コロナ禍で中古厨房機器の買取り・販売とも好調に
2020年は緊急事態宣言などの発令により、中古厨房機器販売の売り上げは一時的に下がる傾向にあった。しかし夏頃からはむしろ好調に戻ったという、同社の統括本部部長遠山貴史氏にコロナ下での厨房機器の売れ筋について伺った。
「2020年の2~3月は1回目の緊急事態宣言が出る前でしたが、その少し前からすでに閉店の買取り案件が増え始めていました。その後も中古品の販売実績は伸び続け、2回目の緊急事態宣言までの約半年間で販売額は2~2.5倍ほど増加しました。このように、昨年度は中古品に売り上げを支えられた感があります」
しかし2021年の5月からは明らかに閉店情報は少なくなり、同時に中古品の入荷も減ったという。
「これは、助成金や協力金が大きく関係していると考えられます。時短営業で思うように営業できなかったとしても、個人で経営している飲食店は助成金や協力金をもらって店を維持し、閉店を思い留まる人が増えたのではないでしょうか」
このような現状であれば、中古の厨房機器を販売するテンポスバスターズでは、売上が下がると考えるのが妥当だ。しかし、実際は売上全体が伸びてきているという。
「その要因として、助成金や協力金を店の維持ではなく、設備投資に回す人が増えたことが大きいです。協力金は課税対象のため、使わないともったいないと考える人が急増したのです。飲食業の多くは『お目当ての中古品が無いなら新品を買ってでも設備投資に力を入れよう』と考え始めています。今年度は中古品の入荷数が少ないため、結果として新品が売れています」
実はコロナ禍であってもテンポスバスターズには年間約20,000件以上の開業依頼があり、例年と比較しても新規開業は減っていない。飲食店が休業している期間も設備投資や新規出店など「攻める」需要があったのだ。
中古厨房機器購入よる固定費削減は有効か?
多店舗展開しているような企業規模になると、新品・中古品の購入よりもリースのほうが増えてくるそうだ。リースのメリットといえば、厨房機器の使用料を毎月定額の経費で落とせることにある。
契約期間の長さによって金額の違いはあるものの、出・退店時の固定資産や減価償却などを考える必要がないため、中規模以上の企業はリースを選ぶことが多いのだという。
「ただし個人店~小規模店では、リースしても購入より割高になってしまうことがあります。新品なり中古品を購入したほうが良いでしょう」
経費削減の観点から最初は中古品を探す店主が多いが、多店舗展開が進み財務状況がよくなると、在庫状況に左右される中古品ではなく新品を買うケースも増えてくるそうだ。
テンポスバスターズをはじめ、中古厨房機器店に来るお客の層は様々だという。例えば機器の使い方から内装や厨房のデザイン、物件に関する質問まで多様な相談にテンポスバスターズでは応対している。緊急事態宣言の解除後のスタートアップに力を入れたいタイミングで厨房機器のプロにアドバイスしてもらうことはコスト削減以上に魅力的だといえる。
飲食店が注目すべき厨房機器
厨房機器販売業界において、コロナの影響で特定の機械が売れるということはなかった。イートインからテイクアウトにシフトしただけで、厨房では料理を作り続けることに変わりはないからだ。
そのため、インパクトのある機器ではなく、どこの業態も使っているような汎用性が高い機器の注目度が高い。
新品 厨房機器ランキング(販売金額順)2020年5月~2021年8月実績
1位 | 冷凍ストッカー |
2位 | 冷蔵コールドテーブル |
3位 | 冷蔵ショーケース(小型) |
4位 | フライヤー |
5位 | 2槽シンク |
6位 | 空冷式製氷機25kg |
7位 | 作業台 |
8位 | 冷凍冷蔵コールドテーブル |
9位 | 1槽シンク |
10位 | 空冷式製氷機35kg |
新品では、製氷機やテーブル型の冷蔵庫、食材をストックする冷凍庫などが挙げられる。テイクアウトで人気が高まった唐揚げなどの揚げ物業態が増えたため、フライヤーの人気も上々だ。
効率化を図れる「スチームコンベクションオーブン」
中古品のランキングを見る限り、調理の効率化が重要視されるようになったといえる。その例として、10位のスチームコンベクションオーブンと呼ばれるオーブンが注目されている。これは業務用ヘルシオと言ったらイメージがつきやすいだろう。
中古厨房機器ランキング(販売金額順)2020年5月~2021年8月実績
1位 | 食器洗浄機 |
2位 | 冷蔵コールドテーブル |
3位 | 縦型冷凍冷蔵庫 |
4位 | 冷蔵ショーケース(小型) |
5位 | 縦型冷蔵庫 |
6位 | 冷蔵ショーケース(リーチイン) |
7位 | 空冷式製氷機55kg~100kg |
8位 | 縦型冷凍庫 |
9位 | 冷蔵ショーケース(その他) |
10位 | スチームコンベクションオーブン |
焼く、蒸すなどの調理が1台で可能になることに加え、調理時間が半分以下になったり、焼きむらなく均一に仕上げられるなど、調理の効率化が図れるという飲食店の声も多い。作業時間を大幅に短縮したい飲食店は出物に要注目だ。
食材ロスを減らせる「真空保存機」
ランキング外だが最近は、真空保存機も注目されている。新型コロナウイルスの影響で来客数が読みきれず、予想を下回った際は食材が無駄になってしまうため、真空保存することで廃棄のロスを減らすことができる。
また、大量に安く仕込んでおいて少しずつお客に出す飲食店も増えている。その時にも真空保存機が活躍する。これらの厨房機器は4、5年くらい前から取り入れてもらおうとしており、ここ2、3年でようやく販売数が伸びてきているそうだ。
テイクアウト業態におすすめの中古厨房機器
テイクアウト併設が可能な業態には、物販用の小型ショーケースもおすすめだ。
ショーケースとは、コンビニのレジ付近にエナジードリンクなどが置いてある棚のようなものである。持ち帰り用の弁当などを入れるだけでなく物販用でも使用できる。
例えば農家と契約している居酒屋などは、料理の提供ができない代わりに、ショーケースを使って魚や肉、野菜などの食材を店内で売るケースもある。また、店で使っているオリジナル調味料を販売するなど、ショーケースは様々な応用が可能だ。
今後の見通しと、新たな備え
今後は、よりワクチン接種の広まりや治療薬の開発、ワクチンパスポートなど新型コロナへの安全対応策が強化され、規制緩和がされていくにつれて外食をする人が増えてくるだろう。
また、新しく飲食店を始めたり、店舗経営からゴーストキッチンへ業態転換をしたりという動きも出てくるだろう。コロナ禍の飲食業界の見通しは未だつかないが、消費者のニーズにいち早くするために、抜かりなく厨房機器のリサーチを進め、設備投資の仕方を考えておきたい。