「たとえば飲食店によっては、お客が事前にチャージしておけば少しお得に飲食できる、独自のプリペイドカードを作っていますね。これもひとつのキャッシュレス決済です。これが、チャージも銀行口座から直接できる店舗アプリになれば、お客はより便利になります」
アプリで決済した情報は蓄積されていく。店舗はそのデータをもとに、お客一人ひとりに最適なメニューの情報や割引キャンペーンなどを案内できるようになるという。
「これまで『来店者全員○%オフ』とばらまいていたキャンペーンを、より戦略的にすることができます。『先月の新規客の中で今月まだ来ていない20代男性向け』などターゲットを絞り込み、確実に情報を届けることが可能です。キャッシュレスは単なる決済手段ではなく、店舗の売上促進やお客の特典に展開していくでしょう」
どんな情報を受け取りたいかはお客自身が選択できる。ユーザーの匿名性を保ったまま双方にとってストーリー性のあるマーケティングが実現するのだ。支払手段のデジタル化によって、これらはすでにはじまりつつある。
キャッシュレスの後は、支払い行為もレスになる
さらに、生体認証の技術が発達すれば、レジでの支払い行為自体がない“ペイレス”になるという。
「10年後には、レジで現金を扱うことはほぼなくなっているのではないでしょうか。お客が食事をして、何もしなくても店を出ると同時に銀行口座から引き落とされるのが当たりまえ、という世界に向かっていくと思います。10年ほど前にスマートフォンがこれほど普及する世界を予想していたのは一部の限られた人たちですが、今は、ない生活は考えられません。イノベーションとはそういうもので、そのうち『あったね、レジって。食べ終わったら伝票渡して』と懐かしむ感覚になるでしょう」
キャッシュレス社会は思ったよりも近くまできているようだ。技術も日々進歩し、導入のハードルは下がり、さまざまなサービスも登場している。店舗のユーザー層にあった決済手段で、まずは第一歩を踏みだしてみてはいかがだろう。
取材協力:一般社団法人キャッシュレス推進協議会 理事、一般社団法人Fintech協会 代表理事会長
株式会社インフキュリオン・グループ 代表取締役社長 丸山 弘毅 氏