細菌
多くの細菌は加熱することで死滅するが、ウェルシュ菌をはじめ、黄色ブドウ球菌やセレウス菌、ボツリヌス菌など熱に強い菌であったり、熱に強い毒素を出すものもある。
腸管出血性大腸菌
主な食材 | 生、または加熱不十分な食肉、生食する野菜、果物。 牛レバー、ローストビーフ、焼肉盛り合わせ、浅漬け、ポテトサラダなど。 | ||
特徴 | 代表的なものにO157、O111など。O157は感染力が非常に強い、また冷凍しても死滅しない。 | ||
症状 | 潜伏期は3~5日。 頻回の水様下痢、激しい腹痛、著しい血便も。発熱は一過性が多い。時に重篤な合併症を起こし、死に至る。 | ||
対策 | 加熱 | ○ | 生肉を使った肉料理を避ける。 肉の中心部まで十分に加熱(75℃で1分以上) |
冷蔵/冷凍 | ─ |
カンピロバクター
主な食材 | 生、または加熱不十分な鶏肉。 鶏刺し、鶏わさ、鶏のタタキ、加熱不十分な焼き鳥、レバー串など。 | ||
特徴 | ヒトや動物の腸管内でしか増殖しない。乾燥に弱い。 | ||
症状 | 潜伏期は1~7日。 下痢、腹痛、発熱、嘔吐、頭痛、倦怠感など。感染して数週間後に「ギラン・バレー症候群」を発症することも。 | ||
対策 | 加熱 | ○ | 生肉を使った肉料理を避ける。 肉の中心部まで十分に加熱(75℃で1分以上)。 |
冷蔵/冷凍 | ─ |
リステリア
主な食材 | 冷蔵庫に長期間保存された、加熱せずにそのまま食べられる食品。 ナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモン、コールスローなど。 | ||
特徴 | 欧米では、食品による集団事例が多数報告。 | ||
症状 | 発熱、悪寒、背部痛などのインフルエンザに似た症状。重症化すると致死率が高い。重症化することはまれだが、妊婦や高齢者は注意が必要。 | ||
対策 | 加熱 | ○ | 加熱により死滅する。4℃以下の低温や、12%食塩濃度下でも増殖するため冷蔵庫保存や塩漬けでも注意 |
冷蔵/冷凍 | ─ |
サルモネラ菌
主な食材 | 卵、またはその加工品、食肉(牛レバー、鶏肉)、うなぎ、すっぽん、乾燥イカ菓子など。 | ||
特徴 | 生肉、特に鶏肉と卵を汚染することが多い。乾燥に強い。 | ||
症状 | 潜伏期は6~72時間。 激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐。長期にわたり保菌者となることもある。 | ||
対策 | 加熱 | ○ | 肉・卵は十分に加熱(75℃で1分以上)。卵の生食は期限内のものに限る。 低温保存は有効。しかし過信は禁物。防虫、防鼠対策は効果的。 |
冷蔵/冷凍 | △ |
黄色ブドウ球菌
主な食材 | 穀類とその加工品(握り飯、弁当)、乳・乳製品(牛乳、クリームなど)、卵製品、食肉製品(肉、ハムなど)、魚肉ねり製品(かまぼこなど)、和洋生菓子など。 | ||
特徴 | 人や動物に常在する。 | ||
症状 | 潜伏期は1~5時間(平均3時間)。 吐き気、嘔吐、腹痛、下痢。 | ||
対策 | 加熱 | ─ | 毒素は100℃、30分の加熱でも無毒化されない。 手荒れや化膿創のある人は、食品に直接触れない。 防虫・防鼠対策、低温保存は有効。 |
冷蔵/冷凍 | ○冷蔵 |
腸炎ビブリオ
主な食材 | 魚介類(刺身、寿司、魚介加工品)。二次汚染による各種食品(漬物、塩辛など)。 | ||
特徴 | 真水や酸に弱い。室温でも速やかに増殖する。3%前後の食塩を含む食品中でよく増殖する。 | ||
症状 | 潜伏期は8~24時間。 腹痛、水様下痢、発熱、嘔吐。 | ||
対策 | 加熱 | ○ | 魚介類は新鮮なものでも真水でよく洗う。 短時間でも冷蔵庫に保存。 60℃、10分間の加熱で死滅。 |
冷蔵/冷凍 | ○冷蔵 |
ウエルシュ菌
主な食材 | 多種多様の煮込み料理(カレー、煮魚、麺のつけ汁、野菜煮付け)など。 | ||
特徴 | 酸素のないところで増殖、芽胞は100℃、1~6時間の加熱に耐える。1事例当たりの患者数が多く、しばしば大規模発生。 | ||
症状 | 潜伏期は6~18時間(平均10時間)。 主症状は下痢と腹痛で、嘔吐や発熱はまれ。 | ||
対策 | 加熱 | ─ | 加熱調理食品の冷却は速やかに行う。 食品を保存する場合は、10℃以下か55℃以上を保つ。 再加熱する場合は、十分に加熱して増殖している菌(栄養細胞)を殺菌する。 ただし、加熱しても芽胞は死滅しないこともあるため、加熱を過信しない。 |
冷蔵/冷凍 | ○冷蔵 |
セレウス菌
主な食材 | 嘔吐型と下痢型がある。 嘔吐型:ピラフ、スパゲッティなど。 下痢型:食肉、野菜、スープ、弁当など。 | ||
特徴 | 芽胞は90℃、60分の加熱でも死滅せず、家庭用消毒薬も無効。 | ||
症状 | 嘔吐型:潜伏期は30分~6時間。吐き気、嘔吐が主症状。 下痢型:潜伏期は8~16時間。下痢、腹痛が主症状。 | ||
対策 | 加熱 | ─ | 米飯やめん類を作り置きしない。 穀類の食品は室内に放置せずに調理後は8℃以下または55℃以上で保存する。 保存期間は可能な限り短くする。 |
冷蔵/冷凍 | ○冷蔵 |
ボツリヌス菌
主な食材 | 缶詰、瓶詰、真空パック食品(からしれんこん)、レトルト類似食品、いずし。乳児は蜂蜜、コーンシロップ | ||
特徴 | 発生は少ないが、発生すると重篤になる。芽胞は酸素のないところで増殖し、熱にきわめて強い。製造時の十分な加熱を要する(120℃、4分間)。 | ||
症状 | 潜伏期は8~36時間。 吐き気、 嘔吐、筋力低下、脱力感、便秘、神経症状(複視などの視力障害や発声困難、呼吸困難など)。 | ||
対策 | 加熱 | ─ | 容器が膨張している缶詰や真空パック食品は提供しない。 1歳未満の乳児に蜂蜜を与えない。 |
冷蔵/冷凍 | ─ |
ウイルス
ウイルス性の食中毒のほとんどはノロウイルスによるが、ジビエ料理の流行でE型肝炎ウイルスによる食中毒も増加傾向にある。
ノロウイルス
主な食材 | 加熱不十分な二枚貝。また、感染者の調理による発生のため、原因食品は多数。 | ||
特徴 | 感染力が強く、大規模な集団発生を起こしやすい。 | ||
症状 | 潜伏期間は24~48時間。 主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度。 | ||
対策 | 加熱 | ○ | 塩素系殺菌剤や加熱による処理。 手洗いや調理器具の殺菌など衛生管理の徹底。 |
冷蔵/冷凍 | ─ |
E型肝炎ウイルス
主な食材 | 野生シカ肉、野生イノシシ肉(内臓ふくむ)の生食 加熱不十分な豚レバー。 | ||
特徴 | 人獣共通感染症と認識されている唯一の肝炎ウイルス。妊婦が感染して発症した場合には、劇症化する率が高い。 | ||
症状 | 黄疸、食欲不振、肝腫大、腹痛と腹の張り、嘔吐、発熱など。平均6週間の潜伏期。まれに劇症化する。 | ||
対策 | 加熱 | ○ | 中心部まで火が通るよう十分に加熱する。 シカやイノシシなど野生動物の肉などは生で提供しない。 |
冷蔵/冷凍 | ─ |