世界的に原材料が高騰。食肉は“ミートショック”状態
さまざまな食材の中でも、特に価格上昇幅が大きいのが肉類だ。独立行政法人農畜産業振興機構「牛肉の価格動向(直近15ヶ月)」によると、米国産牛タンの卸売価格は2021年に入って上昇を続け、8月には前年と比べて1.78倍まで値上がりした。
「特に牛タンは1頭から取れる割合が少ない上に、焼肉屋では上位3つに入る人気部位で消費者ニーズも高いのが価格上昇の要因です。一部では牛タン以外の商材にメニューを入れ替えたり、仕入れ自体ができずに店を閉めてしまったりするところも出てきています」(船井総合研究所 石本氏 以下同)
肉の希少性に加えて価格上昇のもうひとつの理由になっているのが、新型コロナウイルスの流行による輸入の停滞だ。飲食店での需要が増えるにつれ、需供のバランスが崩れて“ミートショック”につながっている。石本氏は2022年の春くらいまでは、価格の高止まりが続くと予測する。
スケールメリットが活かせない中小企業は苦戦
魚類の価格も上昇している。漁業では以前から、国内の生産者が販売までを一貫して行う6次産業化が進んできた。そのため価格は安定して推移していたが、コロナ禍で一時的に需要が減り、漁の回数と水揚げ量がともに減少した。それに伴って価格も上昇傾向にあるという。
大手の外食チェーンでは、安い時期に大量に仕入れておいた肉や魚を冷凍保存し、需要を見ながら提供して原価を安定できる。一方こうしたスケールメリットが活かせない中小企業にとっては、難しい状況が続く。
石本氏は、今後、再び供給が増加すれば、肉や魚の仕入れ価格が落ち着いてくる可能性はあっても、大幅に安くなることはないとみている。飲食店ではどのような対策が考えられるだろうか。
仕入れの見直しだけではもう限界、商品開発で客単価アップ
高止まりする食材価格を、仕入れ方法のみで調整するのは難しい。
「肉類であれば、アメリカ産をニュージーランドやオーストラリア、ヨーロッパ産など産地を切り替えて価格調整することは可能でしょう。相見積りを取ったり、近年出てきた仕入れのマッチングサービスなどを利用したりして、より安い業者から買うなどの工夫も考えられます。しかし、こうした努力には限界がありますから、特に中小企業はより抜本的な対策を練る必要があるでしょう」
まず取り組むべきは、付加価値をつけたメニューの開発だ。