キャッシュを最大化させるためには、営業利益に減価償却費をプラスした簡易キャッシュフローベースで、できるだけプラスを目指す。あるいはマイナスを削減するという言い方でもいい。時には売上げが減少することもあるが、あくまで手元のキャッシュを最大化することを最優先とする。
加えて、コストダウン後の損益分岐点を算出し、緊急事態宣言直前の売上推移と比較してほしい。この数字を判断材料として、多店舗展開している企業はあえて再開させず休業期間を延ばす店舗を選定すべきだ。また、緊急事態宣言解除後も安易に店舗をフルオープンするのは感心しない。
休業明けの店舗には、在庫積上げでの初回発注金額がかかってくる。営業を再開すると、固定費以外に変動費用分も赤字が拡大し、更に食材の経費計上は支払いベースだ。支払いサイトとの関係もあるが、売上が充分に戻らない状態での営業はかえって赤字金額を増大させることにもつながる。この点は、充分に留意してシミュレーションを行ってほしい。
不況時は何としても手元にキャッシュを置いておくことがポイントだ。先行半年分の固定費分を常に手元に確保できるようにすることが必要である。
緊急事態宣言解消後は、どのように業績を立て直すのか
コロナショック収束後、社会はどうなるだろうか。参考までにリーマンショック後の日本の外食市場データを見てみよう。
パリバショックのあった2007年から外食倒産企業が急増し、2008年以降は年間600社以上が倒産している。その中で、2008年以降に外食市場は広義・狭義共に東日本大震災の起こった2011年に底を打つまで、3年連続で市場規模が縮小していった。
今回のコロナショックは、リーマンショックはおろか、感染症としては1918~1920年に発生したスペイン風邪(死者数は世界中で5千万人ともいわれる)や、不況としては1929年から1930年代後半まで続いた世界恐慌に匹敵するといっていいだろう。緊急事態宣言が解消されたとしてもすぐに景気が回復するわけではない。その前提で今から中期的な計画を見直すことがその後のスムーズな回復につながる。
外食事業者に必要な、アフターコロナの中期経営計画
外食事業者は新チャネル・販路を開拓し内部体制を強化するとともに、IT化や生産性の向上に取り組む視点を持ち続けることが企業の永続性のポイントとなる。アフターコロナで起こりうる現実としては、既に現状でも急拡大しているテイクアウト、デリバリー、ケータリングの拡張、発展が考えられる。
これらは厳密には保健所の営業許可が必要になってくる点に留意してほしい。保健所は医療関連の業務が膨大化しており、飲食店指導の問い合わせに対応できない可能性がある。また酒類を取り扱う飲食店が、期間限定での酒販免許を取得する際には管轄官庁が違うため、行政書士などに依頼する必要もありえるだろう。重要なのは、表面化した問題だけを対症療法的に手当てするのではないという認識だ。苦境に立つ今だからこそ、抜本的にコロナ後を見据え、自社の未来をデザインしなおしてほしい。
最後になるが、企業経営は継続・廃業・倒産・買収いずれかの道をたどることになる。100年に一度と言われる現在の危機こそ自社が次の100年継続できるかどうかのターニングポイントとなる。ビジネスモデルを全て変えても良いくらいの覚悟を持って、スピーディに行動してほしい。
株式会社タナベ経営 食品・フードサービスコンサルティングチーム
東証一部上場のコンサルティングファームであるタナベ経営の食関連分野エキスパートで構成したコンサルティングチーム。上場外食企業の1割以上へコンサルティングサービス提供の実績がある。食品分野は、原料メーカーから2次・3次加工食品までと食品機械製造や包材メーカー、卸まで関連産業全てをカバーしている。
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