飲食業における年末年始のアルバイト充足感と、スポットワーカー活用状況
インフォマートが2025年11月に実施した飲食店アンケート(n=320)では、繁忙期となる年末年始の人材確保状況は、71.2%が「人手不足」と回答した。
また、同アンケートでスポットワーカーを現在活用している企業(n=69)に課題を聞いたところ、「ワーカーごとにスキルや経験にばらつきがある」「短時間では業務を十分に習熟してもらえない」「面接がないため、事前に人柄や適性を把握するのが難しい」「任せられる業務が限定的になってしまう」「サービス利用のコストが高い」がともに30.4%で最多となった。
[参考]インフォマート「飲食店の業務課題とスポットワークに関する実態調査」2025年11月
串カツ田中・明神丸は業務支援アプリで対応

タブレットに見本を表示することで
スタッフの理解が進み、品質を保つ。
この課題に対して、串カツ田中と明神丸の2社は、店舗運営のマニュアルを共有するアプリを導入し、タブレット端末を活用することで対応している。
このアプリ『V-Manage』は、当日のルーティン業務をタスクとして一覧化し、各作業に紐づくマニュアルを即座に参照できる機能を持つ。作業内容を可視化することで、新人やスポットワーカーであっても、指示を待たずに業務に着手できる環境を整えた。
明神丸では、写真付きのマニュアルを連携させることで、テーブルセッティングや仕込み作業の手順を標準化している。また、清掃などの属人化しやすい業務については、完了時に写真による報告を求める仕組みを構築し、現場の実行力と品質の担保を図っている。
採用戦略としてのスポットワーク活用
スポットワーカーの活用は、単なる欠員補充にとどまらず、新たな採用チャネルとしても機能し始めている。
求人広告に多額の費用を投じる代わりに、まずはスポットワーカーとして実際に働いてもらう「お試し採用」の形態が増えている。ワーカー側は店内の雰囲気を事前に把握でき、企業側は実際の動きを見て適性を判断できるため、採用後のミスマッチを抑制できる。
実績として、串カツ田中では今年度、スポットワーカーから長期雇用(アルバイト)へ移行したケースが約170名にのぼる。明神丸でも社員登用の事例が出ており、採用コストの低減に寄与している。
人材不足時代におけるQSC維持と経営安定化
深刻化する人手不足への対応は、飲食業界にとって構造的な課題である。特定の従業員の経験やスキルに依存する属人化を解消し、デジタルツールを用いて業務を標準化することは、QSC(品質・サービス・清潔さ)の維持に直結する。
時給の引き上げによる獲得競争だけでなく、デジタルによる業務支援を通じて「迷わず働ける環境」を整備することが、今後の人材確保と経営安定化の鍵となるだろう。











