ユーザーの日常によりそい、現場に負担をかけずに出来立てを提供できる強み
これまで『LINEポケオ』がファミリーレストランや牛丼チェーン店など、国内約3100店舗で注文を受けてきたデータから、浮かびあがった利用状況がある。
「同意を得たユーザーから取得した位置情報の分析では、利用者の約30%は現在位置の半径500メートル以内の店舗に注文する傾向にあります。それ以外のユーザーは、通勤・通学の帰り道になる最寄り駅周辺の店舗に注文することが多いとわかりました」(武藤氏)
「位置情報のデータを扱えるプラットフォームでは、ユーザーの現在位置や最寄り駅周辺で、どの店がテイクアウトを実施しているか、行ったことのないお店もスマホ上に表示させることができます。店舗側では自力でできなかった新規客への訴求が可能になります」(藤原氏)
位置情報を活用すればテイクアウトに限らず、デリバリーでもユーザーが店を知るきっかけにはなるだろう。ただ、デリバリーサービスの中には、30%程度の利用手数料が上乗せされたり、最低注文価格が設定されるなど、ユーザーに割高感を抱かせる場合がある。また、利用が週末などの休日に集中するといった特徴にも留意が必要だ。
「郊外店など、立地によってはデリバリーの方が効果的という場合ももちろんあります。それぞれの店舗の特性に合わせて、提供するサービスを検討されるのが良いでしょう」(藤原氏)
店舗でテイクアウト利用が増えた場合、人員の少ないところではレジや予約対応が相当の負担になる、イートインを優先してテイクアウトの客を待たせてしまうといったオペレーションの危惧はないか。
藤原氏は、多くの飲食店が抱えがちな人手不足による課題こそ、ITの活用で解決できるという。
「たとえば、『LINEポケオ』で店舗へご提供するタブレットは、導入店ごとに専用の受注設定がされた状態になっています。店舗ではシステム導入の手間や多額の初期投資をすることなく、テイクアウトの開始と掲載が可能です。
また、テイクアウトの対応ができない時間帯は、受付を一時停止する設定もできます。極端にいえば、我々のサービスで、人員をまったく増やさずキッチンの稼働率を上げることができたら、と考えています」(藤原氏)
「タブレットにテイクアウト対象商品の画像や商品名、金額等を登録するだけで、手軽に『LINEポケオ』に参加できます。スマホは画面が小さいため、オペレーションを考慮して、テイクアウト専用のメニューを3品ほど考えるのが良いと思います」(武藤氏)
テイクアウトを発展させてきたファストフード業態以外の飲食店でも、テイクアウト事業に取り組める時代になってきた。位置情報を味方につければ、予約のタイミングに合わせてできたての料理を提供できる。消費者にはコンビニ商品や惣菜以外の食の選択肢が広がる。テイクアウトサービスの進化は、飲食店にとって大きな可能性をもたらすことだろう。