飲食店のキャッシュレス決済導入のメリットと注意点

飲食・宿泊2024.08.22

飲食店のキャッシュレス決済導入のメリットと注意点

2024.08.22

飲食店のキャッシュレス決済導入のメリットと注意点

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キャッシュレス決済を導入している飲食店が増えている。自店舗でも導入を考えているが、「どのような手順で導入すればいいかわからない」「手数料がどれほどかかるのかわからない」という方も多いのではないだろうか。

そこで本記事では、キャッシュレス決済の種類、導入のメリットや注意点、今後の展望などについて解説する。

目次

キャッシュレス決済の基礎知識

キャッシュレス決済とは、現金を使わずに決済することを意味する。決済手段には、クレジットカードや電子マネー決済、スマートフォン決済など、さまざまな方法がある。店員との接触の恐れがある現金の受け渡しが避けられることから、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけにキャッシュレス決済が急速に広がった。

経済産業省発表より「我が国のキャッシュレス決済額および比率の推移(2023年)」グラフ
引用:経済産業省|2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました

経済産業省の発表によると、2023年のキャッシュレス決済比率は39.3%であり、10年前と比較すると、約2.6倍増加している。経済産業省は、キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度にするという目標を掲げており、関係省庁と連携して推進に取り組んでいる。このような取り組みから、今後もキャッシュレス決済が増加していくことが予想される。

キャッシュレス決済の種類と特徴

キャッシュレス決済の種類と特徴を以下の表にまとめた。

 クレジットカード決済電子マネー決済QRコード決済スマホアプリ決済
特徴支払い後、決済額が後日引き落とされる情報通信技術を用いた決済サービス
前払い式

ICカード・スマートフォンを端末にかざして決済する
QRコードを読み取ることにより決済が完了する

ユーザースキャン・店舗スキャンの2種類がある
専用端末にスマートフォンをかざして決済する
メリット現金不要で支払いがスムーズ
支払方法が多様(1回払い、分割など)
高額の決済がしやすい
ポイント還元がある
現金不要で支払いがスムーズ

ICカードの場合、交通機関の利用・定期券としても利用できる
現金不要で支払いがスムーズ

クーポン・ポイントが利用できるものがある

履歴が確認しやすい
個人間での送金が可能
現金不要で支払いがスムーズ

セキュリティ面も安心
デメリット入会時に審査があるICカードは限度額がある

現金チャージの必要があるタイプは、チャージに手間がかかる
スマートフォンがない・充電がない・インターネット環境がないと利用できないスマートフォンがない・充電がない・インターネット環境がないと利用できない

キャッシュレス決済の利点

飲食店がキャッシュレス決済を導入する利点として、以下が挙げられる。

  • 経費節約とレジ処理の高速化
  • オペレーション効率の改善

詳しく見ていこう。

経費節約とレジ処理の高速化

飲食店がキャッシュレス決済を導入すれば、人件費の削減とレジ処理の高速化を実現できる。現金での支払いでは、お客様から現金を受け取り、金額を確認してお釣りとレシートを渡すのが基本的な流れ。また、開店後はレジ締め作業が必要だ。レジ締め作業では、レジの現金を数え、売上との誤差があれば、その原因を追究しなければならない。

一方、キャッシュレス決済では現金の受け渡しがないため、スムーズに会計処理ができる。レジを利用することが少なくなるため、二度打ちや金銭の渡し間違えなどのリスクを減らせるうえ、レジ締め作業が楽になる。

これにより、従業員の負担を軽減でき、かつ人件費の削減が可能になる。

手数料や導入コストがかかる点が気になる方もいるかもしれない。キャッシュレス決済の種類によって異なるが、手数料は1~3%程度かかる。また、決済端末の購入に5万円程度が必要だ。

しかし、キャッシュレス決済を飲食店が導入すれば決済方法の幅が広がるため、利用客が増え、売上の向上につながる。手持ちの現金が少ない場合、キャッシュレス決済に対応した店ならば安心して入店できるうえ、ポイントやクーポンを発行している決済方法があれば、さらに多くのお客様を集めやすくなる。

また、現金の取り扱いが減るため、強盗や盗難のリスクも低減できる。これらの点を考慮すると、キャッシュレス決済導入のメリットはデメリットを上回るといえる。

オペレーション効率の改善

キャッシュレス決済の導入により、オペレーション効率の改善が期待できる。忙しい時間帯に会計に手間取られると、ほかの業務に割く時間が減少し、全体のオペレーション効率が低下してしまう。

キャッシュレス決済なら現金の受け渡しが不要なため、支払いがスムーズ化し、レジでの待ち時間が短縮される。これにより、顧客の回転率も向上する。また、在庫管理アプリを併用することで、商品の購入履歴や在庫状況をリアルタイムで把握でき、在庫管理が効率化される。

キャッシュレス決済を導入すれば、忙しい時間帯でも効率的なオペレーションが可能になり、業務効率も向上するだろう。

キャッシュレス決済の導入プロセス

キャッシュレス決済を導入するプロセスを、導入までの準備と導入後の運用に分けて解説する。

導入までの準備

キャッシュレス決済にはさまざまな種類があり、手数料や導入コストが異なる。単なる流行や知り合いの店舗が使用しているからという理由だけで方法を決定すると、顧客層とのミスマッチや使いづらさといった問題が発生する可能性がある。

ここでは、導入までの準備に必要なプロセスを解説する。

市場調査とターゲット顧客の分析

キャッシュレス決済の導入にあたり、市場調査とターゲット顧客の分析を行う。市場調査では、キャッシュレス決済の市場規模や今後の成長予測、決済手段ごとの導入・利用状況などを調査する。

また、店舗を利用する顧客層を特定し、多く利用されているキャッシュレス決済は何かを把握しよう。既存顧客にアンケートを取ったり、店舗で「使えますか?」と質問される決済方法を選んだりするといいだろう。

決済サービスプロバイダの選定

決済サービスプロバイダとは、キャッシュレス決済取引をサポートする会社のことを意味する。サービスにより月額費用や利用料、利用可能な決済手段、セキュリティの高さなどが異なる。代表的なキャッシュレス決済サービスプロバイダをリストアップし、実績や評判、提供される機能、決済手数料などを確認したうえで、自店舗に合ったプロバイダを選定しよう。

手数料比較とシステム体験

プロバイダを選定したら、決済手段ごとの手数料とともに、システムの使いやすさも実際に体験しよう。例えば、クレジットカード決済は3~7%、電子マネー決済には3~4%、スマートフォン決済には0~4%と、決済手段によって手数料が異なる。

クレジットカードを挿入する・かざすだけで決済が完了するなど、決済手段によって決済方法も異なる。自身でもキャッシュレス決済を試してみれば、お客様の視点に立って決済手段を選ぶことができるだろう。スタッフ・顧客が使いやすく、かつコストパフォーマンスが高い決済手段を選択しよう。

導入後の運用

導入後行うことに挙げられるのが、以下のとおり。

  • 設置とスタッフトレーニング
  • 顧客への周知方法
  • 導入後の効果測定

詳細を見ていこう。

設置とスタッフトレーニング

導入したら決済端末を設置し、スタッフが利用できるようトレーニングをしよう。決済時に手間取ったり操作方法がわかっていなかったりすると、お客様に不安感を与えてしまう。

決済手続き以外にも、キャンセルや返金手続きの操作方法、あわせて決済中に起きたトラブル事例を共有し、対処できるようにしておこう。

顧客への周知方法

顧客に対し、キャッシュレス決済に対応できることを周知しよう。周知方法としては、以下のような方法が挙げられる。

  1. 店内外にキャッシュレス決済のポスターやステッカーを貼る
  2. 店舗のウェブサイト・SNSで導入の告知をする
  3.  会計時にスタッフが直接伝える 

特に重要なのが、店舗の入口付近に利用できる決済方法を掲示することだ。入店前に使えるキャッシュレス決済が分かれば、新規の顧客も店に入りやすくなる。

導入後の効果測定

導入後は、効果測定を行おう。効果測定には、以下のような項目が挙げられる。

  • キャッシュレス決済導入前と後の売上データ
  • 現金決済・キャッシュレス決済ごとの利用率
  • キャッシュレス決済の売上比率
  • 平均客単価
  • レジ業務にかかる時間

効果測定により現在の課題を把握できれば、売上アップや顧客満足度の向上につながる改善点を明らかにすることが可能だ。

キャッシュレス決済導入時の留意点と未来展望

キャッシュレス決済を導入するにあたり、気をつけるべき点や今後の展望を解説する。

セキュリティ対策と個人情報保護の重要性

キャッシュレス決済を導入するうえで、セキュリティ対策と個人情報保護は重要な課題の一つだ。キャッシュレス決済で起こるリスクは、以下のとおり。

  • IDやパスワードの漏洩
  • QRコードのすり替え
  • フィッシング詐欺

店舗でFreeWiーFiを用意している場合は、通信環境のセキュリティ対策を行う必要がある。また、お客様がスキャンするタイプのQRコード決済を利用している場合は、QRコードがすり替えられる恐れがあるため、定期的に確認するなどの対策が欠かせない。

手数料や使いやすさの慎重な検討

各決済サービスプロバイダが提供する手数料や使いやすさを慎重に比較することも大切だ。手数料が高いと、利益が圧迫される恐れがある。顧客にとって使いやすい決済方法を選ぶことで、利用促進につながる。また、従業員が使いやすければ業務効率化が可能だ。

小規模店舗への影響と対策

キャッシュレス決済を利用する場合、売上に対する手数料がかかる場合がほとんどだ。特に、小規模店舗だと初期導入コストや手数料負担が大きくなり、利用の継続をやめたいと考えるケースも少なくない。このような場合、決済手数料も電気代や水道代と同じようにコストとして計算し直し、継続か解約かの判断をする必要があるだろう。

また、キャッシュレス決済の導入に使える国の補助なども利用するのもおすすめだ。キャッシュレス決済に使える支援策には、以下のようなものがある。

  • IT導入補助金
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
  • 地域公共交通確保維持改善事業費補助金

キャッシュレス決済を導入したのにもかかわらず、売上が下がって店舗の廃業を考えるのでは意味がない。国の支援を利用して経済的な負担を軽減しつつ、価格改定により、長期的に利益が上げられるような経営を目指していこう。

まとめ

コロナ禍を期に大きく広がりを見せたキャッシュレス決済。導入により、経費節約やレジ処理のスムーズ化、業務効率の改善などが可能になる。一方で、手数料がかかるため導入を迷っている店舗があるのも事実だ。導入の前には市場調査やターゲット顧客の分析を入念に行ったうえで、導入するか否かを判断しよう。また、導入する場合は、自店舗に合ったプロバイダや決済手段を選ぶことが重要だ。

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