忘れたらどうなる?飲食店営業に必要な食品衛生責任者・防火管理者の届け出と更新

法令対策2020.08.06

忘れたらどうなる?飲食店営業に必要な食品衛生責任者・防火管理者の届け出と更新

2020.08.06

忘れたらどうなる?飲食店営業に必要な食品衛生責任者・防火管理者の届け出と更新

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飲食店を営業するには、法律に従って食品衛生責任者と防火管理者の有資格者を店舗ごとに1人、必ず置かなければならない。しかし人材の流動が活発な飲食業界において、退職などにより食品衛生責任者・防火管理者が一時的に不在となることもあるだろう。こうした場合、速やかに申請・更新をする必要があるが、日々の営業に追われて変更の届け出を忘れがちになってはいないだろうか。

責任者が不在のまま営業を続けてしまうと違反行為となり、経営者や店舗の責任者に法的な罰則が下されることがある。「うっかり」では済まされない食品衛生責任者・防火管理者の変更手続き、届出を怠った場合の罰則規定について、東京都保健福祉局や東京消防庁などの資料をもとに解説する。

目次

食品衛生責任者の役割と資格取得方法

役割

食品衛生責任者の設置を義務付けている法律は、食品衛生法と都道府県の条例(主に食品衛生法を補足する食品衛生条例)で、その役割は「営業者の指示に従い食品衛生上の管理運営にあたるもの」とされている。具体的には以下のとおり。

1.食品衛生上の危害の発生を防止するための措置が必要な場合は、営業者に対して改善を進言し、その促進を図らなければならない。
2.法令の改廃などに留意し、違反行為のないように努めなければならない。
3.食品衛生に係わる講習会を定期的に受講し、常に食品衛生に関する新しい知見の習得に努めなくてはならない。
4.従事者への衛生教育を必要に応じて実施しなくてはならない。

食品衛生責任者の設置は、常時、施設や食品の取扱い等を管理できる人でなければならない。このため、一人で複数店舗の食品衛生責任者を兼務することは原則的にできない。食中毒など消費者にとっての不利益な事故は、店舗の信用にも大きく関わるため、店長などに「食品衛生責任者資格」を取得させることは必要不可欠である。

資格の取得方法

「食品衛生責任者資格」の取得方法は、主に2つある。ひとつは地域の食品衛生協会などが実施している養成講習会を受講する方法。もうひとつは、栄養士や調理師の資格を持つこと。このような食品衛生に関する知識がある人は講習会を受けなくてもなれる。

養成講習会の費用は東京都では10,000円(20208月時点)で、都道府県によって異なる場合がある。学ぶ内容は次の3点だ。

・公衆衛生学(伝染病、疾病予防、環境衛生、労働衛生など)…1時間
・衛生法規(食品衛生法、施設基準、管理運営基準、規格基準、公衆衛生法規など)…2時間
・食品衛生学(食品事故、食品の取扱い、施設の衛生管理、自主管理など)…3時間

受講後には「食品衛生責任者資格」を示す修了証が発行されるので、保健所へ提出することで店舗の食品衛生責任者となることができる。また、講習は1日ですべての科目を受講できるため、何日も通う必要はない。資格の有効期限はないため、一度取得すれば将来にわたってその資格は全国どこでも有効となる。

食品衛生責任者の担当者変更でするべきこと

食品衛生責任者が退職などにより、店舗に不在となったらどのように対処すればいいのだろうか。この場合、ただちに食品衛生責任者資格を持つものを置くことが必要だ。ただし、資格取得までには多少の時間がかかるが、その間も営業を続けることは可能である。以下に、責任者の選任と営業継続の流れをまとめた。

◎食品衛生責任者となるスタッフを選任する
 ↓
◎自治体・食品衛生協会が開催している講習会に申し込む
 ↓
◎管轄の保健所に、講習会の受講予約票とともに新たな責任者を置く旨を記した「食品衛生責任者設置誓約書」を提出する
 ↓
◎受講終了後、速やかに「食品衛生責任者変更届」を保健所へ提出する


誓約書の提出により、若干の期間、責任者不在での営業が猶予されるが、あくまで便宜的な措置に過ぎないため、繰り返しとなるが速やかに新たな責任者を選任しなければならない。

食品衛生責任者を選任せずに営業を継続したり、他人名義で営業をすると、保健所からの指示、営業停止、場合によっては営業許可の取消といった行政処分の対象となるため注意が必要だ。

防火管理者の役割と資格取得方法

役割

飲食店にはタバコ、ガス、ダクト、油など出火の原因となりやすいものが多い。その営業上欠かせないもうひとつの資格が、防火管理者である。防火管理者は、消防法で定められた国家資格である。その役割は、多数の者が利用する建物などの火災予防のために必要な業務を行うこととされている。

資格の取得方法

防火管理者資格には、甲種と乙種の2つの資格があり、店舗の延べ床面積によって取得する資格が変わる。それぞれについて見ていこう。

店舗の延べ床面積300m2以上300m2未満
講習の種類甲種防火管理講習乙種防火管理講習
講習内容防火管理の意義および制度
火気管理
施設・設備の維持管理
防火管理に係る訓練および教育
防火管理に係る消防計画など
甲種の講習事項のうち、
基礎的な知識および技能
講習時間約10時間(2日間講習)約5時間(1日間講習)
費用8,000円7,000円

(2020年8月時点)

また、甲種防火管理者のうち、収容人員が300人以上の施設を管理する場合、5年以内ごとに「甲種防火管理再講習」を受講することが義務付けられている。内容は最近の法令改正の概要、火災事例研究で、約2時間の半日講習となる。

店舗運営において、万が一の事態に備えておくことが求められる。防火管理者は資格取得後には、消防計画の作成・届出や消火、通報および避難訓練の計画と実施、さらにはスタッフへの教育などを行い、防災に務めることが求められる。

防火管理者の不在と罰則

食品衛生責任者と同様に、退職などにより防火管理者が不在となった場合の手続きについて見てみたい。まず防火管理者が変更になる場合は、前任者を解任し、後任を選任、その旨を管轄の消防署長に届け出なければならない。その上で、消防計画の作成など、防火管理上の必要な業務を行わなければならない。

万が一の事故の際には、人命に関わることもあるため、防火管理者には防火管理資格の取得で得た知識に加えて、強い責任感と実行力を兼ね備えたリーダー的な人物が求められる。

店舗運営において義務付けられている防火管理者が異動・退職により不在となり、速やかな変更が行われずに営業が行われていた場合、罰則が設けられている。 

・防火管理者選任命令に違反した者:6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
・防火管理者選解任届出義務に違反した者:30万円以下の罰金又は拘留

罰則の内容から、店舗における防火管理の重要性がうかがえる。飲食店の価値はおいしいメニューや心地よい接客だけでなく、安心・安全の提供が求められている。飲食店を営業するうえで義務付けられている食品衛生責任者と防火管理者それぞれの役割を見直し、自店の運営に取り入れることが必要だ。

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