毎年2%ずつ上がる人件費に、飲食店はどう対応するか
【Q】現在の飲食業の課題は、どんなところにあるでしょうか。
いろいろありますが、まずは人件費の高騰です。私たちが学生の頃は、飲食店のホールスタッフといえば時給800~900円でしたが、ここ数年は1100円や1200円も当たり前になっています。単純計算で約1.5倍です。
時給は毎年2%ずつ上がっているという試算もあり、このまま何も手を打たなければ、5年後には赤字に陥る飲食店が増えてくるでしょう。
また飲食業は離職率も高く、人を雇ってもすぐ辞めてしまうため、従業員の数を確保できずに閉店してしまう店も珍しくありません。
さらにニューノーマル時代の飲食店では、席間を広く取ることが求められています。席数の減少は売上の減少に直結するため、生産性を上げて高効率な運営をしなければ赤字になってしまうでしょう。
その他、非接触の接客ニーズも従業員と来店するお客様の両方から増えており、これからは「働き手の安定的な確保」と「生産性の向上」が大きな課題になると見ています。
単純労働をロボット切り替え、労働の質を向上
【Q】ロボットに人の仕事が奪われることはありませんか?
飲食店の方はよく、その点を心配されるのですが、ロボットが人の仕事を奪うことはありません。なぜならロボットは万能ではないからです。
例えば配膳ロボットの場合は、料理を乗せて運ぶことしかできません。お客様のテーブルを見て水を継ぎ足すとか、使った小皿を取り替えるなどの細かなサービスやホスピタリティの部分は、やはり人がやるべきなんです。
従業員は人にしかできない接客に集中し、単純作業はロボットに任せる。そうやって分担することで、結果的に接客の質を上げ、顧客満足度をあげることができます。
実際にロボットを配置した店舗スタッフの感想も良いですね。ロボットに配膳を任せられるので、重いものを運ぶ重労働が減り、お客様への気配りに集中できるようになったという声をいただいています。
また、いくら便利でも、ロボットの操作そのものに研修が必要では本末転倒です。配膳ロボット「サービィ」は学生から年配のアルバイトまで、多くのスタッフが簡単に操作できるよう「分かりやすさ」にこだわって設計されています。
料理を載せて番号ボタンを押し、出発する以外のオペレーションはほぼありません。携帯電話でたとえるなら、操作が難しいスマートフォンではなく「らくらくフォン」のようなイメージです。
郊外型の焼肉店やレストランに強い、配膳ロボット
【Q】配膳ロボットの導入がしやすい業態はありますか?
ロードサイドの焼肉店や居酒屋、レストランなどが向いています。特徴としては配膳回数が多く、配膳導線がフラットで長い店です。
あとは運ぶメニューが不安定でないものという点がポイントだと思います。グラスいっぱいに注がれたドリンクやスープを提供するのは、まだ少しハードルが高いですね。
また、走行する道幅が60センチ以上ある必要がありますが、こちらは消防法に基づいて設計された店舗であればほぼ条件がクリアされています。さらに昨今のコロナ禍において席間を確保している店舗が増えましたので、以前より導入しやすくなっていると思います。
コスト的な面でいうと、やはり広い店舗のほうが効果は大きいですね。店舗の大きさでいうと、70席以上の席数があると導入メリットが出やすいと思います。あとはアルバイトを採用する際の人件費や、教育費、シフト調整の必要がないことなど、課題によっては小~中規模店でもロボットを導入する意味はあるのではないでしょうか。
配膳ロボットの活用で、コスト構造を改善
【Q】お客様の反応はいかがですか?
「配膳ロボットなんて、賑やかしで実用レベルではないだろう」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実際に導入してみると、驚くほどスムーズに受け入れられています。
最初はロボットがテーブルに横付けになった際に少し戸惑っていたお客様も、2回目の配膳からは全く気にされていませんね。ロボットによる配膳がむしろ、当たり前のものとして受け入れられているようです。
【Q】配膳ロボットの活用パターンを教えて下さい。
おおきく2つパターンがあります。1つはレストランのような配膳形式で、配膳ロボットが料理を乗せたまま客席まで動いてくるイメージです。従業員はロボットから料理を取り、お客様のテーブルに料理を乗せて「こちらになります」と、料理の説明をしながら接客をします。
もう1つは、ロボットが運んだ料理を、従業員ではなくお客様に直接「サービィ」のトレイから取っていただくパターンです。この場合、配膳業務は100%ロボットに置き換えられます。テスト導入した焼肉店で、「ランナー」と呼ばれる配膳専門のスタッフの人件費をそのまま削減できたケースもあります。
削減したコストでより原価の高い食材を調達してお店の価値を上げたり、焼肉店であれば、従業員がお肉を焼いて提供するサービスを始めたりするなど、ロボットが生み出した余剰の人員やお金をどう使うかは、各店舗の腕の見せ所です。他の業態でもさまざまな使い方があるでしょう。
配膳ロボットの活用で、飲食店はもっと価値を上げられる
【Q】今後の展開について教えて下さい
コロナ禍で、飲食店は想像を絶するダメージを受けています。このタイミングで「配膳ロボットなんて」と感じる方もいるかもしれません。しかし飲食店の存在意義は、お客様に店舗を訪れてもらい、快適な空間を楽しんでいただくことにあります。
厳しい状況下において、これまでと変わらないサービスを提供するために「新しく変える部分」が必要だと考えています。例えばロボットを導入する前提で店舗設計すれば、配膳だけでなくデシャップの皿を載せたロボットを、そのまま洗い場まで入れることも可能になります。そうすることで、スタッフが常にホールに居続けるオペレーションも可能になるでしょう。
ロボットを導入しただけで飲食店の集客が増えることはありません、またすべての店舗の課題がロボットで解決するわけでもないでしょう。しかしコスト面で優れていることや、人とロボットが共生し人が過重労働から開放され、人が人らしく働ける環境を整えることが「ロボットを活用して収益を上げる経営」の第一歩になると思っています。
ソフトバンクロボティクス株式会社
お話:プロダクト&サービス本部 事業推進統括部 統括部長 畑 達彦 氏
事業内容:ヒューマノイドロボット・サービスロボットの開発・販売・メンテナンスサービスの提供
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