前年比売上134%の成長。バルニバービの店舗が悪条件の立地でも成功する理由

飲食・宿泊2023.11.21

前年比売上134%の成長。バルニバービの店舗が悪条件の立地でも成功する理由

2023.11.21

前年比売上134%の成長。バルニバービの店舗が悪条件の立地でも成功する理由

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1995年の創業以来、人通りが少ないなどで他店が注目しないエリア=バッドロケーションにあえて出店し、次々と人気店を生み出してきたバルニバービ。その業態はビストロバルにカフェ、イタリアンとさまざまだが、地域に根ざした個性的な店づくりに魅了される顧客は多い。


バルニバービの2023年7月期のレストラン事業の売上は、コロナ禍前の61億円を上回る70億円を達成し、グループ全体の売上は134%に上る。またコロナ禍でも店舗数を増やし続け、2023年8月現在、全国に96店舗を展開している。同社傘下で31店舗を展開する株式会社バルニバービウィルワークス代表取締役社長 石倉治氏に、飲食店本来のあり方を提案するバルニバービの出店・運営ノウハウを伺った。

目次

エリアの特性を活かす店舗開発で、19年比売上250%増のカフェも

【Q】2023年の売上は前年比34%増と好調ですね。

株式会社バルニバービウィルワークス
代表取締役社長 石倉 治氏

株式会社バルニバービウィルワークス代表取締役 石倉 治氏(以下同) 当社のモットーは人を育成して美味しいものを提供し、楽しいお店を作ることです。この理念を徹底できている店舗は安定して前年比を上回る業績を出せています。たとえば丸の内のオフィス街にある「GARB丸の内」は、テレワークの普及にもかかわらず前年比130%。天王洲アイルのカジュアルレストラン「RIDE」は150%増で、コロナ禍前の19年比で250%増です。安定した店作りには、優秀な店長のもとで店を熟成させ、より良いコンテンツにしていくことが重要だと実感しています。

【Q】バッドロケーション戦略での店舗開発の考え方について、教えてください。

オーシャンスタイルレストラン RIDE

出店の話が出ると、まずは下見をします。自分の足で朝から夜までの全時間帯を調査し、周囲にどんな飲食店があるのか、何が必要とされているのかを徹底的に考察するのです。その際「ここでどんな店を作れば流行るのだろう」というより、まずは「この場所には何が足りていないのか」を中心に見ます。

たとえば早朝に犬の散歩をしている人がちょっと立ち寄れるような場所がないな、だったら広いテラス付きのカフェがいいのではないか、など色々な仮説を立てて想像します。それに加え、新しいエリアで店を任せたいスタッフの強みも最大限に尊重します。

【Q】店長の裁量も考慮されるのですね。

まずは店長や子会社の代表など、店舗の中心となるメンバーの能力を活かせそうなコンセプトを作り上げます。次にシェフなど、そこで働くスタッフの色を足していくのが当グループの店舗開発の流れです。そのため人が変われば当然やり方も変わります。

こちらが「イタリアンが良さそうだ」と考えたとしても、店を任せるスタッフが和食に強ければイタリアンを無理に作ることはありません。店舗の人の一番良い力が発揮されなければ意味がないからです。もちろん逆に、下見で「ここは絶対出店した方がいい」というインスピレーションがあった際は、逆算して適任のスタッフを選ぶこともあります。

マニュアルに縛られない「総合的なデザイン力」

【Q】価値を生み出す3つの力はエリア開発力、デザイン力、オペレーション力とされています。

DRAWING HOUSE OF HIBIYA

バルニバービには、社内に店舗の内装設計をすべて手がける企画チームがあります。お客様が「わざわざ行ってみたい」と思う店づくりには、やはりおしゃれでかっこいい、気持ちよさそうだと直感的に思わせる内装が欠かせません。その雰囲気を総合的にデザインしていく力が、当グループの強みです。

お客様にまず来店していただくには、内装含めた雰囲気とPRが大切でした。そしてご来店いただいた方をより満足させるのがオペレーション力です。サービスや料理、お店の空気感など「また行きたい」と思っていただけるお店は、土地ごとに違うはず。たとえば、お客様が会計してお帰りになるまでをノンストレスでキビキビ接客する丸の内のビジネスランチと、時間を気にせずゆったり過ごしていただく地方で手掛けているカフェの運営が一緒でいいはずがありません。

もちろん気持ちよくサービスをするという基本は共通ですが、だからこそ僕たちはマニュアルで縛ることができないと考えているのです。

最重要は“店長の育成”。11名の役員がサポート役に。

【Q】出店後の店舗運営はどのように行っていますか?

当グループのバッドロケーション戦略には、家賃を抑える分、人に投資できるというメリットがあります。店の運営は店長をはじめとする社員が中心です。社員の人数は店舗規模によって大きく異なりますが、31店舗に約200名の社員がいるので1店舗あたり平均7名です。彼らの待遇と育成を重視し、店づくりも「店長たちはどんな店にしたいのか」からスタートします。その上で、店長の弱点を補うよう取締役がサポートします。一番大切な仕事は店長の育成といっても過言ではありません。

たとえば店長のバックオフィス業務を減らして、お客様対応に集中してもらう。事務作業が得意な店長には任せることもありますが、その場合は苦手な分野、スタッフのケアなどを役員が現場に入ってサポートすることも多々あります。

特に店長とスタッフとのコミュニケーションは重要です。「ついていきたい」と思わせる店長でないと、店の運営は上手くきませんから。だからこそ店長とスタッフの定期面談や、当グループの理念である「食を通してなりたい自分になる」ことを重んじた教育を、11名の役員が徹底サポートしているのです。役員は全員、本部だけでなく現場を支援するのが当たり前になっています。

子会社化で、意思決定スピードが早まった

【Q】バルニバービグループでは、複数の子会社に店舗を振り分けて運営されていますね。

NEW LIGHT
(渋谷 MIYASHITA PARK)

グループ内で子会社化を進めており、同じ屋号の店でも運営子会社がまったく異なることがあります。子会社ごとにカラーが違って、同じグループとは思えないほどです。

たとえば店長の次のステップとして、複数店舗を統括するポストを設けている会社もあれば、そうした仕組みがない子会社もあります。社員のキャリアやポジションの作り方は子会社ごとにバラバラですが、経営理念の「食を通してなりたい自分になる」を実現させること、社員が安心して働ける環境づくりを重んじる点は共通しています。

余談ですが、当社がコロナ禍での回復が比較的早かったのも、各子会社が自分たちの意思でトライアンドエラーを繰り返して共有し合ったからかもしれません。デリバリーやテイクアウトを試す店もあれば、マルシェをやり始めた店もあるなど、各社が取り組んで良かったものを共有するプロセスが自然とできていました。結果的に意思決定のスピードが速くなり、回復が早かったのでしょう。

その土地で長く愛される店づくりが、地方創再生へとつながる

【Q】現在取り組まれている「地方創再生プロジェクト」について教えてください。

23年5月、島根県出雲市にレストランと宿泊施設を併設した複合施設「WINDY FARM ATMOSPHERE」をオープンさせました。これまでのように、バッドロケーション戦略でただ不便なエリアに出店していくだけでなく、地方の土地を取得して施設を作り、人の流れを生んで最終的に土地の価値を上げていくのが「地方創再生プロジェクト」です。

島根の案件はまだ始まったばかりですが、スタッフがいきいき働いてくれることに手応えを感じています。当初は東京から半年間だけの予定で赴任した子が、「地方での生活が快適だから」と島根に移住したり、地方で働くことの面白さやメリットが共有されて「東京がすべてじゃない」という価値観が生まれたりしているのを感じます。これからもスタッフの意思を一番大事にしつつ、その土地に必要とされるものを提供し、お客様に長く愛されるお店を作っていきたいです。


人手不足を“仕組み”で解決!飲食店の組織改革術

株式会社バルニバービウィルワークス

所在地:東京都港区海岸3-9-15LOOP-X 14F
事業内容:飲食店の経営及び運営
公式ホームページ:https://bbbwillworks.com/

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