外食を“選ばれる業界”にするには~鳥貴族・トリドール社長対談

セミナー・イベントレポート2026.01.30

外食を“選ばれる業界”にするには~鳥貴族・トリドール社長対談

2026.01.30

「社長報酬1億円」の開示――次世代に夢を見せる責任

対してエターナルホスピタリティグループの大倉氏は、「経営トップのあり方」から業界の地位向上を説いた。大倉氏は昨年、自身の役員報酬が1億円を超えたことを明かし、「経営者が高い報酬を得て、それを開示することに意味がある」というアプローチを示した。スポーツ界において大谷翔平選手のようなスタープレイヤーが高い報酬を得ることで子供たちの憧れとなるように、ビジネスの世界、特に外食産業においても「トップに登り詰めればこれだけの夢がある」という事実を可視化する必要があるという考えだ。

特に大倉氏が懸念するのは、創業家ではない「サラリーマン社長」の未来だ。創業者は株式配当があるため役員報酬を抑える傾向があるが、それでは後を継ぐ次世代の経営者が夢を持てない。「次の社長も1億円を取れるようにする」という大倉氏の決意は、優秀な若者が経営者を目指して外食業界に入ってくるための布石である。

AI活用と事業承継――「AI大倉」が創業者のDNAを継ぐ

セッションの後半では、テクノロジーの進化、特にAI(人工知能)の活用についても議論が及んだ。ここで大倉氏から飛び出したのが、「AI大倉」によるサクセッションプラン(承継計画)だ。大倉氏は将来的にCEOを退き、会長、そしてファウンダーへと退くプロセスを描いている。その一環として、自身の思考パターンなどをAIに学習させているという。その目的は、自身が経営の第一線から退いた後、あるいはこの世を去った後でも、創業者の理念や判断基準を組織に残すことにある。社員が迷った際に「大倉ならどう考えるか」をAIが答えられるようにすることで、企業のDNAを永続させる試みだ。

粟田氏もこの構想に共感を示した。粟田氏は英国風パブ「HUB(ハブ)」の例を挙げ、創業者が去った後も創業者の哲学が現場で語り継がれていることに触れ、AIがその役割を果たす未来に期待を寄せた。一方で粟田氏は、厨房の自動化が進みすぎて「工場で働いているようだ」と優秀な人材が辞めてしまった他社の事例を紹介。AIや機械化を進める中でも、人が働く喜びや「アナログな人間味」を残すことの重要性も示した。

現場の待遇改善を進める粟田氏と、トップの夢を語る大倉氏。そしてアナログな人間関係を大切にしながら、最先端のAIで哲学を残そうとする両氏。40年の荒波を越えてきた両氏の対話には、変化を恐れず、しかし“人”という本質を見失わない経営の要諦が浮かび上がった。外食産業が“選ばれる業界”になるためのヒントは、二人の対話の中に凝縮されている。

注目のキーワード

すべてのキーワード

業界

トピックス

地域