近年、飲食店がSDGsに取り組んでいる事例が企業規模を問わず多く見られ、注目を集めている。外食産業は以前から食品ロスやプラスチックごみ軽減の課題があることから、環境問題をはじめSDGsのテーマと広く関わりを持つ業種といえるだろう。
世界人口の増加で将来予測されている食糧危機を見据え、未利用魚*や環境負荷の低い食材でメニューを開発し、限られた資源を有効活用する飲食店も見られる。SDGsの概要や、2021年度に外食・ホテル事業者が取り組んだSDGsの事例を紹介しよう。
*未利用魚・・・一般的に使われることが少ない、価値が低いといわれる魚
SDGsとは
SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは、2015年9月の国連サミットで採択された国際目標を指す。正式名称は「Sustainable Development Goals」で、持続可能な開発目標という意味だ。貧困や飢餓、地球温暖化などに向けて17の取り組みと169のターゲットが設定されている。
企業がSDGsに取り組む背景には、ESG投資がある。これは、売上高や利益を重視した投資方法ではなく、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)といった観点を重視した投資方法だ。最近ではこういった環境や労働環境への配慮、社会貢献度を重要視する投資家が増えてきていることもあり、SDGsに取り組む企業が増えてきている。
SDGsを取り入れることで、社員の中で「自分たちの取り組みが持続可能な社会の実現につながる」という意識が芽生え、業務に対する意欲の向上や企業のイメージアップにも影響があるという。
外食産業でSDGsが取り組まれる背景
さまざまな業態の企業がSDGsに取り組む中、飲食店でもSDGsが徐々に浸透しつつある。今回は、国内外食産業で取り組まれているSDGsの内容について次にまとめた。
企業 | 業態 | SDGsの取り組み | 開始日 |
---|---|---|---|
神戸北野ホテル | ホテル | 料理人とお客様の双方に水産保護への関心を高めようと、未利用魚を使ったメニューを開発・提供 | 2021年6月1日 |
ドトールコーヒー | カフェ・レストラン | 店舗や卸事業で取り扱う余剰食材を生活困窮者に寄付 | 2021年9月~ |
スターバックス コーヒー ジャパン | カフェ・レストラン | 閉店3時間前に食品を2割引で販売して、「フードロス削減」を目指すプログラムを開始 | 2021年8月23日 |
デニーズ | ファミリーレストラン | 横浜市内の店舗で排出されたコーヒー豆かすを, 牛の餌として活用し、生産された生乳をメニューに利用。 | 2021年9月7日 |
シダックスコントラクトフードサービス株式会社 | 社員食堂 | 持続可能性の高い食材「スピルリナ」を使用したメニューを社員食堂で提供 | 2021年9月27日 |
N.D.Promotion | カフェ・レストラン | 秋田県の未利用魚を利用した「SDGsレストラン」を期間限定でオープン | 2021年11月1日~21日 |
ドトールコーヒー エクセルシオールカフェ | カフェ・レストラン | 全国のドトールコーヒーやエクセルシオールカフェで、フードロス削減を目的に消費期限間近な商品の割引販売を開始 | 2021年11月11日~ |
トリアノン洋菓子店 | スイーツ | SDGs をコンセプトとした「エシカルスイーツ」を展開する新店をオープン。プラスチック装飾の廃止や、脱プラ、減プラ資材も積極採用。 | 2021年11 月19 日 |
COFFEE AND BEER 「THE OFFCOURT」 | カフェ・レストラン | 地元千葉県の食材を使用したレストランを出店し、地産地消のSDGsに貢献 | 2021年12月8日 |
ホテル日航プリンセス京都 | ホテル | 施設内の店舗で、動物性油脂を一切使用しない大豆ミートメニューの提供を開始 | 2022年1月11日 |
スターバックス コーヒー 皇居外苑 和田倉噴水公園店 | カフェ | スターバックスが世界自然保護基金(WWF)と策定した国際認証「Greener Stores Framework」の取得店をオープン。従来の店舗に比べてCO2排出量約30%、水の使用量も約20%削減。 | 2021年12月1日 |
マクドナルド | ファーストフード | 一部店舗にて紙ストロー、木製カトラリーを導入。ストローの原料(紙)・個包装の紙、カトラリーの木材・個包装の紙はFSC認証材のものを使用。 | 2022年2月~ |
フードロス、脱プラスチック、持続可能な食品を使ったメニュー開発が進む
スターバックスやドトールコーヒーなど大手コーヒーチェーン店では、フードロスを防ぐために閉店前に食品の割引販売を開始した。その他、将来予測される食糧危機に向けて未利用魚を使用したメニューの開発や動物性油脂を使用しない大豆ミート、藍藻類の一種で持続可能性の高いとされる「スピルリナ」を使用したメニューを開発する飲食店もある。
また、「海の環境を守る」ためにプラスチック製品の使用をやめ、紙製品に代替えする飲食店も多い。マクドナルドでは、2016年からアイスコーヒーのカップをプラスチックから紙に変更している。2022年2月から横浜エリアの一部店舗で、紙ストローなどの導入を始める予定だ。
若い世代は特に社会貢献の意識が高いといわれている。消費者だけでなく従業員満足度を上げる策として、今後、飲食店でSDGsの取り組みを進めることはさらに求められるだろう。自店舗で取り組めるSDGsは何か、持続可能な社会につながる活動を一人一人がどう築くのか。引き続き、飲食業界で進むSDGsの取り組みに注目していきたい。