森永乳業は50年以上にわたり、ヒトの腸内にすみ、様々な健康効果をもたらしているビフィズス菌の基礎研究を行っています。また、長野県松本市との包括連携協定※1のもと、機能性素材の臨床研究を長年実施し、その成果を市民の皆様の健康づくりや当社の素材開発に活用しています。
今回、松本市立病院との共同研究※2により、ヒトのビフィズス菌M-63の摂取が離乳期以降の乳幼児の排便習慣を改善し、腸内環境に良好な作用を及ぼすことが確認されました。さらに、感染症リスクが相対的に高い集団においては、ビフィズス菌M-63の摂取が風邪様症状の発症日数等の減少と関連することも示唆されました。なお、本研究成果は科学雑誌「Pediatric Research」に2026年4月29日に掲載されました※3。
1.研究背景
乳幼児期は、身体の発育・発達が著しく進むとともに、腸内環境も母乳や離乳食の影響を受けて急速に変化・成熟する、変動性の高い時期として知られています。さらに離乳の進行に伴い、排便トラブルや感染症リスクの上昇など、健康課題が生じやすくなる時期でもあります。
こうした背景から、腸内環境を整えることが、これらの課題への有望なアプローチとして注目されています。本研究では、離乳期以降の健常な乳幼児を対象に、ビフィズス菌M-63の摂取が、腸内環境や健康状態に与える影響を探索的に評価しました。
2.研究方法
・対象者:生後5か月以上3歳未満の健常な乳幼児100名
・試験デザイン:ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験
・試験食品:1日当たり「ビフィズス菌M-63」50億個を含む粉末、または「ビフィズス菌M-63」を含まないプラセボ粉末を8週間継続摂取
・評価項目:排便状況、腸内細菌叢、便中短鎖脂肪酸※4、健康状態
ビフィズス菌M-63とは
Bifidobacterium longum subsp. infantis(以下、B. infantis)に属する、乳児の腸内から発見された当社が独自に研究を行うビフィズス菌株です。
B. infantisは、ヒト乳児の腸内にすむビフィズス菌のなかでも特に母乳との相性が高く、腸内で有益な代謝産物を産生することで、免疫の発達や感染リスクの低減に寄与すると考えられています。ビフィズス菌M-63は、母乳中に含まれるヒトミルクオリゴ糖の利用能が高いことや、生後早期の摂取により腸内環境を良好にし、免疫機能や排便習慣に有益な作用をもたらすことが報告されています※5, 6。また、米国でのFDA GRAS (Generally Recognized as Safe) ※7取得や、中国での新食品原料※8に登録されるなど、海外でも高い安全性が認められています。

ビフィズス菌M-63
3. 研究結果
●ビフィズス菌M-63摂取群では、プラセボ群と比較して下痢発症日数が減少し(図1)、正常な排便のあった日数が増加しました(図2)。これらの結果から、離乳期以降の乳幼児に対するビフィズス菌M-63の整腸作用が示唆されました。
●母乳摂取状況で層別化した解析では、継続的に母乳を摂取していた集団において、ビフィズス菌M-63の摂取によりB. infantisの割合が顕著に増加しました(図3)。一方で、母乳を摂取していない集団では、便中短鎖脂肪酸総濃度が有意に増加しました(図4)。
●さらに事後的な探索的解析の結果、「低月齢」「兄弟がいる」など、感染症リスクが相対的に高い集団では、ビフィズス菌M-63摂取が抗生剤・生菌製剤の使用日数や風邪様症状の発症日数の減少と関連することが示唆されました(図5)。

図1: 試験食品摂取期間中の下痢発症日数 ※1日の平均的な便性状が、ブリストル・スケールにおいて「6または7」であった日数をカウント

図2: 正常な排便のあった日数の割合 ※2週間ごとに、「正常な排便のあった日数/排便のあった日数」を算出)

図3: 母乳を摂取している集団における腸内でのB. infantisの割合の増加

図4: 母乳を摂取していない集団における便中短鎖脂肪酸総濃度の増加(試験食品摂取前後の変化量)

図5: 感染症リスクが相対的に高い集団での医薬品等使用日数、風邪様症状の発症日数の比較
* p < 0.05, *** p < 0.001は、プラセボ摂取群と比較して統計学的に有意差があることを示しています。
(† p < 0.1は、有意な傾向があったことを示します。)
§ p < 0.05, §§§ p < 0.001は、摂取前と比較して統計学的に有意差があることを示しています。
4.今後の展望
今回の結果より、ビフィズス菌M-63はこれまでに報告されてきた離乳前の乳児に加え、離乳期以降の乳幼児においても腸内環境を整え、健康状態をサポートする可能性が示唆されました。
森永乳業はこれからも、ビフィズス菌の特長と科学的エビデンスをわかりやすく発信し、製品応用や海外展開を通じて、より多くの人々の健康に貢献してまいります。
<参考情報>
ヒトの腸内に生息するビフィズス菌(Human- Rresidential Bifidobacteria; HRB)
ビフィズス菌は、現在までに100種類以上発見されています。しかし、ヒトの腸内にすむビフィズス菌とヒト以外にすむビフィズス菌では、基本的に種類が異なります。森永乳業は特にヒトの腸内にすむビフィズス菌にこだわって研究開発を行っています。
また当社は、ビフィズス菌の中でもヒトの腸管に特徴的に生息する種を「ヒト常在性ビフィズス菌(Human-Residential Bifidobacteria、HRB)」と命名しました。ヒトの腸内にすむビフィズス菌は、1500万年以上にわたり、ヒトの祖先と共に進化を遂げてきたことが示唆されています。こうした長い共進化の過程は、HRBがヒトの健康にとって極めて重要な役割を担ってきたことを示す一つの証拠だと考えています。
※1 長野県松本市との包括連携協定
2021年に松本市と「包括連携協定」を締結しました。機能性素材の臨床試験をはじめ、地域社会との共生とともに、地域の皆さまの健康を支える取組みを進めております。
https://www.morinagamilk.co.jp/release/newsentry-3776.html
※2 長野県松本市立病院との共同での研究
当社は、2019年より、松本市立病院、松本市とともに、「赤ちゃんの健康に関する調査と松本市民の出産育児を支援する取組み」を開始しました。
https://www.morinagamilk.co.jp/release/newsentry-3239.html
※3 論文タイトル・著者
Arai S, Hiraku A, Nakata S, et al. Effects of Bifidobacterium infantis M-63 on Gut Environment and Bowel Function during Weaning: RCT. Pediatr Res. Published online April 29, 2026.
https://doi.org/10.1038/s41390-026-04960-2
※4 短鎖脂肪酸
ビフィズス菌などの腸内細菌が、オリゴ糖や食物繊維をエサとして大腸で産生する代謝産物で、「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」などを指します。短鎖脂肪酸は、大腸上皮細胞の主要なエネルギー源となるほか、腸内環境の維持や免疫機能への良好な働きが報告されており、健康に役立つ成分として注目されています。
※5 引用文献
Hiraku A, Nakata S, Murata M, et al. Early Probiotic Supplementation of Healthy Term Infants with Bifidobacterium longum subsp. infantis M-63 Is Safe and Leads to the Development of Bifidobacterium-Predominant Gut Microbiota: A Double-Blind, Placebo-Controlled Trial. Nutrients. 2023;15(6):1402. Published 2023 Mar 14. doi:10.3390/nu15061402
※6 引用文献
Xu C, Odamaki T, Hiraku A, et al. Anti-inflammatory effects of Bifidobacterium infantis M-63 during the early postnatal period in term infants. Pediatr Res. Published online July 18, 2025. doi:10.1038/s41390-025-04263-y
※7 GRAS (Generally Recognized as Safe)
米国にて新規に使用される食品原料に関して、該当素材の食品素材としての安全性を専門家が評価し、素材の特徴、製造工程、品質管理、製品スペック、使用実績、臨床試験結果等の項目が検討されます。GRAS は米国内で食品の原料となる素材を販売する際に必要となります。ビフィズス菌M-63は、2022年に一般食品向け用途と乳児向けの用途でGRASを取得しました。
※8 新食品原料登録
中国で伝統的な食習慣を持たない食品原料を中国国内で販売するために必要な制度です。特に3歳未満を対象とした乳幼児用食品に使用可能な原料は、食品原料としての特性を備え、栄養面や健康面と共に、安全面における厳しい基準を満たす必要があると決められています。ビフィズス菌M-63は、2024年に新食品原料に登録されました。









