第2回外食SX勉強会レポート~飲食店の地方経営戦略、CSV経営に必要な分析手段と方法~

セミナー・イベントレポート2022.08.23

第2回外食SX勉強会レポート~飲食店の地方経営戦略、CSV経営に必要な分析手段と方法~

2022.08.23

第2回外食SX勉強会レポート~飲食店の地方経営戦略、CSV経営に必要な分析手段と方法~

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外食企業の若手経営者が集う会員制サークル 外食SX(代表幹事:株式会社和音人 代表取締役・狩野高光)の第2回シン・ガイショク論が5月に開催された。WOODHOUSE株式会社 代表取締役 氏田善宣氏と、株式会社ネバーランド 代表取締役 加世堂洋平氏が登壇し、CSV経営と地方経営について語った内容をお伝えする。

目次

WOODHOUSE株式会社 氏田善宣氏が語る地方での飲食店経営方法とは

第1部 では、大分県で「感動のもつ鍋処 陽はまたのぼる」など、7業態8店舗を展開するWOODHOUSE株式会社 代表取締役 氏田善宣氏が、「地域と共に生きる飲食店経営」について語った。コロナ禍の厳しい状況で、改めて大切にしたことは居酒屋甲子園(※)で学んでいる理念経営であり、企業理念・ビジョン・バリューを見つめ直すことだと言う。コロナ禍では視座・視点を高め、視野を広く持った業態開発を行い、10カ月間で16店舗のフルーツサンド店の展開や中華業態の展開を始めた。
※居酒屋甲子園:“居酒屋から日本を、世界を元気にする”という想いを持つ全国の同志により開催された、外食業界に働く人がより誇りを持ち、学びを共有できる場を提供する大会。

 氏田氏は、福岡の飲食店で修業をして8年ぶりに大分県竹田市に帰郷した際に、土曜日19時頃の閑散とした街をみて「生まれ育ったこの街をこのままにしておいていいのか?」という想いをいだき、地元の竹田市で出店を決意した。自分たちがやりたいかどうかではなく、「街に必要か」の視点で業態展開を行っている。
また、地方にはビジネスを進める上での商圏の難しさがある一方で、都心部に比べて家賃が抑えられるといったような利点もある。地方経営では、ストックビジネスとフロービジネスの融合が大切であると言う。飲食店はコロナの影響を受けるなど、やはり経営が安定しない面もある。そのため、例えば、個人で所有している物件を他の人に貸しながら(=ストックビジネス)、飲食を経営する(=フロービジネス)というのが、氏田氏の考える経営方法だ。

株式会社ネバーランド 加世堂洋平氏による地域の価値を活かしたCSV経営

第2部では鹿児島と東京で飲食店6店舗を展開する株式会社ネバーランド 代表取締役 加世堂洋平氏が、「地域の価値を活かしたCSV経営」について語った。
 
 CSV経営に必要な考え方として、まずはCSRとCSVの違いを説明した。CSR(Corporate Social Responsibility)は社会貢献が強く、CSV(Creating Shared Value)はビジネスを通じて社会課題を解決していくことが目指される。CSV経営には自社の社会的価値と、経済的価値が存在するが、そこに時代の流れと世論が関わっていることを忘れてはいけないと警鐘を鳴らした。

加世堂氏は、これまでの店舗運営事業、地域再生事業、管理本部の3事業体制に加え、商品開発事業、EC事業、FC/茶ぶり加盟店事業の3つをコロナ禍で立ち上げた。6つの事業が繋がることが利益を上げる上で大切な事であったと言う。

同社は、世論に流されることのないよう、自社の社会的価値(雇用・教育や、飲食業の価値向上)と、自社の経済的価値(売上100億・営業利益15%)といった明確な目標を設定している。中でも営業利益を目標設定したことがポイントであったと振り返る。
飲食店の営業利益は平均して5~10%と過去50年間変わっていないが、この構造をコロナ禍でひっくり返さない限り、飲食店経営の苦しい状況は続く。そこで自社の営業利益15%という目標を設定した。ただし、飲食店経営だけで営業利益15%は難しい。だからこそ飲食事業以外の領域へチャレンジする動きを加速できたと言う。
 
最後にCSV経営を成功に導くポイントは「学びの共有」と「覚悟」の2つだと加世堂氏は熱く語った。
「覚悟」とは、待つ姿勢から仕掛けの商売に変えることだ。同社は、居酒屋・飲食店を営みながら、ECサイトも運営している。2年経つと方法論がある程度確立されてくるため、飲食から抜け出してECを成功させる会社が出てきてしまう。その第一人者になるためには、今年中に結果を出さなければいけない。全力をかけ第一人者なることで、会社の売り上げはボトムアップされ、また、今までの利益構造が崩れることによって、飲食という魅力をより発信できる、変えられると考えていると締めくくった。

第3部 CSV経営テキストでの座学勉強

第3部では代表幹事:株式会社和音人 代表取締役 狩野高光氏によるCSV経営テキストを使った座学勉強会が行われた。

SDGsとCSV経営の違いと特徴

SDGsとは「資本主義社会を続けるために、持続可能な社会を作る世界目標」であり、CSV経営とは「SDGsを達成するための手法の1つ」である。まず、SDGs(目標)とCSV経営(その手段)はまったく違う事を理解しておこう。

狩野氏:我々アーリーステージ(起業直後)の企業が今やらなければいけない事は、CSV経営をして、身近な食領域の課題・解決策を事業に組み込むことです。お金儲けや地位の獲得目当ての経営では失敗します。地域活性などの明確な目的がある中で、社内でCSVマインドを育てて新しい事業を生み、手段として様々な経営方法を持つことが成功につながります。そして、CSV経営を続けることで、副産物としてSDGsが生まれていた、という状況になるのが理想です。

SDGs:
・大企業、成熟企業向けの規模が大きい取り組み
・CSV経営を続けていくことで生まれた副産物

 

CSV経営:
・アーリーステージの企業でも取り組みやすい
・身近な社会課題=飲食経営の場合、食領域の課題から取り組む

 

自社分析と課題提起のための分析方法~3C分析・5フォース分析・SWOT分析~

狩野氏:いいものを作れば売れる時代は終わり、今後は自社を取り巻く環境を分析することが必要です。分析ができている企業は、自社の強み、弱み、機会、脅威を理解しているから覚悟が生まれ、CSV経営ができています。3C分析、5C分析、5フォース分析、いくつもの分析を重ねることにより「かもしれない」から、「絶対にそうだ」という本当のファクトを手に入れることができます。

①3C分析
市場環境・自社環境・競合環境を分析し、成功するための要因を明らかにする。
②5フォース分析
フォース(脅威)となる市場顧客、市場規模、成長性、市場状況の変化、市場環境(ニーズ、購買動機、購買プロセス)の5つを分析する。
③SWOT分析
「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の項目を分析する。
クロスSWOT分析
上記4つの項目のマトリクスが完成したら、それぞれ掛け合わせることで選択すべき戦略を明確にしていく。

狩野氏:特にSWOT分析は、CSV経営を行うのに重要な軸となります。目的・目標の設定をして、「強み・弱み・機会・脅威」の表を埋めていき、マトリクスを作ります。自社の例を挙げると以下のようになります。

強み:飲食経営における、職人集団による圧倒的な承認力と認知力がある
弱み:良い職人を雇う、良い食材を使う事により、FLコストが悪い
機会:コロナ禍で消費者の食リテラシーが上がっている、新しいマーケットが生まれた(健康志向、自然派思考など)
脅威:大手が既に自然派やグリーンラベル等に乗り出している

狩野氏:これまでの外食産業の発展は、これまでの世代が作り上げてきたものです。私たちの世代では、CSV経営などやるべきことを主体的に考えて、外食産業を発展させる必要があります。外食SXで経営手法をシェアして互いに高め合っていきましょう。

外食第5世代 未来型会員制サークル 外食SX(エスエックス)
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