焼肉・しゃぶしゃぶで増えるおひとりさま事情
以下に、主なおひとりさま向けをコンセプトとする焼肉としゃぶしゃぶの店舗をあげてみた。どちらも、多くの店がここ数年でオープンしている。おひとりさま需要の高まりに加え、肉業態ブームが追い風になった様子もうかがえる。
■おひとりさまをコンセプトにした業態
業態 | 店名 | 特徴 | 開業年・店舗数 |
---|---|---|---|
焼肉 | 焼肉どんどん | カウンター中心で一人用コンロを用意 | 2001年/7店舗 |
焼肉 | 炭火焼肉一丁目 | 一人焼肉対応のカウンター席を用意 | 2012年/1店舗 |
焼肉 | 焼肉 おおにし | カウンター焼肉専門 | 2014年/3店舗 |
焼肉 | 房家上野六丁目点 | 1Fは一人用コンロで立ち食いスタイル | 2015年/1店舗 |
焼肉 | ひとり焼肉 美そ乃 | 一人用コンロで立ち食いスタイル | 2016年/1店舗 |
焼肉 | 焼肉ライク | 一人用無煙ロースター | 2018年/21店舗 |
しゃぶしゃぶ | しゃぶせん 銀座B2店 | 一人一鍋のカウンター席 | 1971年/1店舗 |
しゃぶしゃぶ | SHAVU SHAVU(シェイブシェイブ) | 一人鍋スタイルがメイン | 2013年/1店舗 |
しゃぶしゃぶ | しゃぶしゃぶ 山笑ふ | 一人一鍋のカウンター席 | 2016年/3店舗 |
しゃぶしゃぶ | しゃぶしゃぶ れたす | 一人一鍋のしゃぶしゃぶ食べ放題 | 2017年/6店舗 |
しゃぶしゃぶ | ひとりしゃぶしゃぶ 「いち」 | 一人一鍋のカウンター席 | 2019年/1店舗 |
※店舗数は2019年12月現在。同ブランド名でひとり向け業態でない店舗は含めていない。
※「しゃぶしゃぶ・すき焼き」を掲げる店舗も便宜上、しゃぶしゃぶで統一。
ひとりで利用するには心理的なハードルが高い焼肉業態に、これまでもおひとりさま歓迎の業態がまったくなかったわけではない。だが、近年目立つのは、より特化した“おひとりさま専門業態”だ。
2018年8月、「1人焼肉が楽しめる新型ファストフード」というキャッチフレーズで登場したのが『焼肉ライク』(株式会社焼肉ライク:ダイニングイノベーションより分社化)。カウンター席にひとり専用無煙ロースターが備えられ、様々な種類の肉を50グラムから選ぶことができる。
従来の焼肉店がもつ“ひとりでは利用しづらい雰囲気・理由”をひとつずつ潰した、盲点をつく業態で開業から1年4ヶ月で21店舗を展開している。
一方、鍋もまた、通常2人以上で注文するのが慣例のメニューだ。ひとり用の専用鍋が用意され、取り分ける気兼ねもなく楽しめる店が、女性客を中心に人気を集めている。
飲食店がおひとりさまを取り込むメリット
おひとりさまが社会的に認知されてきたとはいえ、ひとりで外食するのは苦手だという声は相変わらず多い。専門店化とまではいかないまでも、店側がおひとりさま歓迎を示すことで、客は自分のペースで食事ができる。では、飲食店にとって、おひとりさまを呼び込むメリットとは何だろうか。
まずあげられるのが、回転率の良さだ。食事の合間の会話がなく、食べ終われば席を立つため滞在時間が短い。それに、ちょっと贅沢を楽しみたいという来店動機なら、高単価なメニューを選ぶ可能性も高まるだろう。また、席の調整が可能なので効率よく客を案内できる点もポイントといえる。4人掛けテーブルに2人客を通すより、仕切りを作れば4人を通すことができる。
■まとめ
・消費者のライフスタイルの多様化で、外食のおひとりさま需要は高まっている
・ひとりで利用しづらい業態ほど、心理的ハードルをさげると高い需要がある
・おひとりさま専用業態でなくとも、メニューやサービスでおひとりさまは呼び込める
おひとりさま向けにサービスを考えると、既存の他業態と比べ、設備面で多少費用がかかるかもしれない。だが、新業態を何もないところから開発する場合、それ以上に多大な費用と、長い準備期間が必要になる。おひとりさまへの工夫は、これまでリーチできていない顧客ニーズの掘り起こしにつながるだろう。たとえば女性客がひとりで入りづらい大衆酒場、男性客がひとりで入りづらいお洒落なイタリアンといった固定概念を取り払うヒントにもなりえる。
おひとりさまへ目を向けたアイデアが、新たなブームを生むかもしれない。ぜひ検討していただきたい。