そんなときに重要になるのが、お金の流れを明らかにする月次決算書を作成すること。月次決算書とは毎月の業績や経営状況、財務状況などを読み取るためのものです。月次決算書を通じて数字を読み解く感覚を磨くのは、職人から経営者へと成長する上で非常に重要なことになります。
ここでひとつ注意を申します。飲食店経営者の中には、決算書や試算表の作成を税理士などに一任し、経営上のアドバイスも税理士に求めている人も多いようです。しかし、税理士や会計士の税金対策のアドバイスは、飲食店の多店舗展開とはまったく別の話。場合によっては、税金対策で利益を減らしましょうと真逆の提案をされることもしばしばあります。このため、相談相手に何でも丸投げにせず、複数の相談相手を持ったり、相談相手の得意分野と相談内容を照らし合わせたりすることが必要です。
銀行の「格付け」を知る
5店舗を超えるお店の展開を目指す場合、資金調達力を強化しなくてはなりません。銀行の融資を利用することになりますが、当然のことながら審査は厳しく、経営状況が良くなければ有利な条件で融資を受けることもできません。
では、銀行はどのような基準で皆さんの融資の判断をするのでしょうか。その目安となるのが「格付け」と呼ばれる12のランクです。
銀行の格付け
格付 | リスクの程度 | 定義 | |
---|---|---|---|
1 | 実質リスクなし | ・財務内容が極めて良好 ・借入金返済の確実性が非常に高い ・安定している (例)日本を代表するような超優良上場企業、ごく一部の大企業・中堅企業 | |
2 | リスク僅少 | ・財務内容が良好 ・借入金の返済力に十分な余裕がある (例)優良な上場企業、一部の大企業・中堅企業 | |
3 | リスク小 | ・財務内容、借入金の返済力ともに平均水準以上 ・将来の安定性に不安がない (例)平均水準を上回る上場企業・大企業・中堅企業・優良な中小企業 | |
4 | 平均水準に比べて良好 | ・財務内容が平均水準を若干上回る ・当面の借入金の返済力に問題がない ・将来の安定性にまず不安がない (例)一般的な上場企業・大企業・中堅企業、ある程度優良な中小企業・個人事業主 | |
5 | 平均水準 | ・財務内容が平均水準 ・当面の借入金返済力に問題はない ・将来の安定性にわずかながら不安がある (例)平均水準を下回る上場企業・大企業、当面問題がない中堅企業・中小企業・個人事業主 | |
6 | 許容可能レベル | ・当面の借入金返済力に問題はない ・外部環境による影響を受けやすく、将来、借入金返済力が低下することが予想される (例)やや問題を抱える上場企業・大企業、平均水準を若干下回る中堅企業・中小企業・個人事業主 | |
要注意先 | ・金利減免、棚上げ(利息のみの支払)を行っているなど、貸出条件に問題がある ・元本返済もしくは利息支払いが事実上延滞しているなどの問題がある ・業況が低調または不安定 ・財務内容に問題がある など、今後の管理に注意を要する | ||
7 | 要注意先 | ・赤字、繰越欠損、債務超過など、財務内容が脆弱、あるいは業況が不安定で、経営上の問題がある | |
8 | 要注意先 | ・貸出条件、履行状況に問題がある ・実質債務超過の程度が概ね1割を越えるなど深刻な状況にあり、財務の改善に長期間を要する | |
9 | 要管理先 | ・要注意先に該当する会社のうち、貸出条件を緩和されている、または3ヶ月以上延滞になっている会社 | |
10 | 破綻懸念先 | ・現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる | |
11 | 実質破綻先 | ・法的、形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建に見通しがない等、実質的に経営破綻に陥っている | |
12 | 破綻先 | ・破産、精算、会社整理、会社更生、民事再生、手形交換所の取引停止処分などにより、法的、形式的な経営破綻の事実が発生している |
銀行の格付けは原則として非公開です。ここでご紹介しているのは私が独自に作成したものですが、基本的には実際の銀行のものと大きな違いはないはずです。ここでは、1に近いほど融資の条件も有利になります。6より上であればだいたいにおいて融資を受けることは可能で、逆に8より下であればまず無理でしょう。
このことから、経営者としては格付けを1つでも上げていくことが重要になるわけです。そして、そのためにも常にお金の流れを把握しておくことが必要です。もちろん、入金は「多く・早く」、出金は「少なく・遅く」が原則ですから、資金を借りる場合でも限度額はできるだけ大きく、また、金利はできるだけ低く、返済期間はできるだけ長い方がいいことになります。銀行から融資を受けるには、まずこうした「格付け」の存在を知り、自分の会社の状況(格付け)を意識しながら経営に取り組むことが必要です。
最後に、私はこれまで多くの飲食店経営のお手伝いをしてきましたが、夢を叶える会社は、例外なく財務マネジメントもしっかりしています。飲食業界でご自身の夢を叶えるために、勘だけに頼らない、しっかりしたマネジメント術を身につけていただきたいと願っています。