贈答品から手軽な菓子へ。思い切った老舗の舵取り
「結婚式で『バリ鰹』を引き出物としてもらったお客様から、どこで売っているのかと直接問い合わせをいただくようになったのです。その件数が非常に多く、量販向けに商品を作ろうという話に発展しました」
冠婚葬祭のギフト品を製造・販売するノウハウは持ち合わせていたが、量販品に関してはゼロからのスタート。コンセプトやネーミング、パッケージ、プロモーションなど、ギフト品とは異なるノウハウが必要だった。
「商品のコンセプトは、『手軽にかつお節が食べられるスナック菓子』にしました。また、バリバリとした食感と、仕事や勉強をバリバリこなすということを表現したいと思いネーミングは『バリ勝男』にしようと。パッケージに関しては、静岡にある企画会社に協力してもらいながら、キャラクターと漫画のデザインを用いたアイデアを練りました」
キャラクターと漫画。老舗メーカーの商品としては、ずいぶん斬新なパッケージだ。
「コンビニやスーパーの豆菓子コーナーに置いてもらう販売戦略を考えていました。ただ、定番のデザインでは他社商品の中で沈んでしまう。まず“手に取ってもらう”ためには、思い切った冒険も必要だと思いました」
販売チャネルにあわせて既存商品に新たなコンセプトと戦略を設け、これまでなかった斬新な新商品を作り出す。この思い切った舵取りが、思わぬ効果を生むことになる。
SNSでの情報発信と無料配布。定石の後に訪れた勝機
こうして生まれた「バリ勝男クン。」は、2011年10月からコンビニやスーパーなどの量販店に並ぶようになる。同時に、当時課長だった長谷川さんが「バリ課長」としてツイッターでの発信を開始。他にも、地元のサッカーチーム・清水エスパルスの試合で商品を何度となく無料配布するなど、テレビCMの制作を行う以外は広告宣伝費をかけずに商品のPRを始める。
「地方のメーカーですから、広告宣伝費にかける予算はほとんどありません。そこでSNSの活用や商品の無料配布に力を入れたのですが、美味しいという評判がSNSを通して広まっていったんです。地元のFMラジオに投稿してくれる人もいて、ツイッターのフォロワーがどんどん増えていきました」