知らなければ通り過ぎるような場所ですが、通りからちらりと見える店舗の側面を、目立つようにLEDで発光させています。「どんな店なんだろう」と足をとめさせて、覗くとタイ・バンコクの屋台をまるごと持ってきたような空間が出現、という仕掛けです。
【Q】確かに店の前を素通りできない、強いインパクトを感じます
隠れ家的な店は目立たない分、「あの店でタイ屋台料理食べたいね」と思い出してもらう必要があります。そのために一度来店いただいたお客様には、確実に記憶に残るよう常に視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚に働きかけ続けることを店のテーマにしています。
例えば店内は、本場タイ・バンコクの屋台そのままの派手な色使いを活かしています。またスタッフは日本人ですが、挨拶やオーダーを通すために常にタイ語を大声で飛び交わせています。
そして何より、カオカオカオのメニューは現地の屋台の味そのものを再現しています。辛さも酸味も香辛料のにおいも現地のままです。
タイ屋台料理の基本的な考え方として、コクが非常に少ないという特徴があります。コクというのは、砂糖の量や調味料の種類の多さで決まるので、それらが贅沢に使える王宮料理と違って、屋台料理はそもそもあっさりしたものなのです。
そうした屋台料理というコンセプトや歴史を、調理するスタッフ全員が理解したうえで、きちんとした技術に基づいて美味しく作る。これが五感を刺激できる店にとって大切だと思っています。
【Q】それは、「研究」に基づいた工夫ですか?
そんなに専門的なものでもないですが(笑)。
あえて研究というなら、他の繁盛店の研究はかなりしました。たとえば、1店舗目を出す際は、1年かけて首都圏・神奈川の主要エリアの飲食店を数百店舗単位で訪ねて食べ歩き、立地や外観、内装、メニューに至るまで独自にデータを収集しました。そのデータを分析してみると、成功店の共通項が見えてきました。
立地でいえば、大衆酒場的なジャンルで繁盛している店は、路面店で間口は広い傾向だとか。2面の間口がとれる角地にあると、駅から遠くても人が入ります。とはいえ、何の実績もない1店舗目から、そんな条件ぴったりの物件を借りることはできませんでしたね。
ただ繁盛店の共通点は立地だけではありません。あの店といえばこれ、と代名詞になるような看板メニューがあるという点もあげられるでしょう。そして、看板メニューは、自然発生的に生まれることもありますが、店が意図的に作り出せるものでもあるんです。
【Q】具体的に、どういうことでしょうか?
カオカオカオの看板メニューはタイ屋台ではおなじみの、鶏だしで炊いたごはんに香味野菜で茹でた鶏肉が乗った「カオマンガイ」です。これも、常に一番人気だったわけではありません。
メニューは何度かリニューアルをしています。回転率、万人受け、オペレーション簡略化など、そのタイミングで重視すべきコンセプトによって、仮説と検証で試行錯誤を繰り返してきました。