「1つ目が原料です。ハラール以外のもの(ハラームとされているもの)が含まれていないか、すべての成分の詳細な情報開示が求められます。そのためには、まず、使用している原料がどのようなものかを正確に把握する必要があります。
2つ目が製造設備です。製造ラインなどの設備がすべてハラール専用であることに加え、各工程でハラール以外のものとのコンタミネーション(混合・接触)が発生しないかどうかを、厳しくチェックされます。認証機関によっては、工場全体をハラール専用にすることを求める場合もあります。
3つ目が保管場所です。原材料や最終製品が人為的なミスなどによって、コンタミネーションが起きない体制になっているかどうかが問われます。保管場所を別にするか、パーティションで区切るなどの対応が必要です。
最後の4つ目が雇用です。マレーシアのハラール認証機関(JAKIM)の場合は、ハラール管理者としてイスラム教徒を3名以上雇用することが求められます。ただ、日本では地域によっては、すぐにイスラム教徒を複数雇用するのが難しい場合もあります。そこで、社内にハラール委員会を設置し、ハラール研修や管理者講習を受けた複数の担当者が工場に常駐するのを条件に、認証を与える機関もあるなど、機関によって指導内容が異なります」
日本企業の取得状況と活発な動き
国内外の工場でハラール認証を取得している日本企業の数は、「公的な統計はありませんが、原料メーカーで100社、その他の食品メーカーで200社ほど」だという。
「すでに数多くの大手食品・飲料メーカーがイスラム圏に工場を作り、ハラール認証を取得しています。日清食品のカップヌードル、大塚製薬のポカリスエット、ポッカサッポロのポッカコーヒーなど、日本向けの商品とは異なる、ノンポーク・ノンアルコールのハラール対応商品を展開し、ムスリムから人気を博しています。ただ、大手メーカーで、日本国内向けにハラール商品を製造している企業は少ないのが現状です。その点をビジネスチャンスと捉えた中小企業が、ムスリムのインバウンド市場に参入する動きが活発化しています」
ムスリムのインバウンド市場は、ホテルやレストラン向けのいわゆる業務用食品の“BtoB”と、小売店でムスリムが購入する土産品などの“BtoC”の二つのニーズがある。
まず、BtoBの動向を見てみよう。積極的な動きを見せているのが、「ムスリムがハラールかどうかを最も気にする」という食肉だ。ブランド牛・神戸牛の加工を行っている三田食肉公社(兵庫・神戸市)や、ブランド地鶏・天草大王を扱う蓮池養鶏場(熊本・天草市)が認証を取得しているほか、日本各地でハラール肉専用の工場を整備する動きが活発になっている。
また、醤油、味噌などを製造する調味料メーカーの動きも目立つ。発酵過程で発生するアルコール分を抑えることで、認証を取得する企業が出てきた。中堅メーカー・ちば醤油(千葉・香取市)では、国内外の飲食店向けに、業務用サイズのハラール醤油を製造・販売している。
次にBtoCを見てみると、代表例としてムスリムに人気の高いチョコレート菓子が上げられる。