現在の熊の焼鳥は、他の会員の紹介でしか入店できない、いわゆる『一見さんお断り』の店。運よく来店できても、次はいつ来れるか分からない。この心理が、さらに新しい会員を生み出しているのだ。
「少し高めの会員制というのも、ステイタスにつながっているみたいですね。よく考えると『男が格好つけられる焼鳥屋』って少ないのかもしれません」
仕入れ方はいたって普通、それでも人気を呼ぶ焼鳥屋
高価な入会金を払っても『食べたい』と思わせる焼鳥とは、どんなものなのだろうか。
「ウチで使う鶏肉は、鳥取県産のブロイラーです。鮮度と品質に定評はありますが、特別な銘柄ではありません。それでも焼き方、塩を振るタイミング、煙の当て方、炭の温度など、やり方ひとつで味を引き出せるという自負があります」
そのこだりのひとつが「燻し焼」だ。鶏肉の脂を焼きながら備長炭に落とし、立ち出る煙でじっくりと鶏肉を燻す。炭の香りを纏った焼鳥は、ジューシーで一度食べると虜になるという。
さらに、コース内には焼鳥以外にも、多くのファンを魅了するメニューが用意されている。海苔の上にムネ肉をのせ、山芋と雲丹(うに)を合わせた「雲丹ムネ」もそのひとつ。これを目当てに入会する人も少なくないという。
また、鶏肉の刺身も1羽の鳥からわずかに採れるという、希少部位のオンパレード。12種盛りや25種盛りといった圧巻のメニュー構成で、他店との差別化を図っている。
「厳密に言うと、30種くらいまでは出せるんですけど、他のお店に真似されたらさらにその上いかなアカンから、隠し持っているんです(笑)」
茶化すような口ぶりでそう話すが、これこそ鶏肉の確かな知識と熟練職人としての腕があってこそ。会員制の焼鳥屋として繁盛店となった『熊の焼鳥』。だがその裏側には、会員制にするための確固たる理由が隠されていた。今後も着実に会員を増やしながら、面白い店作りを見せてくれそうだ。
熊の焼鳥
住所:〒530-0041 大阪市北区天神橋6-3-26
電話:06-6353-6330
お話:代表 熊脇稔康様