健康志向で伸びる低糖度ジャム類
『アヲハタ まるごと果実』シリーズは、“果物そのままの美味しさを、そのまま味わう”というコンセプトから、2012年に誕生した。現在はいちごや白桃、ブルーベリーなど7種類が存在する。低糖度と呼ばれるジャムは、糖度が40度以上55度未満の商品を指すが、『まるごと果実』は砂糖不使用で果実の甘みのみで糖度30~35度の甘さを実現している。
※日本農林規格(JAS)の規定により、糖度40度未満の『まるごと果実』はジャムではなくスプレッドとなる。
「一般的に“ジャムはとても甘いもの”という認識が広がっていますが、甘過ぎる商品ばかりではありません。消費者の健康志向でジャム業界全体に低糖度化が進み、縮小する市場の中でも低糖度商品だけが売れ行きを伸ばしています。現在の主流は低糖度の商品なのです」
アヲハタはこの需要にいち早く気づき、1970年に世界で初めて保存料を使わない低糖度ジャム『アヲハタ55』を発売。現在も続くロングセラー商品で、ジャム市場で売上1位のシェアを獲得している。
「主力商品の『アヲハタ55』ばかりに頼らず、新たな切り口として模索していました。そこで砂糖不使用に行き着き、1997年に商品を発売していきました」
以来、砂糖不使用の商品はリニューアルを繰り返し、2007年に『アヲハタ まるごと果実』の前身となる『アヲハタ Fruityfull(フルーティフル)』を世に送り出した。
「ジャム類は、いかにフルーツの美味しさを伝えられるかが売れ行きのポイントとなります。そこで『Fruityfull』ではフルーツの果実感、風味、フレッシュ感を追求し、生の果実に近い状態にしたのです。味には絶対の自信がありました」
しかし、『アヲハタ Fruityfull』は美味しさに高評価を得ていたが、売れ行きは思うように伸びなかったそうだ。
「最大の問題は、商品の分かりづらさにありました。この商品はオシャレ感を出す戦略でしたので、砂糖不使用などの説明的な表現をあえて省いていたのです。これが逆効果で、商品を知らない人は手を伸ばしづらかったのです。ラインナップも増やしていったのですが、このまま続けることが難しくなり、分かりやすさを打ち出す方向へと舵を切りました」