動物性自然毒
事件数・患者数はそれほど多くないものの、フグ毒は致死率が高い。貝毒は規制値を越えた場合は出荷規制され市場に出回ることはないが、ヨーロッパ大西洋沿岸などでは大規模な食中毒が発生している。
フグ
主な食材 | 喫食できないフグ、フグの内臓、とくに肝臓や卵巣。 | ||
特徴 | 日本では毎年食中毒が発生。フグ毒テトロドトキシンは猛毒で、死亡例も報告されている。 | ||
症状 | 食後20分から3時間程度の短時間でしびれや麻痺症状が現れる。麻痺症状は口唇から四肢、全身に広がり、重症の場合には呼吸困難で死亡することがある。 | ||
対策 | 加熱 | ─ | 塩もみ、水にさらす、加熱などの調理では、無(弱)毒化されない。フグによって食用可能な部位が異なる。資格を持ったフグ調理師以外は調理しない。 |
冷蔵/冷凍 | ─ |
二枚貝(貝毒)
主な食材 | 二枚貝またはアサリ、ムラサキイガイ、ホタテなど。 | ||
特徴 | 餌にしたプランクトンの毒が蓄積し、貝が毒化する。 | ||
症状 | 症状によって麻痺性、下痢性、記憶喪失性、神経性などに分かれる。口唇、舌、顔面の痺れ、激しい下痢や嘔吐、腹痛など。 | ||
対策 | 加熱 | ─ | 自分で採取したものなどは海域の情報把握などに努める。 |
冷蔵/冷凍 | ─ |
巻貝(キンシバイ等)
主な食材 | バイ、キンシバイ、ボウシュウボラなど。 | ||
特徴 | 唾液腺や内臓にフグ毒テトロドトキシンなどを蓄積していることがある。 | ||
症状 | フグ毒中毒と同じ。 | ||
対策 | 加熱 | ─ | 唾液腺や内臓は取り除く。キンシバイは市場には出回っていない。見かけても使用しない。 |
冷蔵/冷凍 | ─ |
植物性自然毒
植物性自然毒の食中毒はほとんどが家庭で発生している。しかし毒キノコは、まれに食用と誤って販売されるケースもあるため注意が必要だ。
毒キノコ
主な食材 | キノコ | ||
特徴 | 種類によっては致死率の高い猛毒をもつものもある。 | ||
症状 | 作用別に消化器障害型、神経障害型、原形質毒性型に分類される。 | ||
対策 | 加熱 | ─ | 食用のキノコ類と確実に判断できない野生キノコ類については、絶対に食べない、提供しない。 |
冷蔵/冷凍 | ─ |
アジサイ
主な食材 | アジサイ | ||
特徴 | 毒性成分は、未だ明らかではない。 | ||
症状 | 食後30~40分で嘔吐、めまい、顔面紅潮。 | ||
対策 | 加熱 | ─ | 刺身のツマのように料理に添えられることがあるが、食用は避けるべき。 |
冷蔵/冷凍 | ─ |
化学物質
ヒスタミンによる食中毒はアレルギーに似た症状が出るが、アレルギー体質とは関係なく、誰にでも起こる可能性がある。
ヒスタミン
主な食材 | ヒスチジンを多く含むマグロ、カジキ、カツオ、サバ、イワシ、サンマ、ブリ、アジなどの赤身魚及びその加工品。 | ||
特徴 | ヒスタミンが高濃度に蓄積された食品、特に魚類及びその加工品を食べることにより発症する。調理加工工程で除去できない。 | ||
症状 | 食べた直後から1時間以内に、顔面、特に口の周りや耳たぶが赤くなったり、じんましん、頭痛、おう吐、下痢など。重症の場合は、呼吸困難や意識不明。 | ||
対策 | 加熱 | ─ | 魚を生のまま保存する場合は、すみやかに冷蔵、冷凍する。解凍や加工は、魚の低温管理を徹底する。 鮮度が低下した魚は使用しない。調理時に加熱しても分解されない。信頼できる業者から原材料を仕入れる。 |
冷蔵/冷凍 | ○ |
寄生虫
寄生虫が原因となる食中毒でよく知られているのはアニサキスだが、クドアは2000年ごろから発生していた謎の食中毒の原因であることが近年明らかになった。
クドア
主な食材 | 刺身やマリネなど非加熱のヒラメ。 | ||
特徴 | ヒラメの筋肉に寄生する寄生虫(粘液胞子虫)の一種。 | ||
症状 | 数時間程度(約2時間~20時間)で一過性の下痢・嘔吐を引き起こす。多くの場合、症状は軽度。 | ||
対策 | 加熱 | ○ | -20℃で4時間以上の冷凍、または、中心温度75℃5分以上の加熱により病原性が失われる。一度凍結するか、加熱調理する。 |
冷蔵/冷凍 | ○冷凍 |
アニサキス
主な食材 | サバ、イワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマ、アジなどの魚介類。 | ||
特徴 | 寄生虫(線虫)の一種。幼虫の長さ2~3cm、幅は0.5~1mmくらい、白色の少し太い糸のように見える。内臓に寄生するが鮮度が落ちると筋肉に移動する。 | ||
症状 | 食後数時間後から十数時間後に、みぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐 食後十数時間後から数日後に、激しい下腹部痛、腹膜炎症状。 | ||
対策 | 加熱 | ○ | 新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除く。 魚の内臓を生で喫食、提供しない。 目視で幼虫を除去。 -20℃で24時間以上冷凍。または70℃以上で過熱。 |
冷蔵/冷凍 | ○冷凍 |
食中毒の原因物質はさまざまだが、その多くは対策が可能だ。それぞれの原因の特性を知ることで、どのように防いでいくか手段を講じてほしい。
取材協力:公益社団法人日本食品衛生協会
参考:食中毒(厚生労働省)を加工して作成