-●どのようなシーン、業態をターゲットにお考えですか?
日本酒を飲みたいけどお医者様に止められているという方や、車の運転があるので飲めないという方はおすすめです。小売店様、業務用酒販店様などはもちろんですが、今後は病院や介護施設、冠婚葬祭の式場、神社などの販路も開拓したいと考えています。都会ではそれほどではありませんが、地方はどうしても皆さん車での移動が多くなりますので、様々なシーンでご活用いただけると思います。
-●私はお酒が飲めないのですが、外食したときに「ウーロン茶」ではなく、この『零の雫』をオシャレに出していただけると嬉しくなると思います。
そうですね。お酒を飲みたいけど体があわない、でも雰囲気を楽しみたいという方にもぜひお試しいただければと思っています。今はどこの飲食店でもノンアルコール飲料を置かれていますから、そこに「日本酒テイスト」を加えていただき、ご来店されたお客様の選択肢を1つ増やしていただければと考えています。
株式会社福光屋について
-●御社の歩みを教えて下さい。
福光屋は1625年(寛永二年)創業の金沢で最も歴史を持つ酒蔵で、現在は、純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸はもちろん、純米酒をベースにした酒カクテル(スパークリング)や甘酒など、様々な商品を販売しております。どの商品も霊峰・白山の裾野に降り注いだ雨が地中深く浸み込んだミネラルたっぷりの「百年水」を使用し、お米は1960年から契約栽培に取り組んで品質管理も徹底しております。また、2001年からは生産高が万石単位の酒蔵として日本初となる「純米蔵」も実現しました。
-●「純米蔵」について詳しく教えていただけますか。
日本酒は大きく2つにわかれます。「純米酒」か「純米酒でない(本醸造酒)」かです。純米酒は「米」「米麹」「水」だけで作られるものをさし、そして、そこに「醸造アルコール」を添加したものが「本醸造酒」です。醸造アルコールを添加することを、業界では通称「アル添」と呼んでいます。
アル添は戦時中に広まったとされており、お米が不足している時期に安く大量に日本酒を作るため、純米酒に度数の強い焼酎を加え、そこにお水を足していたと聞いています。また、戦地に送るときに凍らないように、腐敗しないようにと度数を高くするためだったなど様々な理由があるようです。
しかし、原料米の確保が容易になった今日、弊社は米と米麹のみを原料にした日本酒に戻そうではないかと考え、純米酒の製造だけ(純米蔵)に切り替えたのです。純米酒であれば、安全・安心をしっかり訴えることもできます。
-●さきほど「万石蔵」という言葉がありましが。
ええ。日本酒業界は今も商習慣として「石(ごく)」で、規模や年間の出荷量を表現します。例えば「うちは千石です」「うちは二千石です」といった感じですね。「一石=1升瓶100本=180リットル」となり、「万石」というのが、ある程度の規模がある会社の目安になります。今のところ「万石」を超えた会社で、純米蔵を実現しているのは弊社くらいしかありません。生産性を考えると、規模が大きいメーカーになるほど純米酒というのは難しいのです。
-●では、最後に今後の展望を教えていただけますか。
『零の雫』に関して言えば、日本酒が好きな方にも高評価いただけるように、“国内で唯一”に甘んじず改良を重ねていきたいと考えています。そして、全体のお話をすると、日本酒離れがすすむ中で、若者の日本酒の需要を増やしていくことが今もっとも重要な課題だと考えています。
日本酒のファンを増やすためには、品質にこだわりおいしい日本酒をつくることが大前提となります。若い方の中には、安い日本酒のイメージで「おいしくない」「悪酔いする」と思われている方もいらっしゃいますので、まずは「おいしい日本酒もあるんだ」と知っていただかなければいけません。
また、最近は原料に敏感な方も多いので、原材料にもこだわっています。弊社が純米蔵に取り組んだのも、「何も混ざっていない」ということが若い方にとって1つの安心になると思ったからです。
さらに、ボトルのデザインやネーミングも幅広い世代の方が手に取りやすいよう考え、東京ミッドタウンや銀座などにある直営店では、日本酒はもちろん酒器やおつまみなども販売してお酒を楽しむ空間を演出するお手伝いもしています。
様々な取り組みを通して、国酒である日本酒を、長く、多くの方に飲んでいただく市場を育てていく。それが、酒造メーカーとしての大きな使命だと思っています。
株式会社福光屋
お話:中谷俊多美様、八下田純一様