秋田発。半世紀以上も変らない製法を守り続けるアンドーナツ
山口製菓店のアンドーナツは、地元では「油パン」と親しまれている。呼び名のとおり、その表面はしっとりと油をまとっていて、薄い生地の中にぎっしり餡が詰まっている。ハイカロリーな見た目に反してくどさがなく、あっさり食べられるのが特徴だ。代表の山口嘉則氏によると、工場設立は1963年。アンドーナツ作りはそれ以前に遡るという。
「創業者の山口常松は若い頃に手作りのアイスキャンディーなどを売る駄菓子屋のような小売を営んでいて、菓子作りの修行で全国各地を巡ったそうです。その時に東京にあった行列ができるアンドーナツの繁盛店で技術を学び、故郷で売るようになったのが弊社のはじまりです。アンドーナツの評判が良かったため、工場を建てて小売から製造・卸業に業種替えしていきました」
秋田県大館市に建つ工場は、周囲に田畑が広がり、夏には多くの蛍が飛び交う自然に恵まれた環境にある。豊かな地下水を使って練り上げる自家製餡を使ったアンドーナツは、創業から製法が変らない。最大の特徴である生地の薄さは、手で包むことで生まれる。
「機械で包むと、一般的に餡より生地の量が多くなります。破れて中の餡が出ないように生地を厚くする必要があるためなのですが、すると、揚げる際に油を吸いやすくなります。弊社は逆に、餡の量が生地の倍ほどあります。そのため油がさほど染みこまず、食後にくどさが残りません。それが他のアンドーナツとの大きな違いです」