【水素社会の廃酸素を有効活用】ウニの実入りが増える!酸素を含んだ気泡の研究成果を発表

更新日: 2024年06月13日 /提供:TKS

ウルトラファインバブルが“食害”に『商品価値』を与え、磯焼けの課題解決にもひと役

株式会社TKS ( 本社:岐阜県岐阜市、代表取締役社長:岩永信幸、以下、当社 ) は、水の技術により社会貢献することを使命とした企業であり、ウルトラファインバブルシャワーヘッドの先駆け「Bollina(ボリーナ)」シリーズのメーカーです。

この度、当社は三井共同建設コンサルタント株式会社 ( 本社 東京都品川区、代表取締役社長 中野 宇助、以下、三井共同建設コンサルタント )との共同研究により、水素製造時に排出される「酸素」を目に見えないほど小さな泡「ウルトラファインバブル(以下、UFBと表記)」とすることによって、磯焼け対策で駆除したムラサキウニの蓄養効率を改善する研究成果を発表したことをお知らせいたします。本研究成果は、2024年5月25日に、日本水産工学会の学術大会(場所:東京海洋大学 品川キャンパス)にて演題「P2G廃酸素の活用を想定した酸素曝気とウルトラファインバブルによるウニ蓄養実験」として発表されました。

日本では、この20~30年で海の森ともいえる「藻場」が急速に衰退している現状があります。エネルギーとして注目されている水素の製造時に排出される「酸素」と「UFB生成技術」を組み合わせることにより、水素社会におけるエネルギーの地産地消と、磯焼け対策の駆除ウニの活用を両立する研究成果となります。

駆除直後のやせウニ

畜養後のウニ


酸素UFB<NB区>で飼育したウニの生残率が最も高く実入りが多い

社会的背景~水素社会で発生する廃酸素~
近年、自然エネルギー利用の必要性の高まりから、海に吹く風を利用して発電を行う風力発電の事業開発・計画が多数なされつつあります。しかし、風力発電は気象条件により発電量のばらつきが大きく、安定的にエネルギー供給するには蓄電が必要だと言われています。蓄電技術の一つとして水電解による水素製造(P2G技術)も進展しています。余剰電力を水素に変換し、必要な際に電気に改めて変換することができるのです。水素は水から生まれて水に還る「CO2フリーの再生可能エネルギー」として最も注目されているエネルギーです。今後、電気分解による水素の製造が増えると、その副産物として生成される酸素が大量に廃棄される可能性もあります。

社会的背景~生物多様性を脅かす海の課題「磯焼け」失われていく藻場~



近年、世界中で沿岸漁場から海藻類が無くなる「磯焼け」という環境被害が深刻化しています。様々な要因がありますが、そのなかでも食害(生物が過剰に海藻などを食べることで起こる被害)は大きな原因の一つとなっています。地球温暖化により、海水温が1年中高くなることで、本来の活動時期ではない冬でもアイゴやブダイ、ムラサキウニなど、海藻を食べる生き物の食欲が旺盛となり藻場を食べ尽くしてしまいます。

磯焼け地帯のムラサキウニは、実入りが少なく「やせウニ」とも呼ばれます。人間が食べられる部分が少ない為、商業的価値が低く漁獲対象になりにくい存在です。そこで、磯焼け地帯のやせウニを捕獲して短期間の養殖(畜養)により、商品価値を与える研究が進められています。

研究の目的 ~エネルギーの地産地消、やせたウニに高付加価値を与える~



水素社会が加速して水素製造が増えると、副産物として生成される酸素が大量に廃棄される可能性があります。本研究ではその廃酸素を活用することで、駆除されたやせウニ(ムラサキウニ)を効率的に育て、商品価値を生み出すこと、そしてその経済的なメリットにより、食害をもたらすウニの駆除を推進することを目指しました。当初は酸素のみで結果が得られると想定しておりましたが、酸素がUFB化すればより良いであろうという予想のもと、酸素UFBの環境も用意しました。

研究内容~意外な結果!酸素ではなく、UFB独自の効果が現れた~

実入り計測の様子 

餌を食べるウニの様子

海水かけ流し、水温調整なしの状態で、夏季2か月、冬季4か月に渡り畜養実験を行いました。空気を送り込む「空気ブロア区」、酸素を送り込む「酸素ブロア区」、酸素を超微細な気泡UFBにして送り込む「酸素UFB区」、この3種類の水槽を用意して、1つの水槽あたり、夏季25個体、冬季30個体を畜養し、生残率(ウニが生存する割合)と、ウニの実入りの変化を記録しました。
酸素UFBの発生には当社技術μ-Jet機構を使用しています。(特許:第4999996号/国際特許取得済:中国・韓国)

小型水槽での試験の結果、水中の酸素が最も多かったものは「酸素ブロア区」であったにも関わらず、「酸素UFB区」の水槽で畜養したウニが最も生残率が高く、実入りが多くなることがわかりました。これにより、ウニの畜養では水中の酸素濃度よりも、酸素UFBの作用が有効である可能性が示唆されたものとなります。

≪ 酸素UFBの水槽:やせウニの実入り(GSI)が良くなり、生残率が高い結果 ≫



≪ へい死(突然死)の要因にはストレスが考えられる ≫



UFBは負の電荷帯電や摩擦の低減、気体のキャリア機能、フリーラジカル(活性酸素の一種)の生成など多様な機能を持つとされています。ウニは多孔板という器官を通して、海水を体の中に取り込み体液の一部としている為、UFBが直接体内(水管系)に取り込まれている可能性もあるとみています。今後、どのような作用により酸素UFBが成長促進に役立つのかについて、様々な角度から確認していく必要があると考えています。

学会発表 ~2024年度 日本水産工学会~
2024年度 日本水産工学会
学術講演会にて以下内容を発表しました。
https://sites.google.com/view/2024jsfe



学会発表の様子

第一会場 15:00 講演番号111
『P2G廃酸素の活用を想定した酸素曝気と
 ウルトラファインバブル(UFB)によるウニ蓄養実験』
発表者:本田陽一 様(三井共同建設コンサルタント)
<共同研究者名>
本田陽一、濱隆博、吉田恭平、松尾智征(三井共同建設コンサルタント)
山下貴敏、三島良介(TKS)
土屋光太郎(東京海洋大学)

ウルトラファインバブル(Ultra Fine Bubble)について



UFBという技術は、赤潮でカキが全滅したことをキッカケに1998年に広島カキ養殖への適用がなされたことでも知られています。0.001mm(=1マイクロメートル)未満の目に見えないほど微細な泡で、水中で長期間(数か月~1年とも)維持される性質があり、水産分野でもすでに利用されています。

本研究成果が寄与するSDGs海の生物多様性の保全・回復(藻場再生)
・目標14.「海の豊かさを守ろう」
・目標13.「気候変動に具体的な対策を」

保護漁業のブランド化
(ムラサキウニを使った地場産品)
・目標9.
 「産業と技術革新の基盤をつくろう」






今後の展望
今回の研究では、酸素のみでは結果が得られなかったことから、UFB独自の何らかの効果発現機構があるだろうと期待されます。今後ウニ以外の水産生物について試験を実施する予定です。これにより、今回の効果が発現したメカニズムの解明を目指します。再現性を得られる事例を積み重ね、水素社会での廃酸素活用について、新たな市場の創出に向けた地ならしを図りたい考えです。本研究成果をエビデンスとして、UFBを活用し生物多様性への取り組みも行っていきます。
【TKS生物多様性宣言2024】
https://action.tks-gifu.jp







当社は2023年11月8日に「生物多様性の保全と地方創生に貢献する支援」として徳島県美波町へ企業版ふるさと納税を活用した寄附を行いました。今後も「水」を通じて社会貢献に繋がる活動を応援します。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000119238.html

※「FINE BUBBLE/ファインバブル」、「ウルトラファインバブル」は一般社団法人ファインバブル産業会(FBIA)の登録商標です。

【 会社概要 】 水の真のチカラを最大限に
株式会社TKSは、1965年にたった一台の汎用旋盤からはじまった企業です。『水栓バルブ発祥の地』と呼ばれる岐阜県山県市(旧:美山町)で、わたしたちの水技術が育まれました。2010年よりファインバブルの研究開発を行っています。創業時から受け継ぐモノ創りの心を大切に、各分野の専門知識をお持ちの大学、企業様との共同研究・開発を通じて、多くの分野でファインバブルの活用・製品化を目指し、社会貢献に努めます。


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