東京オリンピック収容人数は最大1万人に

2021年の東京オリンピックでは、会場の収容定員の50％以内で1万人を上限とすることを原則に、観客を入れて開催することを、大会組織委員会と政府、東京都、IOC（国際オリンピック委員会）、IPC（国際パラリンピック委員会）の5者が決定した。

8月に開幕する東京パラリンピックについては、オリンピック開会式の1週間前に当たる7月16日までに決定するとしている。

オリンピック会場一覧

都内だけでも20以上の競技会場があり、観客、選手とその関係者、報道関係者を含めると多い日で1日約30万人が動くことになるのだ。周辺の飲食店の集客にも少なからず影響が出るだろう。

_{（2021年7月5日時点）}

東京都では6月21日から7月11日までの期限で「まん延防止等重点措置」が発出されているが、7月12日以降、緊急事態宣言や重点措置が出された場合は、無観客も含めて対応を検討するとしている。今後の新型コロナウイルスの感染状況によっては観客の有無や飲食店の酒類提供について方針が変わってくるということだ。

予想される飲食店への影響

飲食店は時短営業や酒類提供禁止などの要請を受け、依然経営的に厳しい状況が続く。

時短営業の要請に応じた飲食店への協力金について、支払い手続きが大きく遅れているケースもあり、家賃などの支払いに猶予がない飲食店側は、苦しい経営状況に陥っている。協力金の支払いは自治体によって大きく差があり、支払いに関して明確なルールがあるわけではないので、飲食店側が不安になるのも無理はない。

物議を醸していたパブリックビューイングの設置については、6月19日に東京都の小池百合子知事が都内のパブリックビューイングはすべて中止すると発表した。これを受けて東京都近隣の各県や大阪府などもパブリックビューイングの全面中止を決めている。

日本トレンドリサーチの調査によると、70.2％がパブリックビューイング会場の設置開始について、「理解できない」と回答した。感染拡大を抑えることが最優先であるという点でも、国民の意見としても、パブリックビューイングの中止は妥当だろう。

政府はオリンピック期間中のテレワーク実施を以前から各企業に要請しているが、緊急事態宣言中の出勤状況を見るとテレワークはあまり進まないことが予想される。

パブリックビューイングが中止になっても、会社に出勤する人が増えると同僚や友達とテレビが設置されている飲食店で観戦しようという動きが見られるだろう。パブリックビューイングは中止となったが、飲食店など比較的狭い空間に大勢の人が集まれば感染リスクは高まる。飲食店はこれまで以上に衛生対策や、感染対策に注意しながら営業する必要がありそうだ。

_{出典：「日本トレンドリサーチによる調査」株式会社NEXER（https://www.nexer.co.jp）}

PV中止で飲食店での観戦・応援は増える？

オリンピックの開催が東京都内の新型コロナウイルスの感染拡大にどう影響するかを、東京大の仲田泰祐准教授（経済学）らのチームが試算した結果が朝日新聞デジタルに掲載されている。

「競技会場に来ない人たちが、パブリックビューイングや飲食店での応援などを通じて感染を広げる「間接的な影響」を抑えることがカギになるという。」

競技会場に来る人たちは会場から直帰することを徹底すればある程度感染を抑えられる。一方、競技会場に来ない人による間接的な影響を試算すると新規感染者の増加分は最大で数百人規模になった。間接的影響の方が大きいのは、対象が都民全体に広がるためだ。

_{引用：2021年6月18日朝日新聞デジタルより 五輪PVなどで最大数百人の感染増と試算「抑制が鍵」}

今後も感染状況によって飲食店へ営業時間や酒類の提供に関する要請が出る可能性が高い。急な発表に右往左往する期間がまだしばらく続きそうだ。政府や東京都、大会組織委員会の発表を注意深く見ておく必要がある。