客足が戻る店舗と、そうでない店舗の決定的な差とは
緊急事態宣言の影響が色濃く出ていた4~6月に比べると、ここ1ヶ月ほどで客足が戻り始めている飲食店が出てきたようだ。ただ全国どのエリアでも共通していることは、顧客の戻りがよい店舗と、そうでない店舗に分かれているということ。有本氏は次のように語る。
「業態でいうと、焼き肉店は比較的客足の戻りがいいです。換気されているイメージに加え、自宅ではなかなかできない体験ができるという点もありますね。また業態を問わず、もともと常連客が多かったお店も強いです」
たとえばある消費者が、週2~3回行っていた外食を週1回に減らしたとする。その1回をどこで食べるか。まずは馴染みのお店や、馴染みのスタッフがいるお店に行こうと考えるだろう。有本氏によれば、こうした差が客足の戻りに大きく影響しているという。
また店舗運営においてQSC(Quality:品質・Service:サービス・Cleanliness:清潔)が良い店のほうが、客足の戻りが早いとも指摘した。同一企業のチェーン店においても、QSCの差でお客の戻りに違いがあるという。
「QSCにはもちろん、コロナ対策も含まれます。入り口にアルコール消毒液が置いてあるだけで他は何もしていないとか、清潔感が感じられない店舗は敬遠されています。必要なのは、目に見える対策です。従業員にマスクをつけさせたり、大声での掛け声を控えたり、直接手を触れあわないような接客をすること、さらにそのような対策をSNSなどで事前にきちんと発信することです。ある程度大きな会社でプレスリリースを出しているところは、お客様に選ばれやすく、客足の戻りが早い傾向にあります」
基本的な清潔さに加え、コロナ対策を徹底しているかどうか、それを消費者にしっかりアピールできているかどうかが、回復の明暗を分けている。
QSC向上に必要なのは、「従業員教育」一択だ
店舗のQSCを良くするためには、何が必要なのか。有本均氏は従業員教育の重要性を強調する。
「今からでも決して遅くないので、教育制度を充実させることがQSC向上につながります。新型コロナでお客様が減った今だからこそ、チャンスと捉えてOJTに時間を割く企業も出てきています」
お客様の少ないアイドルタイムを利用すれば、時間を有効に使って研修できる。集合研修は難しいかもしれないが、昨今はZoomなどのITツールを使ったオンライン研修という手もある。
また外食各社が頭を悩ませてきた人手不足も、6月以降は解消されつつあるという。コロナ禍で閉店・休業する店舗が増え、もともと働いていた人たちが新たな働き口を探しているのだ。ただ、「長い目で見れば再び人手不足になる可能性は高い」と有本氏。
「コロナの影響は数年間続くでしょう。さらにそこから5年後、10年後を見据えたとき、間違いなく日本の人材は不足します。よい人材を採用したい場合は、今がんばっている人が辞めないような仕組みを作っておく必要があるのです」