「現時点でも、ビッグデータからそのひとの嗜好性をAIが特定することは、ある程度可能です。今後は街頭や駅、店内などに設置されている防犯カメラなどの映像データも解析して、時間帯の人の変化を把握し、エリアの特徴がより正確に分かるようになるでしょう」
経営者が現地で行っているようなリサーチもAIが行い、出店を考えているエリアのユーザー傾向を導き出すことになる。あるいは、「こんな傾向の客層を想定した店ならこのエリアに出店するとよい」というレコメンドもありうる。
集客-最適なタイミングでの集客活動は、すでに実用段階
現在、集客活動といえば、ほぼネット上のグルメサイト頼みという飲食店は少なくないだろう。AIとビッグデータを使えば、付近で飲食店を探している人や、探してないが飲食店を利用してもいい人のスマホなどに、最適なタイミングで、効果的にポップアップ広告を出せるようになる。
「スマートフォンなど端末の位置情報を使っていかに実店舗に送客するかといった取り組みは、かなり実用化されています。通販サイトを閲覧していたら関連商品をおすすめされた経験はありませんか? 同じことを実空間でやるだけなので、おそらくさほど難しいことではありません」
接客-人間みたいなロボット店員がメニューを勧める未来
前述の通り、すでにすかいらーくは顧客一人ひとりにあわせたおすすめメニューを表示するデジタルメニューを導入した。ビッグデータに基づいて、満足度を高めリピート率を最大化する提案を、AIが自動で行う。
「券売機やメニューブックに接客機能をつけて、顔認識機能で“前も来てくれましたね”とAIが判断し、コミュニケーションすることもできます。スタッフが常連客に“いつものアレにしますか?”とやっているように行うのです。
その際、今のような合成音声ではなく、もっと本物の人間に近い声で接客するようになるでしょう。しかも相手の年齢や性別、顔色、声の調子などを即座に判断してリアルタイムに“空気を読んだ”会話をすることも可能になるはずです。ちょっとした冗談のやりとりや、本当にロボット? と思うような接客が生まれるのではないでしょうか」
また、接客面はAIだけでなく、AR(拡張現実:現実世界に仮想世界を加えて、相互作用させる技術)との融合も進むと予想する。
「たとえばプロジェクションマッピングがもっと汎用化されたような技術で、誕生日など記念日で来店した顧客向けには、店内の景色が変わったり、会話の内容にあわせて壁も変わったりするなど、店舗の表現の幅は広がると思います」
バックヤードでも活用できる、AI×ビッグデータ
AIが得意とするのはマーケティングにとどまらない。『売上予測』『来店予測』は、コンビニや小売店ではすでに活用されている技術だ。たとえば、近所の小学校で運動会が開催される、といった情報もAIはビッグデータから抽出する。店長が気付かなくても、夕方はファミリー層が増えそう、と予測して教えることは今でも可能だという。