価格改正した外食チェーン店
はじめに2021年下半期から現在までに、価格改正を発表した大手外食チェーン店について紹介する。
ブランド名 | 価格改定商品 | 理由 | 改定時期 |
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牛たんねぎし | 深刻な品不足による仕入れ価の格高騰(3倍) | 2021年9月 | |
松屋 | ・牛めし ミニ 280円→330円 並 320円→380円 大盛 430円→530円 | 全国統一価格へ変更、牛めしのタレ、みそ汁変更 | 2021年9月28日 |
吉野家 | ・牛丼 並盛 387円→426円 ・丼サイズの価格変更 特盛 +319円→+352円 超特盛 +418円→+473円 ・朝牛セット 小盛 437円→481円 | 輸入牛肉の価格高騰や原油高の影響 | 2021 年 10 月 29 日 |
いきなり!ステーキ | ・ハンバーグとグリルチキン以外のステーキ商品を値上げ | 牛肉の仕入価格の高騰 | 2021年12月1日 |
乃が美 | ・「生」食パン レギュラー 864円→972円 ハーフ 432円→486円 スライス 432円→486円 | 原材料の大幅な値上げ | 2021年12月1日 |
すき家 | ・牛丼 ミニ 290円→330円 並盛 350円→400円 中盛・大盛 480円→550円 特盛 630円→700円 メガ 780円→850円 | 原材料価格・原油価格の高騰 | 2021年12月23日 |
丸亀製麺 | ・かけうどん、ぶっかけうどん、ざるうどん 320円→340円 ・釜玉うどん 390円→420円 ・とろ玉うどん 460円→490円 ・肉うどん 590円→620円 ・野菜かき揚げ 140円→150円 ・かしわ天 150円→160円 ・並から大サイズへの変更 +110円→+120円 釜揚げうどん、丸亀うどん弁当などは据え置き | 原材料費、人件費、物流費の高騰 | 2022年1月12 日 |
ゆで太郎 | ・季節のミニ丼セット(温・冷) 690円→700円 ・季節のおそば(温・冷) 590円→600円 ・かきあげそば(温・冷) 460円→490円 ・かきあげ 100円→130円 | 原材料価格、物流費高騰 | 2022年2月 |
ミスタードーナツ | ・ドーナツ、パイ、マフィンの計33種類 1個あたり10円の値上げ。 ・ドーナツの詰め合わせ 20~50円の値上げ | 小麦粉、食用油の原材料の高騰 | 2022年3月1日 |
牛丼チェーン大手3社が値上げ。背景はミートショックと原油高
牛丼チェーン大手の吉野家、すき家は、値上げの理由をともに原材料価格と原油価格の高騰としたほか、すき家では持ち帰り容器などの値上がりや注文用タブレットの導入費においても半導体不足などの理由から値上げの要因となったという。
輸入牛肉の価格高騰は深刻で、肉の仕入れ値の高騰により小売店や飲食店での販売価格が上昇していることは「ミートショック」と呼ばれている。米国産牛肉の値上がりの背景には、同国内で新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだことから、外食の需要が戻ってきたことが挙げられる。
農畜産業振興機構のデータによると米国産の冷凍バラ肉の卸売価格は、2021年11月は1kgあたり1063円で、前年比160.1%となった。仕入価格の上昇に伴い、スーパーでも特に牛肉の値段が高騰しており、小売店でも売り上げが伸び悩んでいるという。
また、世界第2位の牛肉輸入国であるオーストラリアでは、近年の干ばつの影響により、飼育頭数が減少しているという報告がある。2020年の牛飼養頭数は、干ばつ前のピークだった2013年よりも16%少ない2460万頭と過去20年で最も少なくなる予想が立てられた。そのほかの原因として、中国や韓国での牛肉の需要が増えていることも卸売価格の高騰の要因である。
ミスタードーナツ、乃が美も値上げ
政府は輸入小麦の製粉会社への販売平均価格を2021年10月に19%値上げした。政府売渡価格の改定について農林水産省は、小麦の生産国である米国北部やカナダ南部において、高温乾燥が続き、作柄が悪化したことなどが要因だと説明している。
原材料の高騰を理由にミスタードーナツを運営するダスキンは今年3月からドーナツ、パイ、マフィンなど計33種の商品を値上げすることに踏み切った。1個あたり10円の値上げとなる。公式サイトでは「価格改定の主な要因は、商品の主原料である小麦粉や食用油などの原材料が高騰しており、食材の調達コストや物流費などの諸経費も上昇しております」とつづっている。ミスタードーナツ以外にも、食パン専門店の乃が美や丸亀製麺も原材料の大幅な高騰に伴い、商品の値上げに踏み切った。
一方で、日本の外食産業の価格は世界の主要国と比較すると安価な傾向になっている。高い品質やサービスなどの価値に見合った対価の要求は、正常な経済活動を支える根幹だ。業界全体が適正な価格改定に取り組むことで、外食産業の低コスト傾向を転換させる機会になってほしい。
値上げの要因は今後も続く。顧客離れを起こさない工夫を
数年前から世界的な人口増加による原材料の高騰があり、物流や梱包資材のコスト高騰、人件費の上昇が起きている。さらにコロナ禍の影響を受けて食肉加工場の閉鎖や人材流出による人手不足などが各地で重なっていることでサプライチェーン全体のコストが増加し、外食産業は販売価格の値上げを余儀なくされている状況だ。値上げは免れない中でも、客離れを防ぐために値上げ分相当の価値の提供が求められそうだ。
一方で、日本の外食産業の価格は世界の主要国と比較すると安価な傾向になっている。品質やサービスに見合った適正な対価の要求は、正常な経済活動を支える根幹といえる。業界全体が適正な価格改定に取り組むことで、外食産業の低コスト傾向を転換させる契機になってほしい。