コメ高騰で変わる食卓、ヨーグルトは“食事”になり得るか 味・におい・食感の科学的データから見る製品ごとの食味特性

掲載日: 2026年04月20日 /提供:味香り戦略研究所

~日本の主要4ブランドを分析、新しい可能性を探る~

米の価格は2024年夏頃から上昇し、2025年も4,000円を上回る状況が続きました※1。値頃感を欠く中で、米の代わりに食卓への出現回数が最も増えたのが「ヨーグルト」でした※2。こうした食卓の変化を背景に、「食」を科学する株式会社味香り戦略研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小柳道啓、以下「味香り戦略研究所」)は、ヨーグルトを「味」・「香り」・「食感」の観点から分析し、食味の構造を検証しました。さらに、今回測定した分析データに基づき、ヨーグルトの新たな役割とその可能性を提案します。
サマリー
◆ヨーグルトの食味構造は多様であり、特に酸味(味覚)・酸のにおい(嗅覚)のバランスと食感の相互作用により、製品ごとの個性が形成されることが示唆された
◆ヨーグルトはデザート用途にとどまらず、特性に応じて食事の中で役割を持たせることができる食品であり、食味に応じた組み合わせによって可能性が広がると考えられる
   ・明治ブルガリアヨーグルトLB81プレーンは、
    酸味の立ち上がりとほどける食感が特徴であり、“少量の塩”を加えることで
    味わいが整う
   ・森永ビヒダスプレーンヨーグルトは、
    発酵由来のにおいと粘りが特徴であり、“スパイス”によって風味に変化が生まれる
   ・雪印メグミルクナチュレ恵は、
    全体的にバランス型であり、“ナッツ”や“穀物”によってアクセントが加わる
   ・小岩井生乳100%ヨーグルトは、
    おだやかな味わいとなめらかな食感が特徴であり、
    “柑橘ピール”や“ハーブ”によって印象が引き締まる

米の価格高騰で主食構成が変化する中、パンや麺よりもヨーグルトの出現頻度が高かったのは、ヨーグルトが炭水化物の代替ではなく、調理負荷の低さ、量や味、食べ方の自由度の高さが「食事に取り入れやすい特性」として、米を減らした食卓に無理なく組み込まれた可能性が推測されます。
日本では、ヨーグルトは1970年代以降に日常食品として定着しましたが、その背景には複数の要因が作用したと考えられます。元々、日本の食文化には酢や発酵食品などの酸味を含む食品が広く存在したことから、酸味への文化的耐性が基盤として存在していたことに加えて、初期市場ではプレーンタイプにフルーツなどの甘さをプラスすることで、糖酸バランスによって酸味への抵抗が緩和されたことにより、幅広い年齢層に受け入れられた可能性が考えられます。さらに、整腸・腸内環境改善といった健康イメージが訴求されたことも認知拡大を後押しし、これらが複合的に作用した結果、ヨーグルトは日本人の食卓に自然に組み込まれていったのではないでしょうか※3。
本分析では、ヨーグルトが持つ「食事に取り入れやすい特性」を、味・におい・食感の観点から構造的に捉え、その可能性を検証しました。
ヨーグルトの食味構造 -味・におい・食感の分析結果より-
今回の分析では、4社のプレーンヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルトLB81プレーン、森永ビヒダスプレーンヨーグルト、雪印メグミルクナチュレ恵、小岩井生乳100%ヨーグルト)を対象に検証を行いました。
■ヨーグルトの味わいは、「立ち上がり」と「余韻」によって特徴づけられる
味覚センサを用いて4商品を比較した結果、ヨーグルトの味わいは単なる強弱ではなく、「酸味の立ち上がり」と「余韻」という時間的なバランスによって特徴づけられることがわかりました。【図1】
※基準(ゼロ)は4商品の平均値

【図1】ヨーグルトの味バランス

〈明治ブルガリアヨーグルトLB81プレーン〉口に入れた瞬間の酸味の立ち上がりは強いが、後味はすっきり
〈森永ビヒダスプレーンヨーグルト〉先味が穏やかで余韻が持続する傾向
〈雪印メグミルクナチュレ恵〉突出した味わいがないバランス型
〈小岩井生乳100%ヨーグルト〉先味が穏やかで、後味によって全体の印象を補うタイプ

■ヨーグルトの“すっぱさ”は、味だけでなくにおいによって変わる
GC-MSによる香気成分分析の結果、ヨーグルトのにおいの印象は酸のにおいと乳由来のにおいのバランスによって変化し、これが味と相まってヨーグルトの味わいの特徴をなす酸味の印象が変わることが示唆されました。
※ヨーグルトの特徴的な香気成分12項目を抜粋し主成分分析結果として比較した。【図2】

【図2】主要香気成分の主成分分析結果

〈明治ブルガリアヨーグルトLB81プレーン〉酢酸や酪酸由来の刺激的な酸のにおいや発酵由来のにおいが穏やかなため、相対的に乳由来のまろやかなにおいが際立つ傾向
〈森永ビヒダスプレーンヨーグルト〉酢酸や酪酸、発酵由来のにおいが強いため、全体的に酸の印象が強い傾向
〈雪印メグミルクナチュレ恵〉酢酸由来のシャープな酸のにおいとフルーティーなにおいが特徴
〈小岩井生乳100%ヨーグルト〉乳由来の甘いにおいと穏やかな酸のにおいの共存が特徴

■ヨーグルトの食感は「構造・崩壊・流動」の違いにより、口中での“ほどけ方”や“広がり方”として知覚される
テンシプレッサーおよびレオメータによる分析から、ヨーグルトの食感は単に硬い、やわらかいだけでなく、構造保持からの崩壊性、さらに流動への変化の仕方によって、口中での“ほどけ方”や“広がり方”として認知されると考えられます。
※テンシプレッサーとレオメータの分析結果8項目を抜粋し主成分分析結果として比較した。【図3】

【図3】食感の主成分分析結果

〈明治ブルガリアヨーグルトLB81プレーン〉口に入れた時の存在感が口中でほどけるように崩れていくタイプ
〈森永ビヒダスプレーンヨーグルト〉崩れるというより変形しながらまとまり感が持続する傾向
〈雪印メグミルクナチュレ恵〉なめらかだが、厚みのある重めの食感が持続するタイプ
〈小岩井生乳100%ヨーグルト〉流動性の高いクリーミーな食感が特徴

■ヨーグルトの個性は、酸味(味覚)・酸のにおい(嗅覚)のバランスと食感の相互作用により形成される
各ヨーグルトの食味特性を統合的に捉えると、その個性は〈味〉酸味の立ち上がり、〈におい〉酸のにおいや乳由来香のバランス、〈食感〉構造の崩壊や流動の仕方といった要素の重なり合いによって形成されていることが示唆されました。
※味・におい・食感分析の結果から、特徴的な項目を抜粋し比較した。【図4】
※標準化データ(平均0、分散1)を使用しており、数値は各項目間の相対的な比較を示すものである。

【図4】ヨーグルトの食味バランス(特徴的な項目を抜粋)

〈明治ブルガリアヨーグルトLB81プレーン〉味としての酸味は強い一方、酸や発酵由来のにおいは控えめで、味とにおいが互いに補完し合うことで風味のバランスがとれている。さらに、構造の崩壊が速いため、口中での味の滞留時間が短く、結果として「すっきりした後味」として認識されると考えられる
〈森永ビヒダスプレーンヨーグルト〉味として感じる酸味は穏やかだが酸や発酵由来のにおいが強い傾向。粘りがあり、構造が持続することで風味が口中に長く留まるため、味わいの余韻が長いのが特徴
〈雪印メグミルクナチュレ恵〉酸味と酸のにおいが共に中程度で、食感も急激な崩壊を伴わずなじみながら持続する傾向であり、比較的バランス型
〈小岩井生乳100%ヨーグルト〉味・においが共に穏やかで流動性と粘りが主体であることから、控えめな風味がなめらかに口中に広がり、後味によって全体の印象が補完されると考えられる

データから検証するヨーグルトの可能性
■デザートだけじゃない、ヨーグルトの新しい役割とは
ヨーグルトの食味を構成する要素の中でも「酸味」と「酸のにおい」は中心的食味といえるでしょう。単なる「すっぱい」ではなく“味のバランスをとる”“香りを調和させる”などの役割を持ち、ヨーグルトらしさを決定づける重要な要素だと考えられます。酸味は本来、腐敗や未熟を想起させるため本能的に警戒されやすい味である一方、食経験を通じて「さわやかさ」や「さっぱり感」として受け入れられ、料理のアクセントや風味に奥行きを与える役割を担っています。
ヨーグルトの酸味は、レモンや酢類のような刺激的な味ではなく、比較的“まろやか”なため、料理全体に自然に溶け込みやすく、乳由来の香りが風味に奥行きを与えるのも特徴の一つです。だからこそ、ヨーグルトはサラダから肉料理まで、幅広い食事に合う可能性があると考えられます。
■食味特性に応じた組み合わせの可能性

【図5】各社ヨーグルトとの相性(イメージ)

〈明治ブルガリアヨーグルトLB81プレーン+塩〉酸味の立ち上がりが強く口中で素早くほどける食感を持つため、味の滞留は短く「軽やかな後口」のある味わいに、少量の塩を加えることで立ち上がりのシャープさが緩和され、全体的にすっきりとした印象に変化することが示唆される
〈森永ビヒダスプレーンヨーグルト+スパイス〉発酵由来のにおいと粘りによる余韻の持続が特徴なため、スパイスを加えることで、香りに輪郭と奥行きが生まれ、発酵由来の印象がより調和されることが期待される
〈雪印メグミルクナチュレ恵+ナッツ〉味・におい・食感がバランスよく整っているため、ナッツや穀物を加えることで香ばしさや食感のアクセントが付与され、全体にメリハリが生まれると考えられる
〈小岩井生乳100%ヨーグルト+柑橘ピール・ハーブ〉穏やかな味わいとなめらかな食感が特徴であり、柑橘やハーブの香りを加えることで風味に輪郭が生まれ、全体の印象が引き締まると考えられる

まとめ
本分析により、ヨーグルトの食味は「酸味(味覚)」「酸のにおい(嗅覚)」「食感(構造・崩壊・流動)」の相互作用によって形成されており、それぞれのバランスの違いが製品ごとの個性を生み出していることが明らかになりました。さらに、この食味構造の違いは、単なる“おいしさの差”にとどまらず、組み合わせる食材や調理法によって新たな価値を引き出せる可能性を示唆しています。
これまで、ヨーグルトはデザートとしての位置づけが強い食品でしたが、食卓環境の変化とともにその役割は拡張しつつあると考えられます。すなわち、ヨーグルトは“単体で完結する食品”から、“食事の中で組み合わせて活かす食品”へと変化し、食事の一部として取り入れることで、その特性をより広く活用できる可能性が期待されます。
本分析で示したように、科学的手法を用いた味わいの数値化を行うことで「ヨーグルトはデザートである」という固定観念を乗り越え、根拠をもって新しい食べ方、ひいては食における新しい役割を定義し、消費者に伝えることが可能になります。味香り戦略研究所は、米をはじめ、コーヒー、カカオ、オレンジなどの価格変動や供給不安が注目される中、食の分析を通じてその価値を検証・可視化し、市場や消費者ニーズの変化に対応しながら、食産業の持続的な発展に寄与してまいります。

■分析概要
《分析サンプル》
・明治ブルガリアヨーグルトLB81プレーン(400g)
・森永ビヒダスプレーンヨーグルト(400g)
・雪印メグミルクナチュレ恵(400g)
・小岩井生乳100%ヨーグルト(400g)
《分析機器》
・味覚分析:味覚センサ[TS-5000Z]
・におい分析:GC-MS
・食感分析:テンシプレッサー、レオメータ
■参考
※1 農林水産省 スーパーでの販売数量・価格の推移(KSP-POSデータ全国等)(2026年4月3日)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/ksppos.pdf
※2 株式会社ライフスケープマーケティング「お米の代わりに何を食べますか?
~お米を減らした世帯で増加した意外なメニューとは~」(2025年5月9日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000161385.html
※3 平田昌弘 日本乳食文化の型と普及形態の類型分類 食文化研究会誌 No.18 9~19(2022)

味香り戦略研究所について

「食」を科学する味香り戦略研究所は、味・香り・食感等の「おいしさ」の見える化をコア技術に持つソリューション提供企業です。15万件超の味覚データベースを構築し、それを基に独自の嗜好性診断アルゴリズム(特許第7448274号)、フードペアリングロジック(特許第7398855号)を開発。食品開発・マーケティング支援など、食にまつわるさまざまな課題に対応するフードデジタルソリューションを提供し、パーソナライズド提案技術の社会実装にも積極的に取り組んでいます。

【会社概要】
株式会社 味香り戦略研究所【https://mikaku.jp/
本社所在地:東京都中央区新川1-17-24 NMF茅場町ビル8F
代表取締役社長:小柳 道啓
設立年:2004年9月
事業内容:フードデジタルソリューション事業

本件に関する問い合わせ先
味香り戦略研究所 コンサルティング事業部
TEL 03-5542-3850 / 問い合わせフォーム

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