外務省員からタイ料理店オーナーへの転身
【Q】なぜ、外務省を退職して、タイ料理専門店の経営者になろうと決断されたのでしょう?
そもそも、外務省に勤め始めたのは、『海外の人と仕事がしてみたい』というシンプルな理由からでした。また、当初より漠然と『いつかは自分で商売をして自分の力を試したい』とも思っていました。
なぜ、飲食業なのかといえば、人をもてなすことが好きだったからです。外務省時代に中東のシリアとオマーンに6年近く赴任していたのですが、毎週のように、アラブ人や欧米人などの外交官を自宅に招いて、自由討論会のようなものを開いていました。
話題は「中東和平」や「資源問題」など様々でしたが、私はというと、討論への参加はそこそこに、ホストとして討論後に出す軽食の内容や出すタイミング、その時にかける音楽の種類など、そんなことばかり考えていました(笑)。
私は、自分自身が率先して場を盛り上げるタイプではありませんが、皆が料理を囲んでワイワイ楽しむのを、傍から見ているのが好きです。そんな“おもてなし好き”が高じて、最終的に飲食業を始めてしまいました(笑)。
【Q】では、タイ料理で勝負しようと考えたのはなぜでしょう?
『勝負』という気持ちは全くなくて、自分が好きなタイ料理を他の人にも食べてもらいたい、そして美味しいと思ってもらいたいという気持ちで始めて、今もその気持ちのまま続けています。
もともとタイという国には何かと縁があって、オマーンに赴任していた頃、行きつけの和食屋の料理人がタイ人だったり、現地のタイ大使館の外交官ともプライベートで仲が良かったり。とにかくタイ人の気性が好きなのです。素直で明るい。誤解を恐れずに言えば、子供のように、今一瞬一瞬の刹那を大事に生きているところが好きです。もちろん出会った人との相性も良かったのだと思います。