「発注業務は電話かFAX」という当たり前意識
多くの飲食店では、営業終了後に電話やFAXで発注を行なっている。一見、当たり前の方法だが改善すべき点も多い。例えば、残業で時間に追われるように業務をこなすと、発注忘れといった「うっかり」が起きやすい。そんな余裕のない状態での発注は、食材の間違いや過剰発注、在庫切れなどにつながる可能性もある。
毎日忙しい営業が続き心身に疲れが溜まっていては、業務の改善を検討する時間やタイミングもない。結局、いつまで経っても業務が改善されず、時間や労力を無駄にすることになってしまう。
飲食店の発注方法は、電話やFAXだけに限らない。店舗の業態や規模によっても最適な方法は違う。以下に、さまざまな発注方法をまとめた。それぞれ、どんなメリット・デメリットがあるのか、具体的に見ていこう。
発注方法 | 電話 | FAX | メール (PC/モバイル) | EDI (専用端末) | クラウドシステム (PC/モバイル) |
---|---|---|---|---|---|
導入しやすい | ○ | ○ | ○ | × | △~○ |
即時発注できる | ○ | × | × | × | × |
24時間発注できる | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
どこでも発注できる | 固定電話× 携帯電話〇 | × | PC× モバイル○ | ○ | PC× モバイル○ |
正確に伝達できる | △ | △~○ | △~○ | ○ | ○ |
履歴管理しやすい | × | ×~△ | ×~△ | ○ | ○ |
モバイル:スマートフォン、タブレット端末など
電話発注のメリット・デメリット
<メリット>
・リアルタイムで相手と会話しながらやり取りできる
<デメリット>
・言い間違いや聞き間違いなどの人的ミスが起こりやすい
・金額や数量集計などの履歴管理しにくい
電話では取引先とすぐにコミュニケーションを図れ、価格が変動しやすい食材の情報も入手できる。一方できちんとした記録に残らないと、「言った」「言ってない」と、責任の所在が不明瞭になり、関係性の悪化につながりかねない。紙にメモをする手段もあるが、転記ミスなどのリスクは残る。
また、数量・規格などの詳細な情報もなく商品名の一部だけで発注すると、誤発注の原因にもなる。対策として会話内容を録音したとしても、手間や管理を考えると現実的でなく、根本的な解決にはならない。
FAX発注のメリット・デメリット
<メリット>
・24時間いつでもデータ送信が可能
・送信記録が残る
<デメリット>
・数量や規格違い商品の間違いが起こりやすい
・金額や数量集計などの履歴管理しにくい
・誤送信やエラーで発注書が届いていないリスクも
FAX発注は取引先の営業時間に関わらず送信できるので、業務を後回しにするなど融通が効きやすい。またFAXは多くの企業で普及しているので、取引先が対応していないというケースも少ない。
しかしFAX送信は一方通行なので、送り先間違いやエラーで送信できていない場合も、取引先から指摘されるまで気づけない。結果として仕入れが間に合わない、取引先に迷惑をかけてしまうという危惧もある。
電子メール発注のメリット・デメリット
<メリット>
・パソコンやスマホで発注管理できる
・エラーにすぐ気づける
<デメリット>
・金額や数量集計などの履歴管理しにくい
送信記録が残り、24時間いつでも発注できるのはFAXと同様のメリットだ。また、送信ミスがあればすぐにエラーメールが返ってくるので気付きやすい。用紙などの消耗品代がかからずコストも抑えられる。
しかし、パソコンやスマホのメールソフトは画面の視認性があまり高くないこともあり、過去のメールなどは探すのも一苦労だ。
EDI発注のメリット・デメリット
<メリット>
・効率よく発注できる
・発注ミスを防止できる
<デメリット>
・コストがかかる
・導入している取引先しかやりとりできない
EDI(Electronic Data Interchange)は、企業間取引で発生する契約書や受発注書、納品書や請求書などのやり取りをまとめて行えるシステムだ。EDI発注ではこれらの業務を一元管理でき、効率的に発注を行える。 EDIのデータとPOSを連携すれば、日々の発注業務を自動化できる。商品名をそのつど入力する必要もなく、帳票でのやり取りに比べてスムーズな発注業務となるはずだ。商品や品数を口頭で伝えたり、手書きしたりすることもないので、発注ミスの防止にもつながる。専用回線で通信するシステムもあり、セキュリティ面にも強い。
ただし、EDIは費用が高く、気軽に導入とはいかない。また、導入する場合は既存のシステムを刷新するため、社内での大幅な調整や改善が必要だ。また、取引先が自社と互換性のあるEDIを導入していなければ使えない。自店も取引先も個人経営に近い小規模の事業者の場合は、あまり向いていない。
システム発注のメリット・デメリット
<メリット>
・パソコンやスマホで発注できる
・発注履歴が一目でわかり、ミスを防げる
・金額や数量を集計しやすい
<デメリット>
・導入している取引先しかやりとりできない
クラウドを利用したシステム発注サービスは、パソコンだけでなく、スマホなどのデバイスからも発注できるものが多い。基本的に24時間いつでもどこでも発注できる上、履歴が確実に残るため発注忘れや誤発注の心配も減る。近年は、発注アプリでスマホやタブレットから簡単に発注できるサービスも登場し、より利便性が高まっている(モバイル発注のメリットは以下で詳述する)。
しかし、システム発注もEDI発注同様に導入している取引先としかやりとりできない。取引先によってシステム発注、電話発注、FAX発注と複数あると、管理がかえって複雑になってしまう。
スマホやタブレットで発注できると何が変わる?
モバイルアプリやクラウド型の受発注システムでは、従来の電話やFAXといったアナログな発注手段よりも時間や労力を節約でき、業務の効率化を図れる。その具体的なメリットを見てみよう。
飲食店での残業問題を解決!仕入れ業務の時間短縮
スマホやタブレットといったモバイル端末での発注は、ちょっとしたスキマ時間にさっと行える。仕込み中などに、「この食材が足りない」とふと気づいても、電話やFAXだと、後からまとめて発注するからと一旦保留にしてしまうだろう。
スマホやタブレットなら、端末を開いてものの数分程度で発注が完了する。営業終了後に時間を費やす必要がないので残業時間は削減できる上、発注忘れの防止にもなるのだ。
専用機器やパソコンがなくても注文できる
スマホやタブレットは、導入の手間やコストを削減できる点も魅力だ。パソコンや専用機器による発注だと、端末の購入やレンタルだけでもそれなりの費用がかかる。
しかしスマホなら今や多くの利用者がいる。導入作業は所有している端末にアプリをインストールするだけ。発注業務だけでなく、導入そのものも効率的だ。
棚を確認しながら発注作業が可能
発注をパソコンに入力する場合、設置してあるデスクなどでの操作になる。発注内容を確認のために、棚や厨房とデスクの往復が手間ということもあるだろう。
手に持ちながら発注できるスマホやタブレットなら、特定の場所に縛られない。作業中も自由に動きまわれるため、棚や厨房、倉庫を確認しながらリアルタイムでの発注が可能だ。
発注履歴は共有できるので、人的ミスを防止するための二重確認なども容易だ。モバイル端末による発注は移動の手間を削減だけでなく、ケアレスミスを防止して正確な発注につなげられる。
店舗の外でも発注できる
スマホやタブレットによる発注は、場所を選ばずに作業できる。厨房からはもちろん、外出先などの店舗にいないときでも個人のスマホから発注が可能だ。
発注のし忘れや入力ミスなどに気づいた際にも、その場で素早く修正や追加発注をかけられる。例えば終業後に「1品だけ発注し忘れた…」と、ちょっとした入力作業をするためだけに店舗へ戻った面倒な経験もあるだろう。
スマホからの発注なら、わざわざ店舗へ戻る必要はない。注文履歴も確認できるので「きちんと発注できているだろうか」と、不安を抱えながら過ごすこともなくなるはずだ。
ペーパーレス
電話やFAXのような従来の発注手段では、伝票を印刷したり手書きでメモをしたりと紙を利用する。印刷用紙やメモ帳は消耗品代に計上される。また、パソコンに入力して紙に出力と手間もかかる。
スマホやタブレットなら、モバイル端末の画面操作だけで、簡単に発注が完了する。商品情報が登録されていれば、より効率的に作業を進めることも可能だ。
しかも発注書や納品書などはデータとして残る。紙媒体のように、劣化や紛失の心配がないのも嬉しい。
アプリによる発注システムで飲食店の残業を削減
飲食店の業務は営業終了後も、片付けやレジ締め、日報記入や明日の仕込みとやることが多い。しかしいつも夜遅くまで時間をかけ、終電まで店舗に残って業務に追われていると、ストレスや睡眠不足で従業員の満足度が低下し、サービスの品質にも影響するだろう。
店舗の運営維持のためにやっていることが、結果的に店舗の不利益の原因になってしまってはならない。重要なのは、根本的な業務改善だ。 スマホやタブレットによる発注システムの導入は、発注業務をより効率的にし労働時間を削減できるひとつの手段だ。店舗にいなくても発注でき、FAXのような大型機器を置くスペースを減らせるといったメリットもある。
そのようなサービスのひとつとなるインフォマートの『Order Time』は、スマホアプリをつかった飲食店専用の発注サービスとなり、従来の業務を大幅に改善できるツールとして期待できる。アプリをインストールすれば簡単に導入できるので、「発注業務の手間を軽減したい」「毎日のように残業が発生している」という店舗には、ぜひおすすめしたい。