食品事業者が知っておきたい、2025年10月以降の法改正予定まとめ

法令対策2025.12.12

食品事業者が知っておきたい、2025年10月以降の法改正予定まとめ

2025.12.12

食品事業者が気をつけるべき法改正の内容と対策

2025年10月以降の法改正には、以前から段階的に施行されているものが多々あり、これまで対象外だった企業や従業員に影響を及ぼすことも考えられる。その中でも特に注意しておきたい法改正について詳しく解説していく。

育児・介護休業法

育児・介護休業法の改正は、労働者が育児や介護と仕事を両立できるよう2025年4月から段階的に施行されている。具体的には「従業員やその子供の対象拡大」「柔軟な働き方を実現する措置としてテレワークの追加」などが挙げられる。

そして2025年10月の施行では、3歳から小学校就学前の子を持つ従業員に対して、事業主が以下の5つの措置から2つ以上を選んで取り組む必要がある。

  • 始業時刻の変更
  • 保育施設の設置や運営
  • 短時間勤務制度
  • 養育両立支援休暇の付与(10日以上/年)
  • テレワークなどの働き方(10日以上/月)

加えて労働者の子供が3歳になるまでの適切な時期に、選んだ措置の内容や申出先、所定外労働や時間外労働などの制限制度について、個別に周知と意向の確認を行わなければなならない。

また従業員本人やその配偶者が妊娠や出産を申し出た際、子供が3歳になるまでの適切な時期には、各家庭に応じて仕事と育児の両立に関する以下の項目を個別に聴取する必要がある。

  • 始業や終業などの勤務時間帯
  • 勤務地
  • 支援制度の利用期間
  • 仕事と育児が両立できる就業の条件

事業主は、聴取した内容や会社の状況に応じて勤務時間や業務量の調整、労働条件の見直しなどの配慮を行うことになる。

【対応策】

  • 就業規則の見直し
  • 従業員への周知と意思確認
  • テレワークなどで働くための環境整備

雇用保険法等改正

雇用保険法等改正で創設される「教育訓練休暇給付金」は、雇用保険の被保険者が職業関連の教育訓練を受けるために、無給での休暇を取得した際の生活費を支援するものだ。主な概要は以下の通り。

【教育訓練休暇給付金】

対象者雇用保険の被保険者
対象となる休暇
  • 教育訓練のための休暇であること
  • 就業規則や労働協約等に規定された制度に基づく休暇
  • 従業員が自発的に希望し、事業主の承認を得た30日以上の無給休暇
給付内容離職した際の失業手当と同等
給付日数

被保険者期間に応じて上限が定められる

  • 5年以上10年未満:90日
  • 10年以上20年未満:120日
  • 20年以上・150日

参考:厚生労働省「令和7年10月から「教育訓練休暇給付金」が創設されます」

例えば、「IT設備や管理システムの取り扱い」「店舗経営に役立つデータ分析」「経理に関する専門知識」など、特定のスキルやノウハウを持った専門的な人材育成を目指す場合に活用しやすい。一方で仕事内容とは関係ないスキルであったり、趣味で参加する講座などは対象外だ。

【対応策】

  • 教育訓練休暇制度の導入と整備
  • 従業員が求めるスキルやノウハウの調査、必要になる支援や制度の把握

社会保障制度への対応

2025年10月以降は、被扶養者における年収要件の変更や社会保険のさらなる適用拡大が実施される。従業員数が少ない企業や個人で経営する飲食店などでも、雇用するスタッフが社会保険に加入する義務が発生することも予想されるだろう。

例えば、現行の社会保険の加入対象となる短時間労働者の要件については以下の通りだ。

  • 週20時間以上の勤務
  • 給与が月額88,000円以上(公布から3年以内に撤廃)
  • 2ヶ月を超えて働く予定がある
  • 学生ではないこと

そのため、従業員が親の扶養に入り続けるのか、社会保険へ加入するのかなど労働者本人の意思確認が必要だ。また従業員の労働時間や賃金などの把握、対象者がいるなら加入手続きの準備を進めなくてはならない。対象となる企業規模については、法改正予定では以下の通り。

期間対象となる企業規模
2024年10月以降従業員数が51人以上(現行)
2027年10月以降従業員数が36人以上
2029年10月以降

従業員数が21人以上

5人以上の個人事業所(2029年10月時点ですでに存在している事業所は当分の間対象外)

2032年10月以降従業員数が11人以上
2035年10月以降

企業規模要件は事実上撤廃

従業員数に関わらず要件を満たす短時間労働者が対象となる

気付かない内に企業規模の要件を満たしていることが無いよう、自社で雇用しているパートやアルバイトの人数は常に把握しておくべきだ。

【対応策】

  • 従業員の労働時間の把握と調整
  • 社会保険の加入対象者に向けた説明と手続き

食料システム法

食料システム法とは、原材料や人件費などの高騰により、食料の持続的な供給が困難になっている状況を打破するために創設された新たな法律である。食品業界に携わる様々な事業者の事業活動を促進し、適正な取引を促すことを目的としたものだ。具体的には、2026年4月1日から食料全般を対象として事業者に2つの努力義務が課される。

  • 昨今の物価高によるコスト上昇などで取引価格に対する協議があった場合の誠実な対応
  • 古い商習慣を見直すなどの取り組みに対する協力や検討

また食品産業の持続的な発展を促すために、2025年10月1日より新たな計画認定制度が開始された。主に食品製造業・卸売業・小売業・外食業などが実施する新たな計画に対して、資金調達の支援や税制優遇といった特例措置を適用するものだ。

参考:農林水産省「食料システム法 概要パンフレット」

食品の製造や流通に携わる事業者は、これらの食料システム法を活用するためにも、事前に対策を練ることが重要だ。例えば、コスト上昇を理由に取引先と価格交渉する場合、「なぜコストが上昇したのか」「どのくらい費用が増えたのか」といった根拠となるデータ収集が必要不可欠となる。

またコスト増などにより食品を値上げする際には、消費者への丁寧な説明と価値の訴求によって理解を深めてもらうことも大切だ。安全な食品供給に繋がること、今後も自社の食品ブランドを持続するために必要な取り組みであることなどを周知する。

【対応策】

  • 農林水産省が指定する品目や指標に応じたコストデータの収集
  • 新たな仕入れルートの開拓や生産性向上のための設備導入などの計画立案
  • 消費者に向けて食品の製造過程や製品に対する付加価値の発信

食品事業者に関連する法改正は、労働・税制・観光・デジタル化など多岐にわたる

切迫した国外情勢のみならず、日本国内においても首相交代などがあり、日々の状況は変わっている。これまで同様に推し進められる法改正がある一方、内容の変更や新たな法案が成立することもあるだろう。そんな中、食品関連事業者が情勢の変化についていくためには、日頃からの情報収集が欠かせない。ポイントとしては食品関係に絞らず、労働基準や社会保障、観光政策などの他分野にもアンテナを張っておくことだ。

焦らず対応するためにも、現行の制度だけでなく法改正される先の予定も事前にまとめておき、万全の準備で対応策を講じることが重要だ。

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