法令対策2014.04.25

海外での食品表示事情~世界の安全基準とは?

2014.04.25

高田 淳一

高田 淳一

 前回は食の安全に欠かせない食物アレルギー対応の国内の状況についてお伝えしました。今回は引き続きEUやアメリカ、香港での食物アレルギーや栄養成分などの表示義務を通して、食の安全に対する世界的な意識の高まりや流れについて考えたいと思います。

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 前回は食の安全に欠かせない食物アレルギー対応の国内の状況についてお伝えしました。今回は引き続きEUやアメリカ、香港での食物アレルギーや栄養成分などの表示義務を通して、食の安全に対する世界的な意識の高まりや流れについて考えたいと思います。

目次

EU

表示全体

 EUでは2011年12月に食品表示に関する新規則「消費者に対する食品情報の提供に関する規則」が発効され、現在、移行期間中となっています。3年の猶予期間が過ぎると現行指令「2000/13/EC」は廃止され、今までは任意だった数項目が表示義務に変更になります。EUに食品を輸出される際には、移行期間中、そして移行期間後は特にラベルの表示について注意が必要です。

<表示が義務付けられている情報>(2014年12月13日まで猶予期間)
・食品の名称
・成分リスト
・アレルギー誘発物質
・特定成分の分量や成分の区別
・食品の正味量
・賞味期限や使用期限
・特別な保管条件や使用条件
・食品事業者の名称、住所
・一部食品の原産国表示
・使用法(説明が必要な場合)
・実際のアルコール度数(度数が1.2%を超える飲料の場合)
・栄養表示

食物アレルギー関連

  EUの表示義務にある「アレルギー誘発物質」は、包装容器のサイズに関係なく必ず表示しなければいけません。新規則については包装済み食品だけでなく、最 終消費者に販売される未包装の食品も対象となり、レストランや食堂などで提供される食品も適用となります。さらに、この規則はEUで生産・出荷され食品の ケイタリングサービスに対しても適用となるとのことです。ただし、表示の例外として、EU加盟各国が独自に規制を導入している場合や慈善イベントや地域コ ミュニティのフェアのように個人が食品を販売する場合は対象外となります。
 また、これまでは成分リストの中に表示すればよかったのですが、新規則では包装済み食品は成分リストに示すとともに、他の成分より目立つ活字で強調して示すことが義務づけられています。

<表示義務のあるアレルギー物質>
グルテンを含有穀類/甲殻類/卵/魚類/ピーナッツ/大豆/乳/ナッツ類/セロリ/マスタード/胡麻/10 mg/kg又は10 mg/l(SO2換算)を超える無水亜硫酸及び亜硫酸塩/ルピナス(ハウチワマメ)/軟体動物

 ちなみに、EUのアレルギー対応は進んでおり、中でもフランスでは食物アレルギーを抜いた商品などを扱う「BIOオーガニック専門店(BIOは Biologiqueの略)」があります。しかも、「BIOオーガニック専門店」で商品を購入するとビスケットなら3倍、パスタや粉類なら5倍の値段に なってしまうため、医師の処方箋があると商品代金の半分近い金額が返還される制度まであるそうです。また、マルセイユ市では数年前から公立学校の給食セン ターでも除去食の対応をしているそうです。
 さらにドイツのルフトハンザ航空、イタリアのアリタリア航空、オランダのKLMオランダ航空の機内食では、数日前に予約しておくと食物アレルギー対応食を用意してくれます。

 日本では学校給食に関しては食物アレルギー対応を行っているところも増えているとは思いますが、各地域、学校によって対応はさまざまです。日本でのアレルギー対応はEU各国に比べ遅いのかもしれません。

栄養成分関連

 EUの包装済み食品の栄養成分表示に関する現行指令は「90/496/EEC」ですが、こちらも前述の新規則「消費者に対する食品情報の提供に関する規則」の移行期間になります。

<表示義務(任意)のある栄養成分>(2016年12月13日まで猶予期間)

義務:エネルギー量/脂質/飽和脂肪酸/炭水化物/たんぱく質/糖質/塩分の各量
任意:一価不飽和脂肪酸/多価不飽和脂肪酸/ポリオール(多価アルコール)/でんぷん/食物繊維/ビタミン類/ミネラル類

アメリカ

表示全体

  アメリカで食品表示およ び食品の安全を管轄するのは、FDA(食品医薬品局)、USDA(米国農務省)などを始め、さまざまな機関があります。FDAは食品に関して、食肉・鶏肉 製品及び卵製品を除き、州際取引が行われるすべての食品(国産品、輸出品)を対象として、安全で、健康的で、適切な表示が行われることを確保することを目 的として規制権限を行使する機関です。仮に違反行為があった場合には、法的措置を行い、回収(recall)を求めることができます。そして食品施設の検 査、物理的・化学的・微生物学的混入に関する試験・調査、食品添加物及び色素添加物の市場流通前の監視などを行います。
 ちなみに食肉・鶏肉製品及び卵製品はUSDA内のFSIS(Food Safety and Inspection Service)などが食品検査や食品表示を管轄しています。

<表示が義務付けられている情報>
・食品の名称
・食品の正味内容量
・製造業者、包装業者または卸売業者の名称および事業所の所在地
・含有量が多い順に当該原料の一般名称
・栄養表示

食物アレルギー関連

 アメリカで食物アレルギー表示制度がスタートしたのは2006年で、FDAが発表した8品目になります。傾向としては、ピーナッツバターからのピーナッツアレルギーが依然として多く、またグルテンアレルギーも引き続き多い傾向にあります。

<表示義務のあるアレルギー物質>
乳/卵/魚類/甲殻類/ナッツ類/小麦/ピーナッツ/大豆

 さらに、主要な食物アレルゲン、またはそれを含む、香料、着色料、又は加工助剤のような二次的添加物(incidental additives)についても、表示しなければならないことになっています。

栄養成分関連

  1990年に「FFDCA」が改正され、「栄養表示教育法(Nutrition Labeling and Education Act,NLEA)」が制定されました。これにより米国における栄養表示に関する規制システムは大きく変化し、ほとんどの食品に標準化された栄養表示を行 うことが義務づけられました。さらに2010年に「医療制度改革法」が成立し、レストランチェーンの定番メニューや自動販売機の食品における栄養情報の提 供が義務付けられました。表示の対象となる項目が多く、販売するメーカーはラベルや数値を出すために費やす分析や計算が悩み所かと思います。

<表示義務のある栄養成分>
エネルギー/炭水化物/タンパク質/脂質/ナトリウム/飽和脂肪酸/トランス脂肪酸/コレステロール/糖類/食物繊維/ビタミンA,B/カルシウム/鉄

香港

表示全体

 最後に簡単に香港についてもご紹介します。香港では、下記の内容をすべての食品製造業者と包装業者は包装済み食品に、判読できる方法で、中国語もしくは英語で記載しなければならないとされています。ただし、「シール」「ラベル」を包装の上に貼っても良いとされています。

<表示が義務付けられている情報>
・食品の名称
・重量あるいは容量の多い順に並べた栄養成分
・食用期限及び賞味期限
・保存方法あるいは使用方法(食用方法)
・製造業者あるいは包装業者の名称、住所
・食品の数、重量あるいは容量

食物アレルギー関連

 食物アレルギー表示義務規制は2007年8月から施行されています。

<表示義務のあるアレルギー物質>
グルテン含有穀類/甲殻類/卵/魚類/落花生/大豆/乳/木の実

栄養成分表示関連

  栄養表示の特定法例は2010年7月1日に施行されました。規制範囲は一般の包装済み食品で、例外は「 36か月未満の乳幼児に消費されることを意図して処方された食品」「特殊な栄養摂取を要する者に提供される特殊な食品(例えば、妊婦用粉ミルクなど)」と なっています。下記の項目は弊社の「香港栄養成分パッケージ」として検査を取扱っておりますので、ご興味のある方はお問合せください。

<表示義務のある栄養成分>
熱量/タンパク質/炭水化物/総脂質/飽和脂肪酸/トランス脂肪酸/ナトリウム/糖/強調表示を行う栄養素(脂質類に関する強調表示がある場合、コレステロールの含有量も併記しなければならない)

 こうしてみると海外では多くの国が早い段階で栄養成分表示を義務化していることがわかります。先日、消費者庁が日本における栄養成分表示の義務化にむけた法案をまとめましたが、これも自然な流れといえるでしょう。
 また、表示とは関係ありませんが、日本では食品衛生法によって7月1日から生食レバーの提供が禁止になったことはすでにご存知かと思います(駆け込み需 要から、生食レバーで食中毒が8件起きたとのニュースがありました)。同じ日、アメリカのカリフォルニア州では、フォアグラの生産、提供が禁止されまし た。理由は生産方法が「非人道的だ」とのことです。こちらは極端な例かもしれませんが、環境保護や動物愛護の動きは世界的に広まっており、日本の食品業界 も遠くない未来に同じような議論に直面する可能性はあります。
 輸出入に関わっていない企業もこうした海外の状況を知ることで、日本国内での食の安全や表示の動向を予測し、対応策の先手を打つことができるのではないでしょうか。

<参考資料>
海外のアレルギー表示義務に関する参考資料:消費者庁「アレルギー物質を含む加工食品のハンドブック(P6)」(PDF)
海外の栄養成分表示に関する参考資料:消費者庁「栄養成分表示をめぐる国際的な動向」(PDF)

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