焼きたてのコッペパンに惣菜系からデザート系まで30種の具材を、手際よく挟むスタッフの手さばきは大好評で、明るい売込みの声と共に震災の町に活力をあたえた。さまざまなメディアにも取り上げられ、注目を集めるようになったという。
以来、5年あまりの間にじわじわとコッペパン専門店は数を増やしていった。
「コッペパン専門店のメリットは、まさにモーモーハウス大槌と同じです。専門店化することで、まず設備投資が必要最小限に抑えられます。生地もコッペパン用のものだけでいいので効率的だし、店主1人が小規模な店で開業することもできます。
そして、挟む具材次第で他店との差別化がはかれ、ヴァリエーションを増やせばお客様も飽きません。クロワッサンやフランスパンなどに比べ作りやすく、未経験者でも本格的な修行は不要なので、異業種からの新規参入も目立ちます」
もっと個性的に、もっと驚きを。進化系はどこに向うのか
コッペパンブームを受け、老舗の和菓子店「とらや」や有名コーヒーチェーンの「コメダ珈琲店」なども専門店に参入している。
コッペパン専門店が増え始めると、さらに差別化をはかるべく、それぞれの店舗は先鋭化していく。特に小規模な店ほど、まだ他にないもの、より尖ったコッペパンを目指して、いわゆる進化系へと発展していった。
「2017年以降にオープンして話題になっている店舗で例をあげれば、典型的な進化系といえるのが、神奈川・相模原の『月刊アベチアキ』です。チキン南蛮やピリ辛タンタンメンといった今までにない具材や、女性店主ならではのチョコミントやグラノーラ、サングリアといったスイーツ系メニューも、かなり個性的です。
一方で、佐賀の『あんバター∞えんバター』は、あえてオーソドックスな、あんバターと塩バター(塩ミルクバター)がメインです。商品だけ見ると対照的にみえますが、これも進化系です。
佐賀は、これまでコッペパン専門店がなく馴染みも薄いので、メニューはわかりやすいものを。ただ、オーダーを受けてから具材を挟む点は多くの進化系とも共通していますし、作る際に“あんバター∞えんバター”と掛け声をかけるパフォーマンスがあるのが特徴です」
進化系コッペパンに共通するのは、一見すると何の店なのかわからない店舗デザインや、一度聞いたら忘れられないネーミングといった、一般的な町のパン屋のイメージにはない強烈な個性だ。そのポイントとなるのは「作り方」「売り方」「広め方」の3つだという。