配膳ロボットのメリット・デメリットとは?飲食店の導入事例とロボット比較

業界ニュース2023.07.12更新:2023.09.26

配膳ロボットのメリット・デメリットとは?飲食店の導入事例とロボット比較

2023.07.12更新:2023.09.26

配膳ロボットのメリット・デメリットとは?飲食店の導入事例とロボット比較

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配膳ロボットは、その名の通り料理を運んでくれるロボットである。実際に導入しているチェーン店なども増えており、飲食店内で稼働しているのを見たことがある方もいるはずだ。

しかし、配膳ロボットの普及はまだ新しいということもあり、活用方法やどのように省人化に繋がるのか、コストはどれほどかかるのかなど、導入に当たり調べておきたい事項も多い。そこで今回は配膳ロボットの概要やメリット・デメリット、導入事例などについて詳しく紹介していく。メリット・デメリットを確認して、自店舗に合っているのかを確認した上で検討を進めよう。

目次

配膳ロボットが普及している背景

飲食店において、配膳ロボットの導入が推し進められている。以前は、「目新しい物」という印象も強かったが、本来の目的である人手不足の解消や業務の効率化として本格的に導入している企業も増えているのが現状だ。

例えば、すかいらーくグループが2021年8月~2022年12月にかけて、「しゃぶ葉」「ガスト」など約2,100店舗へ3,000台もの配膳ロボットを導入した。

顧客満足度の向上や働きやすい職場環境を目的として取り入れ、以下のような効果が出ていることを公表している。
・アンケートで9割のお客様が「満足」と回答
・片付け完了時間を35%削減
・歩行数を42%削減
・ランチピーク時の回転率を2%改善
参照:株式会社すかいらーくホールディングス「約2,100店に3,000台のロボット導入完了

飲食業界の課題の1つとして、慢性的な人手不足が挙げられる。雇用するにも採用コストや人材育成の時間が必要だ。そこで料理の提供や下膳など、ある程度機械的に行える作業はロボットに任せ、スタッフを接客に集中させるなど生産性の向上を図ることができるため配膳ロボットが注目されているのだ。

配膳ロボットの概要

配膳ロボットは、近年さらに性能が大きく進化し、業務範囲も拡大している。

配膳ロボットの役割・機能

配膳ロボットができる主な役割を見ていこう。

・料理やドリンク、食後の食器などの運搬
・カメラやセンサーによる障害物回避
・登録ルートや選択した目的地への移動
・音声ガイドや音楽再生による接客
・多言語による外国人客への対応


料理をテーブルまで運搬するだけでなく、搭載しているパネルを操作することで自由な動作を実現することが可能だ。多言語対応のモデルは、訪日外国人客(インバウンド)といった観光客の多い地域で活躍してくれる。

また配膳ロボットによっては、持ち運べる量や価格なども異なる。主な商品の性能については、以下の通りだ。

主要な配膳ロボットのスペック比較

配膳ロボットの中でも主要な配膳ロボットのスペックと価格を紹介する。

商品名最大荷重通過幅価格
Servi
(サービィ)
30kg60cm以上5年プラン
月額99,800円(税別)
3年プラン
月額119,800円(税別)
BellaBot
(ベラボット)
40kg70cm以上メーカー希望小売価格
309万円 (税別)
Lanky Porter
(ランキーポーター)
40kg70cm以上要問合せ


ServiはSLAM (Simultaneous Localization and Mapping)技術を搭載しており、天井マーカー不要で3時間で設置が可能。最適ルートを移動することができる。また、高性能センサーにより60㎝の道幅走行が可能となっている。

BellaBotは可愛らしい見た目のネコ型の配膳ロボットで、表情が数十種あり、AI音声でしゃべるので感情を表現できる。レーザーSLAMとビジュアルSLAMの両方の位置決めおよびナビゲーションソリューションをサポートしている。

Lanky Porterはトレイが大容量かつ取付位置が自由自在なため、店舗の器に合わせて多く運ぶことができる。使いやすいディスプレイと高性能センサーを搭載した安心安全の自立走行ができる。

求める効果やコスト感、自店舗の状況も踏まえ、自店舗に1番合うものを選ぼう。

配膳ロボットのメリット

配膳ロボットを導入することで、飲食店にはどのような影響があるのだろうか。具体的に見ていこう。

業務の効率化や人手不足の解消につながる

配膳ロボットは、人の手で運ぶよりも多くの料理を運搬できることが大きなメリットといえる。機器の性能にもよるが、一度に30kg~50kgほどの積載が可能なモデルもあり、スタッフ1人が一度に運べる量と比較すると一目瞭然だろう。

混雑時でスタッフの手が空かないときでも、料理の配膳はロボットに任せることで料理提供はスムーズに行える。お客様退店後も、下膳にロボットを活用することで席の清掃作業効率が上がり、次のお客様をすぐに案内ができて、席回転率を上げることができる。

本来注力すべきお客様対応に集中できる

ホールスタッフはその分接客や電話対応などの本来注力すべき接客対応に集中できるようになり、店舗運営のホスピタリティ向上にもつなががる。

感染症対策

配膳業務をロボットに任せることで、人同士の接触時間を減らせるため、感染症対策としても有効だ。

特にコロナ禍でテーブルに仕切りを設置、セルフレジ・セルフオーダーの導入、マスクの着用やアルコール消毒など、多くの感染症対策がなされ、コロナが落ち着いてきた現在でも店内の清潔感やスタッフの身だしなみへの注意は高まっている。

配膳ロボットを導入することで人と人が接触しない料理の提供方法で感染リスク低減し、お客様にとっても安心だ。

配膳ロボットのデメリット

配膳ロボットの導入が適していないケースもある。順番に見ていこう。

導入できる環境が必須

飲食店の店内環境によっては、配膳ロボットを運用することができないケースも挙げられる。例えば、「床に段差がある」「通路が狭い」「天井が平らではない」などの制約があると、ロボットが店内を巡回できない。

中には数センチの段差なら乗り越えられる機器もあるが、乗り上げた衝撃により運搬中の料理や飲料がこぼれてしまう懸念もある。また、天井にマーカーを設置し自機の位置を把握するモデルもあるため、天井の高さや形状も求められるのだ。

配膳ロボットの主な導入条件
・通過幅を60cm~70cm以上確保
・段差が約0.5cm以下のフラットな床
・Wi-Fi環境
・天井の高さが6m以内


配膳ロボットが稼働できるように店内の改装などが必要な場合は、想定よりも費用がかかってしまうため、導入を検討する際には自店舗の環境を確認しよう。

全ての業務を自動化できない

配膳ロボットを導入しても、ホールスタッフの業務をすべて自動化できるわけではない。例えば、料理を運ぶために配膳ロボットに乗せる、運んだ料理をお客様自身で取ってもらうなどの動作はやはり人の介在が必要だ。

導入時のコストがかかる

配膳ロボットの導入をするために、まずは省人化したい業務に実際にかかっている人件費と、導入コストの把握が重要だ。オーダーや会計、料理の配膳や後片付け、テーブルの清掃などの様々な業務オペレーションを書き出し、どこまでの業務を配膳ロボットに任せるかを明確にしておくと良いだろう。

【配膳ロボットの費用】
 

買い切りタイプ約100万円~350万円
月額プラン
(3年~5年契約)
約9万円~10万円


配膳ロボットを販売するメーカーによってはお試しキャンペーン等もあるため、まずは契約プランなどについて問い合わせ検討しよう。

飲食店の配膳ロボット導入事例

飲食店の中には、すでに配膳ロボットの導入に取り組んでいる企業もある。ではどのような導入効果が出ているのか、実際の導入事例から見ていこう。

すかいらーくグループ

大手外食チェーンのすかいらーくグループは、全国展開しているレストラン「しゃぶ葉」の272店舗へネコ型配膳ロボット「BellaBot」を導入した。主にスタッフの業務負担を軽減、配膳の効率化、顧客満足度の向上を目的としている。

同店に配置された配膳ロボットは、障害物回避などの配膳機能があるだけでなく、ネコ型のモニターで豊かな表情の表現やAI音声などを搭載。また誕生日に予約されたお客様へ、特別な音楽と共にケーキを運ぶなどのサービスも充実している。

ロボットにユニークなキャラクター性を持たせることにより、小さいお子様のいるファミリー層からも好評となっている点がポイントだ。業務の効率化だけでなく、接客サービスのクオリティ向上にも一役買っている形になっている。

焼肉レストラン「安楽亭」

関東で焼肉レストランチェーンを展開する安楽亭では、POSレジ連動型の「ラクティ」を2023年3月時点で5店舗に導入した。

特徴的なのは、キングソフト株式会社のAI配膳ロボット「Lanky Porter」に、安楽亭グループの株式会社アン情報サービスが独自で開発したPOSレジシステム連携機能を搭載していることだ。

単純な配膳業務だけでなく、メニューの販売情報や在庫などと紐づけることでさらなる業務の効率化や顧客管理に繋げている。

またAI配膳ロボット「Lanky Porter」は、事前に設定したルートへの運搬や目的地への案内、店内の自動巡回や下げ膳に特化したモードなどの幅広い機能を搭載している。

香川大学医学部附属病院

2022年12月には、香川大学医学部附属病院内にあるレストランオリーブにて、配膳ロボット「BellaBot」が導入された。こちらは日本国内で初めて大学病院内に設置された事例となっている。

導入の目的としては、料理の配膳を半自動化することによる人手不足の解消と人件費の削減だ。具体的には、1人分の業務を1日あたり4時間ほど削減できると想定されている。

来店客の中には、車椅子や杖を利用して訪れる患者の方も多いため、ロボットとの接触などによる問題も懸念されていたが、実証実験で円滑に業務を遂行できている実績から、導入が実現した。

配膳ロボットの導入は安定した労働力の確保に繋がる

配膳ロボットは単に料理を運ぶだけでなく、接客サービスや座席案内、他のシステムとの連携など、業務の幅が広がってきている。まだ人の手が必要な部分もあるが、完全に自動化される未来も遠くはないのかもしれない。

安全面がクリアとなり、安定したホール業務を遂行できるモデルケースが増えれば、今後ますます人手不足に悩まされる飲食店での導入にも繋がる。

しかし店舗の規模によってはもちろん、向き不向きもある。もし配膳ロボットの導入を検討しているのであれば、自店舗で活用できるかを確認し、しっかりと計画した上で最適なモデルを探してみてほしい。


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