システムにも味にもこだわり続け、原価率は50%以上に
しかし、フルオーダーメイドとなると、食材管理や調理の手間はもちろんコスト面でも相当な負担があるのではないだろうか。
「お客さん一人ひとりのわがままに応えるとなると、それだけの準備が必要です。トッピングひとつとっても、どれが出てどれが残るか読みが効かない。当然、残ったものは捨てなければなりませんからロスも生まれます。そこで、ワースト5を切り捨てて新しいものと入れ替えるなど、定期的にブラッシュアップしているところです。また、一杯ずつ調理の仕方が異なるカスタムオーダーだけに、オープン当初はクレームが殺到しました。厨房の設計ミスで調理の流れが悪く、提供が追いつかなかったんです。自分だけの一杯を待つワクワクドキドキ感が、長時間待たされることでイライラに変わってしまった。これはマズいということで数日間クローズして厨房ごと入れ替え、オペレーションを改革しました」
麺、スープ、トッピングの売れ行きなど不確定要素が多く、読みが難しいオーダーメイドラーメン。厨房の入れ替えは想定外だったにしろ、ロスは避けて通れないというのが現実だ。さらに、システムにも味にもこだわり続けた結果、原価率はラーメン店の業界水準を大きく上回る50%超となっているという。
「原価率の高さをアピールするつもりなど毛頭ありませんし、お客さんに公表するものでもありません。儲けよりも、お客さんのわがままとワクワク感が詰まった一杯のラーメンづくりに重きを置いた結果です。でも、『うちはこれだけのものを出しているんだ』と、スタッフには自負として心に持っていてほしいですね」
客のわがままに応えるための苦労や努力は、並大抵のことではないだろう。しかし、「これでいい」という区切りがなく常に進化を続けなければならないため、緊張感と向上心がスタッフの間に醸成されることは、店にとって大きなメリットだといえる。業界の常識を覆し客のわがままを叶えようとする店の躍進は、今後の飲食店の在り方にも大きな影響を与えそうだ。