客足が戻る店とそうでない店の決定的な差とは~withコロナ時代の人材育成術

飲食・宿泊2020.08.19

客足が戻る店とそうでない店の決定的な差とは~withコロナ時代の人材育成術

2020.08.19

経営理念を伝えるコミュニケーションで共感させる

人材を定着させるには、従業員教育を通して自社の経営理念を理解・共感してもらうことが必要だ。しかし応募者を面接しただけで自社にマッチするか判断するのは難しく、実際に働いてもらうまで自社に合うか分からない。そのため面接だけで判断しようとせず、入社後の教育制度で、理念を理解してもらうことが重要になる。

「まずは経営者が、現場任せにせず、しっかりコミュニケーションをとっていくことです。具体的にはとにかく話をすること。もっといえば教育を『仕組み化』し、仕組みの中に理念や、こんな人と一緒に働きたいという思いを散りばめるのです」

どのような仕組みを作れば、経営理念が伝わるのか。有本氏は外食企業へのコンサルティングの際、「評価制度の行動評価に経営理念を入れ込む」ことを実行してもらっているという。数字では見えない過程を評価する部分、つまり行動評価の部分に、経営理念や行動指針に沿った行動をしているかを入れ込むのだ。

「例えば『お客様を喜ばせるためにQSCを向上したか』などですね。従業員自らが経営理念や行動指針に基づいた行動をするためには、きちんと評価される仕組みを作ることが重要です。そうすれば、人は変わります。やってもやらなくても評価されないなら、人はやりません。でも、誰だって同じ方向を向いて頑張る気持ちは持っています。道を作ってあげれば、必ず人は成長するのです」

さらに教育制度で有効なものは、「『達成すべき具体的な基準』を作ること」だという。基準を示さなければ、人は動かないからだ。

「経営者や評価者とのコミュニケーションを通してその基準を浸透させることが大事ですね。従業員は店舗ごとに働く場所も違えば、接しているお客様や問題も違うため、どうしても個人の優先順位や考え方によるところが大きくなります。まずは全店で運用するオペレーションマニュアルを作成してみましょう。社内で運用する分には、資料の見た目が多少整っていなくても問題ありません」

サービス業に必要なのは、義務教育型の研修制度

こうした教育制度で人材を定着させるためには、特定の人だけに成長機会を与える「選抜型教育」ではなく、全員の底上げを図る「義務教育」が大切だという。

「飲食サービス業の従業員は、お客様に接して利益を上げるという点で、全員が同じゴールを目指しています。ゴールが同じならば、義務教育化したほうがいいのです。人手不足の時代だからこそ、メンバー全員の力を底上げする義務教育が必要です」

従業員に研修を受けさせる場合、人件費や会議室などの費用が発生する。コロナ禍で売上が減少した企業が低コストで教育をするにはどうすればよいか。この場合、Zoomなどのオンライン会議ツールを活用するのがいいという。オンラインだと学習効果が下がると思うかもしれないが、画面上で互いの顔が映されるので、ディスカッションもしやすい。一方的に話すのではなく、発表させたりするのも有効だ。

有本氏は最後に、この時期だからこそ重要な人財育成について次のようにまとめた。

「若い世代に限らず、すべての人は成長意欲を秘めています。こちらが良い研修をすれば、話は聞いてもらえるのです。コロナ禍で大変な時期ですが、今こそ利益のベースとなる人材教育に力を入れ、長期的な発展を目指しましょう」

厳しい状況が続くが、企業の成長は「人」なくしてありえない。教育を通して、コロナ禍を乗り切る方策を考えたい。

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株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパン 代表取締役社長 有本 均

著書『全員を戦力にする人財育成術』株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパン 代表取締役社長 有本均日本マクドナルド『ハンバーガー大学』学長、ファーストリテイリング『ユニクロ大学』部長、バーガーキング・ジャパン代表取締役など歴任。2012年、人材育成のノウハウを活かし株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパン設立。経営者やアルバイトの役割に応じた研修を実施し、現場や人事制度と連動した「最高の学び」を提供する。著書に『全員を戦力にする人財育成術』など。https://g-aca.com/

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