「高いか安いか」ではなく、消費者の「価値観」によって市場が細分化された年であった。
●プレミアム・エクスペリエンス
インバウンド需要と富裕層に支えられ、客単価3万円を超える高価格帯は極めて堅調に推移した。
●タイパ(タイムパフォーマンス)消費
平日のオフィス街では、完全セルフ化された超高速ファストフードが台頭し、「食事の時間短縮」そのものに価値が見出された。
●日常の贅沢
中価格帯では、こだわり抜いた単一食材(特化型専門店)への集中が起き、ブランド力の低い汎用店は苦境に立たされた。
経営を揺るがす「3つの構造的課題」
外食企業が直面する最大のリスクは、一時的ではない「コストの定着」である。経営を最も圧迫したのは、常態化した人材不足と過去最高を更新し続けた最低賃金、原材料・物流費の上昇であった。
| 課題 | 2025年の状況 | 対策 |
|---|---|---|
| 深刻な人手不足 | 非正社員の採用倍率は3倍、社員・店長クラスは10倍といわれる採用難 | 省人化投資(DX)、従業員エンゲージメントの向上など |
| 原材料・エネルギー・人件費高 | 円安と地政学リスクにより全食材が高騰。時給の大幅上昇により、従来の「安価な労働力」を前提としたビジネスモデルは崩壊 | 原価率の再設計、地産地消や仕入れルートの多様化など |
| 倒産リスクの増大 | 個人店や老舗の廃業が過去最多ペース。ゼロゼロ融資の返済本格化、居抜き物件の争奪戦 | M&Aによる事業承継、早期の業態転換、売上・コスト・利益を即時把握した経営改善など |
特に経営を継続するために見直すべき項目を3点挙げる。
●価格設定の再定義
単なる値上げではなく、付加価値を物語として伝える「ストーリーブランディング」ができているか。
●デジタル・ガバナンス
予約から会計、在庫管理まで一気通貫したデータ活用ができているか。
●LTV(顧客生涯価値)経営
新規客獲得コストが上がる中、リピーターとの接点を強化できているか。
今後の外食経営においては、「何を作るか」以上に、付加価値を伝えるストーリーブランディング、データ活用によるデジタル・ガバナンス、リピーターとの接点を強化するLTV経営が重要視される。











