「発言の言葉尻をとらえ、細かい部分につっこみ、時間を浪費させるのがクレーマーです。トラブルの発生源は現場でも、絶対に現場のアルバイトなどに対応させてはいけません。先方も納得しませんし、対応した従業員は精神的に傷つき、『店に守ってもらえなかった』と不信感を抱きます。士気は低下し、離職にもつながります。
顧客トラブルは、対応する部門や担当者を決めておくのが基本です。現場を守るために、初動で誰にどう引き継ぐのか、引き継いだ人はどう対応するのか、あらかじめ決めておくことが重要なのです」
悪質クレーマー対策の5か条
多くの飲食店で顧客トラブルに対応してきた石﨑氏は、カスハラ対策の5か条を提言している。以下、順番にみていこう。
①まずはとにかく「謝る」 ―― 謝罪=損害賠償ではない
謝ると過失を認めることになる、と店側がかたくなに謝罪を拒む場合があるが、得策ではない。
「実際、『すみませんの言葉もなく腹が立った』『一言謝ってくれたら済んだのに』というお客様は少なくありません。謝ったからといってすべての法的な責任を負う、多額の賠償金を払うといったことにはなりません。事実関係が不明で、先方の勘違いかもしれなくても、まずはお手間を取らせていることに対して『すみません』とちゃんと謝っておきましょう」
②感情的にならない ―― 挑発されても議論しない
クレーマーに長時間拘束され、罵声を浴びるなど、理不尽な言動に振り回される場合もあるだろう。だが、どんな時も冷静に対処することが重要だ。
「感情を煽られつい、『あんたに言われる筋合いはない』と言い返したくなることもあるでしょう。しかし、それをすると焦点がずれてしまいます。例えば始めは『料理に異物が入っていたかどうか』で揉めていたのに、『店長が罵倒した』と問題がすり変わってしまうのです。どんな言いがかりも絶対に議論せず、『ご意見として承りました』でとにかく押し通してください」
③録音かメモを取る ―― 録音自体は違法ではない
“言った・言わない”を避けるため、会話の記録を残して置きたいものの、無断録音はプライバシーの侵害にあたるのでは、と不安に思うこともあるだろう。
「当事者同士の会話の内容を録音するわけですから、第三者が勝手に録音する盗聴とは違います。コールセンターなどの通話録音は、無用なトラブルを避けるために一言断りを入れますが、厳密にいえば録音自体はかまいません。ただ、公開するかどうかは別です。
クレーマーは細かい人が多く、『あの時言ったじゃないか』になりがちです。録音データがあればベストですが、少なくとも備忘録として“いつ誰がどんな対応したのか”メモを取って残しておくのがベターです」
④遮らない・反論しない ―― 結論は先送りにして相槌をうつ
筋が通らない、堂々巡りの話が続いても言い分を聞くことが重要だ。遮ると、『話もできなかった』と揉める原因になる。
「何を言われても『貴重なご意見として承りしました、上に報告させていただきます』で、相槌をうっておきましょう」