食物アレルギーは一部の人の話ではない
さて、みなさんは現在日本にアレルギーの人がどのくらいいらっしゃるかご存知ですか?以下は厚生労働省の見解です。
我が国における食物アレルギー体質をもつ方の正確な人数は把握できていませんが、全人口の1~2%(乳児に限定すると約10%)の方々が何らかの食物アレルギーを持っているものと考えられています。
※乳児が10%、3歳児4~5%、学童期2~3%、成人1~2%といわれています。
このように、食物アレルギーの人の正確な数は分かっていません。それは、調査では「病院にかかっている人の数」をカウントしているからなのです。 病気として食物アレルギーの人の数を把握する際は、厚労省の数値が参考になるでしょう。しかし、食品を扱う側としては、数値に表れてこない軽度の食物アレルギーの人も含めて考える必要があると思います。
食物アレルギーは、原因となる食べ物を避ければ症状が出ないので、大人などで特定の食べ物を避けさえすれば問題のない人や、食物アレルギーがあっても症状が安定している方は、病院を受診していないケースがあります。そういった方の人数はこちらには含まれていません。
また、食物アレルギーの人の周りには家族や友人がいることを忘れてはいけないと思います。特に子供の場合は一人きりで食べることは少ないでしょう。 家族に一人でも食物アレルギーの人がいれば、アレルゲンが含まれる食品を購入することは控えますし、外食をする際も、アレルギー対応をしてくれるレストランを選ぶはずです。
それでは、いったいどのくらいの人を想定すれば良いのか。2009年に行なった調査の結果を参考までにご紹介します。
「以前アレルギーだった」場合も含まれているため、現在に限ると26%という数字にはなりませんが、少なくとも1割くらいの世帯に食物アレルギーを持つ人がいると考えておく必要があるように思います。
一番求められているのは「情報」
これほど多くの人が食に関する制限を持つ中、食物アレルギー対応として、提供する側ができることは何でしょうか? 専用メニューの開発や、コンタミネーション(混入)を防ぐ施設の整備などいろいろと考えられますが、一番求められているのは、実は「情報」なのです。
アレルギーの症状やアレルゲンは人によって千差万別です。画一的な対応をするよりは、情報をきちんと開示し、判断できる材料を分かりやすく伝えることが重要なのです。
もちろん食物アレルギーをお持ちの方にとって、食物アレルゲン情報は食生活に不可欠だということは、皆さんご存知かと思います。 それは「アレルギーを起こす食品を食べない」ための情報であると考えていませんか?私も最初はそう思っていました。 でも本当は、「食べる」ために情報が必要なのです。
以前、食物アレルギーのお子さんをお持ちのお母さんたちにインタビュー調査を行ったことがあり、とても印象に残る言葉に出会いました。
「外食することは、私たちにとってピカピカの夢みたいな出来事なんです」
普段、何げなく加工食品を食べたり、外食を利用していると忘れてしまいがちですが、食べることって、とても楽しい経験なのですよね。 スーパーに並ぶ魅力的な商品の中からこれだ!と思う商品を選ぶのはとてもワクワクします。大切な家族とレストランに行き、プロの料理を味わう時間は何にも代えがたい思い出になるでしょう。
「食」は、人生の大きな大きな楽しみの一つです。「美味しく食べて、楽しい時間を過ごす」ための情報。それが、食の情報の本当の意義であると考えています。そして、アレルギー対応をすることは、患者さんだけでなく、周りの多くの方をも幸せにする可能性があるのです。
アレルギーの人に求められている情報はどのようなものなのか? リスク管理のためだけの情報公開ではなく、消費者との対話を生む情報公開とはどのようなものなのか。 感動を生む情報、お客様に「ありがとう」と言ってもらえる情報公開の形を1年間かけて探っていきたいと思います。
どうぞお付き合いください。