新紙幣導入の基礎知識
2024年7月3日、20年ぶりに紙幣が新しく生まれ変わった。
この新紙幣の導入は、タンス預金として手元にあった旧紙幣をあぶり出し、それが銀行へ持ち込まれると予想されるため、市場の現金流通量が増加するという見立てもあって話題を呼んでいる。
なお、新紙幣導入の最大の目的について、財務省は「偽造されたお金が出回らないようにすること」とし、紙幣の信頼性を向上することだと発表した。
このような背景から、新紙幣の導入は、単なるデザインの変更以上の意味を持っていると言える。
ここでは、新紙幣の導入の背景や特徴、メリットについて説明する。
新紙幣とは？--特徴と発行背景の理解
日本では約20年ぶりとなる新紙幣の導入が始まった。
前回の新紙幣導入は2004年11月に実施したが、今回の新紙幣導入は、さらに進化したデザインと技術を備えている。
新紙幣の肖像には、日本の近代化に大きく貢献した三人の偉人が選ばれた。一万円札には「渋沢栄一」、五千円札には「津田梅子」、千円札には「北里柴三郎」が描かれた。これらの人物は、日本の経済発展、女性教育、医療科学の分野で大きな足跡を残しており、それぞれの業績が称えられている。
また、新紙幣の裏面デザインには、日本を代表する歴史と伝統、美しい自然、そして豊かな文化が反映されている。例えば、一万円札の裏面には東京駅が、五千円札の裏面には藤の花が、千円札の裏面には富士山と桜が描かれている。これらのデザインは、日本の美しさと誇りを象徴しているといえる。
さらに、デザインの変更だけが目的ではなく、新紙幣の導入には次の2つの主要な目的がある
1.進化する偽造技術への対抗
偽造技術は日々進化しており、それに対抗するために、より偽造されにくい紙幣を作る必要がある。新紙幣には最先端の偽造防止技術が取り入れられた。
2.ユニバーサルデザインの採用
年齢や国籍、障害の有無にかかわらず、誰もが使いやすい紙幣を提供することが重要。新紙幣は、この点を重視し、様々な工夫がされている。
新紙幣の識別ポイントとセキュリティ強化点
新紙幣には、多くの識別ポイントとセキュリティ強化が施されている。例えば、角度を変えると肖像が動く「3Dホログラム」や高精細なすかし（透かし）だ。これらの技術により、偽造が極めて困難になる。
さらに、視覚障害者も識別しやすいように識別マークの配置や形状の変更、額面数字の大型化や年齢国籍関係なくなじみのある「アラビア数字」による料金表示も導入された。
これらの特徴と利点により、新紙幣はより安全で、使いやすいデザインとなったのだ。
参考：2024年7月3日、新しいお札が発行！ | 政府広報オンライン
飲食店における新紙幣の影響分析
新紙幣は、飲食店の運営にも直接的な影響を及ぼすと考えられる。
ここでは、新紙幣が飲食店にもたらす影響と、補助制度の利用について掘り下げていく。
新紙幣導入の飲食店への直接的な影響
新紙幣の導入は、レジスターや発券機などの現金取扱い機器に対するアップデートを必要とし、これには費用と時間がかかることが予想される。
自治体によっては、新紙幣対応のための補助制度が利用できる場合もある。
例えば、東京都葛飾区では30万円を上限に改修・更新費用の半額を補助する制度や、愛知県大口町では50万円を上限に補助が行われている。
新紙幣の導入は、旧紙幣との混在期間があるため、すぐに全ての機器を更新する必要はない。
しかし、早めの対応が推奨されている。
また、この変化は同時に、飲食店がキャッシュレス決済のように、新しい支払い方法を導入する絶好の機会ともいえるだろう。
キャッシュレス決済の普及は、新紙幣の影響を受けず、現金の取り扱いを減らせる。それにより、レジ締め作業の効率化や銀行への入金回数の削減にもつながるだろう。
参考：
自動販売機新紙幣更新対応補助金｜葛飾区公式サイト
大口町中小企業支援事業補助金＜新紙幣対応支援事業＞/大口町
飲食店の新紙幣対応戦略
新紙幣の流通は、飲食店経営にとっても大きな転換点となるだろう。
新紙幣の導入により、偽札の排除と経済的損失の防止が期待されているが、これには適切な対応戦略が不可欠となる。
そこでここからは、偽札被害ゼロを目指すための対策と従業員教育について、解説する。
現金取り扱いと偽札対策の強化
新紙幣の識別は、偽札を排除し、経済的損失を防ぐために不可欠である。
そのため、飲食店が実施すべき対策と従業員教育についての詳細を説明する。
現金管理のポイントと偽札識別の方法
飲食店では、現金管理と偽札識別が重要な業務といえる。
現金管理のポイントは、下記の3点である。
・現金の出納を明確にする
・現金を安全な場所に保管する
・定期的に現金の量を調べる
また、新紙幣の識別ポイントを理解し、以下の方法で偽札を見分けることも重要である。
・すき入れ：光に透かすと、肖像などの図柄が見える
・すき入れバーパターン：光に透かすと、すき入れられた3本の縦棒が見える
・パールインキ：お札を傾けるとピンク色を帯びたパール光沢のある半透明な模様が浮かぶ
・深凹版印刷：インキが高く盛り上がっており、手で触るとザラザラしている
・潜像模様：傾けると見る角度によって数字が見え隠れする
・ホログラム：傾けると見る角度によって画像の色や模様が変化する
これらの識別ポイントの情報は財務省の公式ガイドラインに基づいており、信頼性が高い。飲食店はこの一次情報を参考にして、偽札対策を徹底することが求められる。
引用：お金の偽造防止技術にはどのようなものがあるのですか : 財務省
レジシステムの更新と従業員への教育
新紙幣導入に伴い、飲食店においてとくに重要なのが、レジシステムの更新と従業員教育である。
対応が遅れると、会計エラーや偽札を見逃すなどのリスクが生じてしまう。
また、従業員へは、新紙幣の識別ポイントや、偽札疑いの時の対応方法、新レジシステムの使い方などを事前に周知しておくことが必要である。
そのため、従業員には、講習会や模擬札を使用しての偽札識別練習、新レジシステムの操作練習をしておくことを推奨する。
レジシステム更新と従業員教育を徹底することで、お客様に安心・安全なサービスを提供できるだろう。
新札対応のためのプロモーションと顧客対応
円滑な新紙幣への移行を実現するために、プロモーション活動や、顧客への効果的な周知が重要となる。
また、新紙幣に関連するあらゆる状況に迅速に対応することが、スムーズな移行を実現する鍵となるだろう。
ここでは、効果的な対応策について詳しく説明する。
新紙幣対応のアピールと記念キャンペーン
新紙幣の導入を記念して、特別なプロモーションやキャンペーンを実施することで、顧客の関心を引き、来店を促すことができるだろう。
例えば、新紙幣で支払いをすると特典が受けられるキャンペーンや、新紙幣にちなんだ限定メニューの提供などが考えられる。
お客様への周知方法と不測の事態への対応
新紙幣の導入については、顧客への周知が重要である。店舗内の目立つ場所に告知ポスターやリーフレットを設置し、スタッフが積極的に情報を提供することで、スムーズな移行を促進する。
また、新紙幣を受け入れる準備が整っていない場合や、偽札が疑われる場合などの不測の事態に備え、事前に対応策を準備しておくことも重要と言える。
まとめ
この記事では、新紙幣導入の基礎知識から、飲食店への影響、プロモーション施策まで、必要な情報を詳細に解説した。こういった新たな取り組み、対応に際しては本部から店舗への適切な指示や報連相が重要となってくる。このガイドが偽札対策とレジシステム更新、従業員教育の一助となれば幸いだ。
