有機農業に関する国内外の文献や調査データを統合・分析した、日本唯一*の「有機農業白書 Vol.1」を本日発表。

更新日: 2024年09月14日 /提供:坂ノ途中

~全国の有機農業に取り組む生産者へ大規模なアンケート調査も実施し、経営が成り立つ条件を明らかに~


坂ノ途中の研究室

株式会社坂ノ途中(本社:京都市南区、代表取締役:小野邦彦)は、有機農業の生産・流通・消費における現状を把握し、将来の展望を示した「有機農業白書 Vol.1 ~現状把握から将来展望へ~」を本日発表しました。

これまでも有機農業への意識・意向調査や有機生産者の経営実態などの調査は行われてきましたが、本白書では、過去の調査データや国内外の文献を統合・分析しています。また、有機生産者の経営が成り立つ要因を明らかにするため、全国の有機生産者へ大規模なアンケート調査も実施しました。
本白書が、有機農業を広げるために行動する人たちの羅針盤となることを目指しています。

有機農業白書の特設ページはこちら

* 有機農業の生産・流通・消費に関する、国内外の文献やデータをインターネット調査(期間:2023年12月~2024年8月/自社調査)

背景
2021年に農林水産省が発表した、持続可能な食料システムの構築を目指す「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに国内の耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%へ拡大する目標を掲げています。また、有機食品の市場規模は年々拡大していることがわかっています(白書4章で紹介)。

このような流れをふまえ、有機農業の推進に取り組む地方自治体(※1)や有機農業への参入を検討する企業が増えていますが、はじめのハードルが、有機農業の現状を把握できず何から着手したらよいかがわからないことです。

現在、耕地面積に占める有機農地の割合は0.7%(※2)と少なく、有機農業に関する情報やデータも十分得られない状況です。また、得られたとしても散在しており、集約や統合ができていません。

坂ノ途中は創業した2009年から、環境負荷の小さな農業の普及を目指して、有機栽培された農作物を販売してきました。西日本を中心とした全国の生産者約400軒と提携しており、そのうち約8割は新規就農者です。また、彼ら彼女らのお野菜を詰め合わせてお届けするサブスクリプションサービスは、全国1万以上のご家庭でご利用いただいています。

これらの経験から得られた知見を生産者や社会に還元するため、2021年に「坂ノ途中の研究室」というリサーチチームを立ち上げました。2023年12月に発表した「有機農業白書 Vol.0(※3)」では、有機農業を広げる妥当性と必要な支援についての考えを公開しています。

今回の「有機農業白書 Vol.1」では、様々な調査データや文献から有機農業の現状を把握し、将来への展望を示しました。実際にアンケート調査(※4)も行い、有機生産者の売上別の経営状況や課題も分析しています。

(※1)「オーガニックビレッジ宣言」に取り組む自治体は、令和6年8月時点で129市町村。農林水産省が掲げた令和7年までに100市町村の目標を前倒しで達成しています。
農林水産省.(令和6年8月).「有機農業産地づくり推進事業」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/attach/pdf/organic_village-82.pdf
(※2)農林水産省.(令和6年7月).「有機農業をめぐる事情」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/index.html#organic-farm
(※3)坂ノ途中の研究室.(2023年12月).「有機農業白書 Vol.0 ~有機農業を広げる妥当性と必要な支援~」
https://www.on-the-slope.com/corporate/wp-content/uploads/2023/12/OrganicAgricultureWhitePaper_0_20231208.pdf
(※4)2024年1月31日~4月12日に坂ノ途中の研究室が「有機農業に関する基礎調査」を実施。N=410(坂ノ途中の提携生産者196名、そのほか全国の有機農業に取り組む生産者214名)

有機農業白書について
<ダイジェスト>
- 耕地面積に占める有機農地面積割合の都道府県ランキングは、田、普通畑、果樹という区分によって、また、有機JAS認証を受けていないものを含めるかどうかで大きく変化する。(表)
- 有機生産者が経営成立するための条件として「売上が500万円以上であること」が挙げられる。(図)さらに、「農業関連事業に頼るより農業自体に注力するほうが経営が成り立ちやすいこと」と「売上階級によって経営の在り方が変化すること」も明らかになった。
- 2017年から2022年にかけての日本の有機食品市場の伸び率は、世界の中でもトップクラス。
- 欧州連合の過去の経緯から、2050年の国内の耕地面積に占める有機農地の割合は10%強になると、坂ノ途中では予測している。


表.有機農地面積(耕地面積に対する割合)による都道府県ランキング(田の場合)※有機JASは「田」、非JASは「水稲」として集計されたデータを用いている 出所:農水省データ、楠田(2023)を基に坂ノ途中が作成


図.売上階級ごとの経営成立状況 出所:坂ノ途中


本白書のダイジェスト版(無料)には、上記の他に序章とまとめの章(6章)を掲載しております。
ダイジェスト版をご希望の方は、下記よりお申込みください。
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コメント


坂ノ途中が白書を出版するのは、昨年に続いて2回目です。今回の執筆では、昨年よりも希望を感じることが多くありました。昨年に比べて、より多くの情報が各方面から発信されていたからです。
そうした情報のおかげで、今回の白書は、有機農業推進に取り組む方々の意思決定を助けるものになっていると確信しています。ぜひご覧になってください。



●小松 光(Hikaru Komatsu)
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。大学・研究機関(東京大学、九州大学、京都大学、台湾大学など)で教育・研究に従事。世界銀行、国際連合教育科学文化機関などのアドバイザーも務めた。2023年9月に坂ノ途中に入社。坂ノ途中の研究室で、坂ノ途中の事業の文明論的意味について考えている。

坂ノ途中の研究室

坂ノ途中の研究室

持続可能な農業と社会の実現に向けて、方向性を同じくするステークホルダーの方々と協力しながら環境負荷の小さな農業を広げていくチームです。大学で教育・研究を行っていた研究者や、シンクタンク出身者、マーケターなど、幅広いメンバーで構成されています。

<実績>
- 農業分野における調査や企画(奈良県三宅町)
- オーガニック農業者への研修・育成事業(滋賀県)
- 有機農業の機械化の可能性を検討する共同プロジェクト(KOBASHI HOLDINGS)
- 事業構想大学大学院・専任講師の田村典江氏と、有機農業の生物多様性保全への貢献について調査(総合地球環境学研究所のプロジェクトに参画)
- 査読付き論文の出版(Komatsu H, Rappleye J. (2024) Exploring inconsistencies in environmental impact assessments of organic farming. Acadmia Environmental Sciences and Sustainability 1(1). https://doi.org/10.20935/AcadEnvSci6192
- 学術雑誌を出版する「Emerald Publishing」より、小松光が「Outstanding Paper in the 2024 Emerald Literati Awards」を受賞


坂ノ途中の研究室URL:https://www.on-the-slope.com/lab/
note:https://note.com/sakanotochu_lab

株式会社坂ノ途中
季節のお野菜を詰め合わせた「旬のお野菜セット」を中心に、環境負荷の小さな農法で栽培された農産物や加工品を販売。少量で不安定な生産でも品質が高ければ適正な価格で販売できる仕組みを構築することで、環境負荷の小さい農業を実践する生産者の増加を目指しています。

代表者:小野 邦彦
本社所在地:京都市南区上鳥羽高畠町56
設立日:2009年7月21日
資本金:50百万円
会社URL:https://www.on-the-slope.com/corporate/

京都市「これからの1000年を紡ぐ企業」、経済産業省「地域未来牽引企業」「J-Startup Impact」など、受賞多数。

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