価格上昇の原因は世界規模の変化
以下のグラフは、農林水産省が公表している生鮮品の価格推移を示したものだ。2010年の価格を100とした場合、2016年は農産物全体で15%の値上がりしている。特に大きいのは畜産物で32%の上昇だ。
生鮮品を除いた食料品の小売価格も、近年は上昇傾向にある。総務省がとりまとめている消費者物価指数(CPI)の食料価格の推移が以下のグラフだ。2017年は、2010年と比べると44%上昇している。
食材の価格高騰が続いている理由はどこにあるのか。飲食店経営のコンサルティングを行う株式会社船井総合研究所の二杉明宏氏によると、報道で目にすることの多い天候不順による不作は、話題としては印象的だが、年間でおさまるため原因としては一過性だという。現在の長期的な高騰の原因は、2つの変化にあるそうだ。
「ひとつ目は為替レートの変化です。日本は野菜も畜産品も多くを輸入に頼っています。円安で1ドル90円が110円になれば、単純にコストは2割増えることになります」
消費者物価指数の安定している2010~13年の外国為替相場は、平均で1ドル87.7円だった。この頃と比べると、円安が進行している。
「もうひとつは、世界規模の需給の変化です。食料は、基本的に人口の多い国、購買力のある国に集まります。現在の日本は人口が減少しており、GDP(国内総生産)成長率も勢いがありません。一方で、中国などのアジア諸国は大きな成長率を見せ、これからはアジア以外の国も台頭してきます」
これに伴い、日本の購買力は他国と比べて相対的に下がってきているという。
「原材料高騰は、今後もずっと続くと思った方がいいでしょう。特に魚介類や牛肉といった贅沢品といわれる食材ほど、単価があがっていく傾向にあります」
では、飲食店は具体的にどのような対策をとれば、長引く価格高騰を乗り越えることができるのだろうか。二杉氏によると、安易な値上げをしないためには「仕入れ」と「メニュー構成」に見直しのポイントがあるそうだ。飲食店の仕入れは、経営している店舗数で重視するポイントが変わってくる。今回は1~3店舗ほどの小規模、数十店舗クラスの中規模にわけて解説したい。
小規模の飲食店の場合…「買いに出る」より、やっぱり「持ってきてもらう」。卸を効率的に探す
まずは個店など小規模の店舗がすべきことだ。
「小規模経営の店舗は、一度に仕入れる量が限られます。このため取引額が少なくなり、卸への配送費を多く支払ったり、配送してもらえなかったりする場合があります。付き合える仕入れ先が少なく、1社に依存することもあるため、原価高騰の際は言い値での取引になりがちになります」
価格高騰を抑えるため、オーナー自らが食材を買い付けに行くこともある。その場合はどうだろうか。
「確かに卸の倉庫まで車で取りにいったり、業務用の量販店、酒販店、卸売市場を利用したりすることも有効です。しかし、このような仕入れ方法は、時間や人手の足りないお店では、大きな負担になってしまいます。特に個店ではオーナー自身が仕込みや接客、経理などを担うため、時間がなかなか作れません」
かといって、個人向けECサイトで食材を注文しようにも、買掛ができないためにキャッシュフローで不利になり、安定した仕入れができるかは不確かだ。どのような対策が有効だろうか。
「普段から複数の仕入れ先とつながり、取引関係を持っておくことが重要になります。しかし、中規模や大規模の外食企業とは違って、小規模なお店は、卸企業側からの積極的なアプローチはあまり望めません。自分から取引可能な仕入先を探すことが大事なポイントになるでしょう」
ただ、取引先を探す方法として、電話帳などで探して1社ずつ自店舗に配送してもらえるか交渉していく、というのはあまりに大変だ。
「企業間の取引に特化したインターネットの食材検索サービスを利用するのも有効です。そこで販売事業者を効率よく検索し、商談できれば、探す苦労はかなり軽減されるでしょう」