弁護士が解説!フランチャイズ契約における加盟者の営業に対する本部の介入等について

飲食・宿泊2023.06.13

弁護士が解説!フランチャイズ契約における加盟者の営業に対する本部の介入等について

2023.06.13

虎ノ門カレッジ法律事務所 弁護士 福原 竜一

虎ノ門カレッジ法律事務所 弁護士 福原 竜一

弁護士が解説!フランチャイズ契約における加盟者の営業に対する本部の介入等について

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目次

1 はじめに

食品・飲食業界においては、フランチャイズ・システムを用いた事業が多数展開されています。しかし、そうした事業の増加に伴って、本部と加盟者との間で様々な問題が発生しています。とりわけ、本部が加盟店の営業に関して指示や介入(以下「介入等」といいます。)を行う場面では、本部・加盟者間で深刻な対立が生じることも少なくありません。例えば、本部が、原材料の仕入先を指定したり、見切り販売について制限したりする場合です。

そこで本記事では、フランチャイズ契約における本部の加盟者に対する介入等について、法律上どのように考えられるかを説明していきます。

2 独占禁止法の規制

本部と加盟者とは、一見すると本店と支店のように見えますが、あくまでも独立した事業者同士であり、その契約関係は独占禁止法の適用対象です。そのため、加盟者の営業に対する本部の介入等については、独占禁止法上禁止される「不公正な取引方法」(優越的地位の濫用、抱き合わせ販売等、拘束条件付取引等)に該当し、違法とならないかが問題となります。

この点の検討にあたっては、公正取引委員会の策定・公表に係る「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」(最終改正:令和3年4月28日。以下「FCガイドライン」)が特に参考になります(※)。

※フランチャイズ・システムと独占禁止法の関係を検討するにあたっては、FCガイドラインのほかにも、我が国における流通・取引慣行上独占禁止法違反を生じ得る行為についての指針を示した「流通・取引慣行に関する独立禁止法上の指針」(公正取引委員会事務局 最終改正:平成29年6月16日)や、優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方を明確化する「優越的地位の濫用に関する独立禁止法上の考え方」(公正取引委員会 最終改正:平成29年6月16日)等についても検討する必要がありますが、本記事では説明を割愛いたします。

フランチャイズ契約締結後の本部と加盟者の取引について、FCガイドラインでは以下のとおり記載されています(FCガイドライン3)。

フランチャイズ契約においては,本部が加盟者に対し,商品,原材料,包装資材,使用設備,機械器具等の注文先や店舗の清掃,内外装工事等の依頼先について本部又は特定の第三者を指定したり,販売方法,営業時間,営業地域,販売価格などに関し各種の制限を課すことが多い。フランチャイズ契約におけるこれらの条項は,本部が加盟者に対して供与(開示)した営業の秘密を守り,また,第三者に対する統一したイメージを確保すること等を目的とするものと考えられ,このようなフランチャイズ・システムによる営業を的確に実施する限度にとどまるものであれば,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。しかしながら,フランチャイズ契約又は本部の行為が,フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施する限度を超え,加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合には,独占禁止法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用)に,また,加盟者を不当に拘束するものである場合には,一般指定の第10項(抱き合わせ販売等)又は第12項(拘束条件付取引)等に該当することがある。


このように加盟者の営業に対する本部の介入等は、直ちに違法になるわけではありません。他方で、本部による介入等がどの程度認められるかについては明確な判断基準がないため、ケースバイケースで判断していくしかありません。

本記事では、本部による介入等のうち、「取引先の制限」「仕入数量の強制」「見切り販売の制限」「営業時間の短縮に係る協議拒絶」「契約締結後の契約内容の変更」について、FCガイドラインの内容と食品・飲食業界の裁判例等を紹介します。

3 取引先の制限

FCガイドラインでは本部が仕入れ業者や内装工事業者などを指定する場合、次のような行為が独占禁止法上禁止される「優越的地位の濫用」に該当することがあるとされています。

取引先の制限本部が加盟者に対して,商品,原材料等の注文先や加盟者の店舗の清掃,内外装工事等の依頼先について,正当な理由がないのに,本部又は本部の指定する事業者とのみ取引させることにより,良質廉価で商品又は役務を提供する他の事業者と取引させないようにすること。


また、かかる取引先の制限は「優越的地位の濫用」以外にも、「抱き合わせ販売等」や「拘束条件付取引」として独占禁止法違反の問題を生じることがあります。FCガイドラインはこの点についても以下のような該当性判断基準を示しています。

抱き合わせ販売等・拘束条件付取引についてフランチャイズ契約に基づく営業のノウハウの供与に併せて,本部が,加盟者に対し,自己や自己の指定する事業者から商品,原材料等の供給を受けさせるようにすることが,一般指定の第10項(抱き合わせ販売等)に該当するかどうかについては,行為者の地位,行為の範囲,相手方の数・規模,拘束の程度等を総合勘案して判断する必要があり,このほか,かかる取引が一般指定の第12項(拘束条件付取引)に該当するかどうかについては,行為者の地位,拘束の相手方の事業者間の競争に及ぼす効果,指定先の事業者間の競争に及ぼす効果等を総合勘案して判断される。


食品・飲食業界の裁判例としては、たこ焼き店のフランチャイズ本部が加盟店の改装工事業者を指定した事案に関する裁判例があります。

千葉地判平成19年8月30日平16(ワ)1744号
事案の概要加盟店の改装等は、本部又は本部の指定した第三者に行わせることとされていたが、指定業者による店舗の改装工事に瑕疵があった。加盟店は、本部が適切な業者を指定する義務に違反した旨主張し、損害賠償を請求した。
判旨業者を指定する条項の存在、及び加盟者による改装業者を自ら決定したい旨の申し出を本部が諦めさせた事実等に照らせば、本部は、フランチャイズ契約上、店舗の改装業者として適切な業者を指定する義務を負っていた。 指定業者には、本件店舗の改装について、加盟者に対する契約内容説明の不存在や、本件店舗で発生したトラブルへの不適切な対応が認められる。にもかかわらず、本部は、指定業者の加盟者に対する直接説明の有無について何ら関知せず、また、上記トラブルへの対応について調査するなどして、指定業者の適切性に関する検証を行わなかった。 上記事情等からすれば、本部は上記義務に違反したといえ、加盟店の本部に対する賠償請求が認められる。


この裁判例は、取引先制限の適法性自体を判断したものではありません。取引先の業者を指定する条項があり、加盟者が他の業者を選ぼうとしても、それを認めなかったような場合には、本部に適切な業者を指定する義務があると認めた点に特徴があります。本部は、取引先の業者を指定する場合、こうした裁判例にも注意する必要があるといえるでしょう。

4 仕入数量の強制

フランチャイズ・システムを用いた事業活動においては、仕入単価を下げること等を目的として、加盟店で販売予定の商品又は原材料等を本部が一括して仕入れることがあります。本部はこれらを加盟者に販売する際、仕入価格に比して販売価格を高額に設定したり、加盟者に必要以上の量を仕入れさせたりして、加盟者の犠牲の下に利益を上げようとすることがあります。

実際に、公正取引委員会が実施した「コンビニエンス・ストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査」(令和2年9月)では、加盟者による8000件強の回答のうち、約5割が必要以上の仕入れを強制された経験があると回答しています。

こうした本部による仕入数量の強制について、FCガイドラインでは、本部が次のような行為により加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合、独占禁止法上禁止される「優越的地位の濫用」に該当することがあるとされています。

仕入数量の強制本部が加盟者に対して,加盟者の販売する商品又は使用する原材料について,返品が認められないにもかかわらず,実際の販売に必要な範囲を超えて,本部が仕入数量を指示すること又は加盟者の意思に反して加盟者になり代わって加盟者名で仕入発注することにより,当該数量を仕入れることを余儀なくさせること。

5 見切り販売の制限

フランチャイズ・システムを用いた事業活動では、ブランド価値を維持するために廃棄が近づいた商品の値引き販売(見切り販売)が制限されることもあります。

こうした本部による見切り販売の制限について、FCガイドラインでは本部が次のような行為により加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合、独占禁止法上禁止される「優越的地位の濫用」に該当することがあるとされています。

見切り販売の制限実際に売れた商品のみの仕入原価を売上原価と定義し,売上高から当該売上原価を控除することにより算定したものを売上総利益と定義した上で,当該売上総利益がロイヤルティの算定の基準となる場合において,本部が加盟者に対して,正当な理由がないのに,品質が急速に低下する商品等の見切り販売を制限し,売れ残りとして廃棄することを余儀なくさせること。


コンビニエンス・ストアのフランチャイズ契約において、特に見切り販売について本部の指導員が厳しく指導していたことが問題となった裁判例があります。

東京高判平成25年8月30日平21(ワ)5号
事案の概要コンビニエンス・ストアのフランチャイズ本部は、加盟店で廃棄された商品の原価相当額全額が加盟者の負担となる仕組みの下、自らが加盟店での販売を推奨する商品のうち品質が劣化しやすいデイリー商品の見切り販売を禁止し、これをやめないときは契約解除等の不利益取扱いを示唆するなどしていた。これを受けて、加盟者は見切り販売の取りやめを余儀なくさせられていた。 加盟者らは、このような本部の行為により損害を被ったとして、損害賠償を請求した(※)。
判旨本部による加盟者らに対する組織的な見切り販売の妨害行為は認められないものの、本件において本部が個々の加盟者らにした行為は、加盟者らによる価格決定権の行使を妨げ、見切り販売の取りやめを余儀なくさせる行為であり、優越的地位の濫用として違法行為に該当する(加盟者らの本部に対する損害賠償請求を一部認容)。

※ 訴訟に先立ち、公正取引委員会は、見切り販売の取りやめを余儀なくさせたことは優越的地位の濫用に該当するとして、本部に対して排除措置命令を出しています(平成21年6月22日公正取引委員会命令 平成21年(措)第8号)。

この裁判例は、本部による見切り販売の制限一般を問題としているわけではありません。あくまで本部による見切り販売に関する一部の指導が、加盟者に対して見切り販売の停止を事実上強制するものであるとして、その違法性を肯定したものです。

6 営業時間の短縮に係る協議拒絶

コンビニエンス・ストアや飲食店のフランチャイズ契約では、チェーンにおける店舗運営の統一化を図るため、加盟者に24時間営業を義務付けていることがあります。しかし、特に深夜帯においては、人件費や電気代等を上回るだけの売上げが見込めず、赤字となることも少なくないようです。それに加えて、深夜帯における従業員の確保も難しく、経営者やその家族で24時間営業を維持しなければならない等といった過酷な事態も生じています。

こうした本部による加盟者に対する営業時間の拘束について、FCガイドラインでは、本部が次のような行為により加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合、独占禁止法上禁止される「優越的地位の濫用」に該当することがあるとされています。

営業時間の短縮に係る協議拒絶本部が,加盟者に対し,契約期間中であっても両者で合意すれば契約時等に定めた営業時間の短縮が認められるとしているにもかかわらず,24時間営業等が損益の悪化を招いていることを理由として営業時間の短縮を希望する加盟者に対し,正当な理由なく協議を一方的に拒絶し,協議しないまま,従前の営業時間を受け入れさせること。


コンビニエンス・ストアのフランチャイズ契約において、本部による深夜営業継続の要請等が問題となった裁判例があります。

東京高判平成24年6月20日平24(ネ)722号
事案の概要コンビニエンス・ストアのフランチャイズ加盟者が、本部による深夜営業の強制は独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に該当し、同法19条に違反する旨主張し、同法24条に基づく差止請求として、深夜営業の強制禁止及び契約中の条項の削除を求めた。
判旨加盟者は、契約書の条項に基づき深夜営業を行う法的義務を負うため、本部による深夜営業継続の要請が、直ちに優越的地位の濫用に当たるとは言えない。また、深夜営業を行わない店舗も存在するが、極めて例外的であり(全体の1.2%)、このことから、深夜営業の不実施を広く認めてもフランチャイズのイメージを損なわないとは評価し得ない。加えて、深夜帯の売上額は一般的に減少するが、深夜営業を行う場合にはチャージ率が2%低減されるとともに、来客数の増加する早朝に合わせた商品の発注、検品、陳列等も行われることから、深夜営業の実施が加盟者に不利益を与えるだけのものではなく、深夜営業を行う必要性も認められる。さらに、深夜営業中の強盗被害については防止策が講じられ、近年減少傾向にある。 以上の事実に照らすと、本部による優越的地位の濫用は認められない。


この裁判例では深夜営業が契約書の条項に基づく法的義務であることを前提に、個別の事情に基づいて結論を出しています。深夜営業の要請一般について、適法性を認めたものではありません。本部としては、深夜営業の要請が不当なものとなっていないか、加盟店の実情や時代の変化等も踏まえて、ケースバイケースで判断していく必要があるといえるでしょう。

7 フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更(新規事業導入の要請)

フランチャイズ・システムを用いた事業活動では、本部が加盟者に対し当初の契約にはない新規事業の導入を依頼することもあります。

こうした本部による加盟者に対する契約内容の変更要請について、FCガイドラインでは本部が次のような行為により加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合、独占禁止法上禁止される「優越的地位の濫用」に該当することがあるとされています。

フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更当初のフランチャイズ契約に規定されていない新規事業の導入によって,加盟者が得られる利益の範囲を超える費用を負担することとなるにもかかわらず,本部が,新規事業を導入しなければ不利益な取扱いをすること等を示唆し,加盟者に対して新規事業の導入を余儀なくさせること。


コンビニエンス・ストアのフランチャイズ契約において、本部が後日、加盟者に対し加盟店における新規事業の開始を求めたことが問題となった裁判例があります。

東京高判平成24年6月20日平24(ネ)722号(上記6記載の裁判例と同)
事案の概要コンビニエンス・ストアのフランチャイズ加盟者が、本部による、フランチャイズ契約等(以下「本件契約等」)に明文規定のない収納代行サービス等(以下「本件業務等」)の実施強要は、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に該当し、同法19条に違反する旨主張し、同法24条に基づく差止めを求めた。
判旨確かに、本件契約等において、本件業務等に関する明文規定は存在しない。もっとも、本件契約等の締結時、本件業務等はフランチャイズのイメージの重要な構成要素をなしており、加盟者において、これを提供すべきサービスの1つであると十分に認識していた。また、本件契約等に基づき、加盟者は、同イメージを変更し、又はその信用を低下させない法的義務を負っていた。他方、本件業務等の手数料が不当に低廉であるとか、要求される労力等が加盟者の主張する程のものであるといった事情は認められない。加えて、本件業務等は、いずれも加盟者の加盟時に既に導入されていたものか、それと基本的に性質を同じくするものである。  以上の事実に照らせば、本件業務等の実施は、本件契約等に基づく加盟者の法的義務であり、本部がその実施を求めるのは、加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えるものではなく、「優越的地位の濫用」には当たらない。


この裁判例からすれば、本部が加盟者に対して新規事業の導入を要請する際にはフランチャイズ・システムにおける新規事業の重要性、加盟者に対する情報提供、加盟者の負担の程度等の事情を慎重に検討することが必要といえるでしょう。

8 独占禁止法に違反した場合の効果

独占禁止法に違反すると、公正取引委員会による排除措置命令(違反時には過料の賦課)や課徴金納付命令の対象となることがあります。

これに対して、その私法上の効果は直ちに無効になるわけではありません。ただし、違反行為の目的、その態様、違法性の強弱、その明確性の程度等に照らし、当該行為を有効として独禁法の規定する措置に委ねたのでは、その目的が充分に達せられない場合には公序良俗に違反するものとして民法90条により無効となるものと解されています(最判昭和52年6月20日(民集 31巻4号449頁)等)。

9 おわりに

以上のとおり、フランチャイズ契約において独占禁止法違反が問題となる例として、「取引先の制限」「仕入数量の強制」「見切り販売の制限」「営業時間の短縮に係る協議拒絶」「契約締結後の契約内容の変更」の概要と、関連する裁判例について紹介しました。

本部として加盟者の営業に対して介入等する場合には、裁判例やFCガイドラインその他の指針等も参考にしながら、各介入等が独占禁止法上の禁止行為や、その他の違法行為に該当しないかをケースバイケースで慎重に検討していく必要があるといえるでしょう。

[参考]
裁判所ウェブサイト「裁判例検索

飲食店に、もうひとりのマネージャーを。店舗オペレーション管理ツール 『V-Manage』

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