地元の銘菓をお酒にするという発想
1918年、世界遺産の厳島神社がある広島県宮島の対岸に、焼酎メーカーとして創立した中国醸造株式会社。今ではみりんや清酒、梅酒、ウィスキーなども製造・販売する総合酒類メーカーだ。地元プロ野球チームの広島カープを応援する『カープ梅酒』など、“広島の企業”という印象が色濃く反映された商品もある。 『もみじ饅頭のお酒』も中国醸造らしい商品のひとつだが、開発のきっかけはなんだったのだろうか。
「『もみじ饅頭のお酒』の発案は、私の上司でした。彼は出張が多くて、お取引先様へのお土産にもみじ饅頭を持っていっていたんです。ところが先方の反応は、『あぁ、広島からですものね』と見慣れたもので、話が盛り上がらなかったようです。もはやもみじ饅頭は定番中の定番で、新鮮味がまったくなかったんですね。そこで上司が、『広島発の新しくておもしろいお土産になるよう、もみじ饅頭でお酒を作りたい』と考え、私に話を持ち掛けてきたのです」
もみじ饅頭がお酒になれば、出張先や旅行先で盛り上がり、話題になるだろう。ただ商品化するには、より踏み込んだコンセプト作りが必要だ――。そう考えた山本さんは、ターゲットを女性に絞ったという。
「女性は男性よりお菓子が好きですよね。新しい情報にも敏感です。饅頭のお酒があれば、きっと話題にしていただけると思いました。そしてお酒の弱い方でも楽しめる、甘口の低アルコールにしようと決めていき、開発をスタートしました」
完成形のイメージは、あくまでもみじ饅頭
もみじ饅頭は固形物でお酒は液体。物性も用途もまったく異なる。まずはもみじ饅頭の材料となるあんこ、卵、はちみつ、皮などを手掛かりに開発は進められた。
「あんこは乾燥した粉末を使用しましたが、大変だったのが皮の再現です。皮はカステラですので、食べて飲み込んだ時にのどごし感があります。こののどごしを再現するために、液の粘性を高めて何度も試作しました。また風味も、甘く焦げた香りに仕上げました。もみじ饅頭に色が似ているだけの普通のお酒という、中途半端なものにはしたくなかったのです」
こうしてもみじ饅頭の味を再現した、甘い香りとトロトロな舌触りの試作品が作られた。最終的な消費者の意見を得ようと、30代以上の女性が参加する地元のコミュニティに試飲してもらった。