コンビニ業界の物流の特徴
各チェーンとも店舗スペースを必要最小限で営業する傾向にあるために、店舗にはバックヤードと呼べるスペースがほとんどありません。そのため、商品を不足しない程度に頻繁に配送する必要があります。さらに、販売のチャンスロスを最小化することに重点が置かれ、各店舗の納品設定時間も誤差が許される範囲が前後30分程度であるなど、その他の食品物流と比べても厳しい時間管理が求められているといえます。
配送に関しては、チェーンによって若干違いがありますが、チルド、米飯、フローズン、常温など食品ジャンルごとに専用の共同配送センターで管理し、様々なメーカーの商品を混載で各店舗へ配送しています。
それでは、ある大手チェーンを例に温度帯ごとに特徴を見ていきましょう。
チルド配送と米飯配送について
はじめにチルドと米飯の配送からご紹介します。
実はこの2つがコンビニ物流の大きな特徴を作り出しているのです。
まずチルド配送ですが、管理温度は5℃で、主に牛乳やデザート・惣菜などを1日に2~3回の頻度で365日配送しています。次に、米飯配送ですが、管理温度は20℃前後で、弁当や焼き立てパンなどを1日に4回、365日配送しています。
実はこのチルド食品と米飯は同時に配送されることがあるため、使用する車両は5℃から20℃までの広い温度帯に対応でき、しかも同時に2つの温度が管理できるように2層式と呼ばれる仕様になっている必要があります。そして1日に4回全店を回ることを考えると、1コースにかけられる時間は6時間以内になりますから、既存センターの立地によっては、これを理由に出店できないエリアも発生します。
さらにデザート工場や米飯工場の製造時間も、この配送スケジュールから逆算して製造されています。特に米飯類は販売時間がシビアなことから、配送に特化できる通過型(スルー型)のチルドセンターを米飯工場内に併設してより効率的な輸配送を追求しています。
他の食品業界では、物流事情が出店計画や製造計画にまで大きく影響する例はあまり多くありません。これはコンビニ業界独特のシステムと言えるでしょう。
フローズン配送について
次にフローズン配送です。管理温度は-20℃で、冷菓・ロックアイス・冷凍食品を配送しています。季節や立地によって若干変わりますが、週3回~7回の配送頻度になります。センターは在庫型で、季節によって物量の変動があるためにスペースに余裕があるスペックになっています。
最近は、店頭で販売されるアイスコーヒー用のカップ入り氷の需要が急増しており、繁忙期の物量の差異に大きな影響を与えているようです。
常温食品配送について
最後に常温食品配送ですが、温度管理こそ無いものの、菓子、酒類、加工食品、雑貨など幅広いジャンルに対応した配送が求められており、物流コストが最も厳しいカテゴリーと言われています。基本的に週3回の配送ですが、ソフトドリンクやビールなどは週7回の配送対応をしています。常温食品は基本的に賞味期限に余裕のある商品が多いことから在庫型のセンターで管理されており、多品種を扱うために比較的規模の大きなセンターが多くなっています。
コンビニ業界の物流の今後の課題
近年は既存店の売上が減少しているため、新規出店や新たなサービスで売上を上げるためにチェーン間の競争が激化しています。例えば、駅構内やサービスエリア、病院内など今までとは違った場所への出店も売上アップの戦略のひとつですが、物流に関していえば、ラッシュ時の時間管理や、配送に特殊な配慮が必要になることも多く、そうした課題に臨機応変に対応できるような体制作りが必要になります。
また今後は、各店舗で個人向け宅配物の受け取りができるオムニチャネルサービスが本格化する予定です。それが進むことで店舗が物流インフラとしての機能を持つようになるでしょう。食品というカテゴリーが持つ特性に配慮しながら、新たなサービスに対応できるシステムの構築が求められていくことは間違いありません。
いかがでしたでしょうか。
チェーンによって違いがありますが、今回はコンビニの物流で最先端のものをご紹介させていただきました。世界一とも言われる日本のコンビニ物流ですが、これからの進化にも注目していきたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。